「ほら、貴方もこっちきなよ」
「嫌だよ。靴が濡れちゃうし」
珍しく、純白のワンピースを着ている貴方は、私の返事を聞いて頬をふくらませた。
こんな綺麗な地平線を見たのは、いつぶりだろうか。貴方の、そんな無邪気な姿を見るのも。
「そんなの、脱げばいいだけじゃない」
「裸足になるの、抵抗あるんだよ」
「最初だけだよ。こうやってさ、素肌で自然を感じるのは気持ちいいんだよ」
「私は、海風を感じるだけで十分だよ」
貴方は、それもそっかなんて納得しちゃったようで、私に背を向けて地平線を眺め始めた。
私も、砂の上に腰掛けて地平線を眺めるふりをして、海風で貴方の髪が靡く様子を見ていた。
貴方は、風が似合う人だと思った。
8/10/2025, 8:13:54 AM