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12/5/2023, 12:52:18 PM

嫌な夢で目が覚めた。

今年の冬は特に寒い。まだ日が昇る前の薄暗い時間は冷たい空気が一気に纏わりついてきて身体に不快感を与えてくる。俺はかけていた布団と毛布をギュッと手繰り寄せ深く潜り込んだ。

どうせまた眠りに落ちれば悪夢にうなされ数時間も経たずに目が覚めるのだ。そうしてほとんど眠れないままいつも朝を迎える。

こんな生活がかれこれ数ヶ月以上続いていた。もう慣れた、なんてとてもじゃないが言えないくらい精神的にも体力的にも消耗しきっていた。


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『また明日ね、悟。』

最後に一緒にいた日、お前はいつも通りで何一つ変わりなくて、あの細い目をきゅっと閉じて、あの笑顔で…

確かにそう言ったのに。そのままお前は消えてしまった。

なんなんだよ?お前が何考えてんのかわかんねぇよ。なんで…なんで…。

「あーー!クソっ!」

頭を掻き毟りながら、頭に渦巻く処理しきれない思考を掻き消すようにそう叫んだ。

ずっと一緒にいると思っていた。
ずっと隣にいると思っていたのに。

「う…うぅ…。」

声を押し殺して今にも溢れそうな涙に抵抗してみるも、そんな小さな抵抗は全く意味をなさず枕に冷たい染みを広げていく。

当たり前に隣にいたから気が付かなかった。離れてから嫌というほど主張してくるその感情は、恋なのだと気付くまでに時間はかからなかった。

こんなに、こんなにお前のこと…好きだったんだな。

「ははっ、俺って女々しいな。きもちわる。」

そうやって今日もお前に翻弄されてるんだ、俺は。
消えてくれよ。いっそ俺の記憶から消えてくれ。

お前なんか…。

そうやって心にもない否定をしてみると、胸がズキズキと痛んだ。

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今日も眠れないほどお前を想う。

12/4/2023, 12:59:24 PM

#二次創作 #夏五

ピピピ ピピピ ピピピ ピピピ

スマホのアラームが鳴り、目を閉じたまま音のする方に手を伸ばした。
音はこっちからしているはずなのになかなか見つからない。

まだぼーっとする頭を掻き毟りながらチッと小さな舌打ちをすると、仕方なく僕はうっすらと目を開けた。

まだ目が慣れていないからなのか目の前がぼやっと霞む。
昨日は遅かったのだ。とてつもなく眠い。

ピピピ ピピピ ピピピ ピピピ

あぁ!うるせぇなぁ!

まだまだ微睡んでいたいのにそれを邪魔され、強烈な眠気も相まってイライラがピークに達する。

あ…スマホあった…

やっと見つけたそれを、目を閉じたままギュッと掴み、慣れた手つきでアラームを止めた。

『今何時だよ…あ?4時?何でこんな時間にアラームなんて鳴るんだよ…』

なぜそんな時間にアラームが鳴ったのかはわからないが、もう何でもいい。眠いのだ。
明日の用事はそんなに早くない。もう一眠りしようと意識を飛ばしかけたその時。

『やぁ』

そう言ってにこやかに笑う顔が目の前にあった。

『うっわっ!!!???』

なんだ?!なんなんだ?!なんで僕の部屋に人がいんの?!

体が無意識にビクッと勢いよく跳ね上がり、全身が心臓になってしまったように動悸が激しい。

『だ…誰だ?!お前…』
『やだな、私のこと忘れちゃったのかい?』

そいつは眉を少し下げながらはにかむように、ははっと笑うと
そっと僕から顔を離した。

『すぐ…る?…』

そこにいたのは、僕が確実に殺したはずの親友。

傑だった。

12/3/2023, 3:14:30 PM

『好きな人が出来たんだ』

なんの前触れもなく伝えられたその言葉は凶器のように鋭く俺の胸を刺した。頭を殴られたような鈍い痛みが走り、全身が逆立って嫌な汗が噴き出る。

『えっと…冗談?やめろよエイプリルフールはまだ先だろ。』

そう言えばきっとお前は、はは。バレた?なんておどけて俺のほっぺをツン、と刺すに違いない。でもお前は虚な目で、はぁ…と小さなため息をついて黙り込んでしまった。

その態度は、これが嘘なんかじゃないっていう現実を嫌というほど突きつける。

『なんで…』

もう既に溜まった熱い水が今にも目からこぼれ落ちそうでそう言うのが精一杯だった。

『もう新居の目処はついたんだ。今までありがとう。』

そう言うと、お前は私物をテキパキと片付け始めた。元々、物欲もなく物を持たないタイプだ。旅行用に買った大きめな黒いスーツケースに収まる程の荷物はあっという間に片付いた。

その様をただ見ていることしかできなかった。体からすーっと血の気が引いて目の前がぐらぐらする。立っているのもやっとで少し気を抜いたら倒れ込んでしまいそうなくらいだった。

そして、玄関の前まで行ったお前はゆっくりと振り返り、さようならと言うと足早に出ていってしまった。

頭が殴られたようにズキズキと痛む。何を言われたのか。さようなら、その言葉がどんな意味を指すのか理解する事ができず、ただただお前が出ていった扉を見つめていた。

12/2/2023, 2:05:26 PM

#二次創作 #夏五(距離の続き)

どうしよう、怒らせてしまった。どうしよう…
悟はとてつもない後悔と焦りを感じていた。

追いかけなければ、と頭ではわかっているのに身体は言うことを聞かず、お尻に根っこが生えたみたいにベッドから立ち上がることも声を上げることもできなかった。

傑…傷付いた顔してた。
あんな顔初めて見た。

そう頭でグルグルと思考が巡ると、叫びたくなるような、暴れたくなるような気持ちが渦のように溢れてきて、泣きそうになる。

自分のしてしまったことが憎くてしょうがない。

『うぅっ…ふぅっ…』

とうとう悟はポロポロと泣き始めた。

傑、ごめんなさい
傑の事嫌いなんて思った事ない

そううわ言のように呟くと頭をポンと叩かれる。

『…?』

ゆっくり顔を上げるとそこにはさっき部屋を出て行ったはずの傑がいた。

『すぐ…るっ…!』
『なんて顔してるんだ、そんなに泣いたら目腫れちゃうよ』
『ごめんなさいぃごめんなさい…!嫌いじゃないから…!俺…!』
そう言って首に手を回し傑をギュッと抱きしめた。

『うん、わかってるよ。ちょっと傷付いたけどね。』
『もう絶対言わない。絶対。約束する。』

傑が話してくれた。許してくれた。悟は安堵感から益々涙が溢れてくる。

ずっと泣いていたのだろう、目も鼻も真っ赤にして。私のこと大好きじゃん。
傑はふっと笑いながら頭を撫で、優しく抱きしめた。
目の前の怒られた子猫のように小さくなって泣きじゃくっている恋人が可愛くて愛おしくて、傑は傷付いたことも忘れていた。

12/2/2023, 10:06:12 AM

『傑なんて嫌いだ…!』

ついカッとなって思いもしないことが口から滑り落ちた。
俺…今なんて…?

サーッと血の気が引いて頭も体も冷静になっていく。

傑はとても驚いたような顔をした後、どんどん目が虚になっていき、最後に、はぁ…と小さくため息をついて俺の手を離した。

『傑っ…あの…』

俺は慌てて取り繕ったが、それが傑の耳に届く前に
傑は座っていたベッドからすっと立ち上がり何も言わずに部屋を後にしてしまった。

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