「 どうすればいいの?」 / 実話です。
過去の経験は、私の中に深い傷を刻んだ。
あの頃の笑顔が、今ではどうやって作るものだったのかさえ忘れてしまった。人と目を合わせるのが怖い。何を考えられているのかわからなくて、怖くて仕方がない。信じて裏切られる痛みをもう一度味わうくらいなら、最初から信じない方がずっと楽だと思った。
「おはよう!」
そう話しかけられるだけで、息苦しくなる。相手が私をどう見ているのか、心の中で何を思っているのか、それを考え出すと胸が締め付けられて動けなくなる。答えなきゃいけないのに、言葉が出てこない。ただうつむいて、何かをつぶやいたふりをするだけ。そうしてまた、自分が嫌いになっていく。
家に帰って、一人の時間が訪れると少しだけほっとする。けれど、すぐに孤独が襲ってくる。誰にも頼れない、誰にも甘えられない自分を責めて、涙がこぼれる。それでも、人と繋がるのが怖い。どうすればいいのかわからない。
心を閉じて生きているのが楽なのかもしれない。でも、それは生きていると言えるのだろうか。ずっとこんなままなのかな。時々、ぼんやりとそんな未来を想像しては、答えのない問いに心が沈む。
ある日、ふとスマホに届いた通知に目をやると、昔の友達からのメッセージだった。
「最近どうしてる?久しぶりに会えない?」
一瞬、心臓が跳ねた。けれど、すぐにそれを押し殺す。会うのが怖い。今の私を見せたくない。普通に話すことができない私を、相手がどう思うのか想像するだけで、全身が固まる。
それでも、画面をじっと見つめていた。返事をしなければ、この人との繋がりがまた一つ消えてしまう。返信を打つ指が震える。結局、その日も返事は送れなかった。
「どうすればいいの?」
小さな声が部屋に響く。けれど、答えてくれる人はどこにもいなかった。
でも、その翌日も友達からメッセージが来た。
「元気ないのかな?無理しなくていいけど、少しでも話したくなったらいつでも連絡してね。」
その一言に、胸が少しだけ温かくなる気がした。怖くても、もう少しだけ、少しだけでいいから信じてみてもいいのかもしれない。そう思うだけで、いつもより少しだけ空気が軽く感じられた気がした。
まだ一歩踏み出す勇気は出せない。けれど、心の中で小さな灯がともった気がした。どうすればいいのかわからなくても、少しずつでいいから歩き出してみたい――そんな気持ちが、静かに芽生え始めていた。
「 子猫。」/ 昨日起きた実話です。
新しい彼氏ができて、もう1ヶ月が経った。最初は優しかった彼。何か困ったことがあれば、いつでも手を差し伸べてくれて、まるで私を守ってくれるような存在だった。私は彼に、どこか救われるような気持ちでいた。こんな風に誰かに大切にされることがあるんだと、初めて実感した。
けれど、それはあっという間に崩れ始めた。彼の言葉が、次第に鋭くなっていった。最初は小さなことだった。
「もっと痩せた方が可愛いんじゃない?」
「そんなこともできないの?」
彼の冗談交じりの言葉に、最初は笑って流していた。彼が言うから、ちょっと努力しようと思った。それでも、彼の言葉は日に日に厳しくなっていった。
「デブだから痩せろって言ってんだよ」
「お前、ほんと使えないな」
いつしか、彼は私の人格そのものを否定するようになっていた。私は彼の前で萎縮し、いつも小さくなって生きるようになった。彼の機嫌を損ねないように、怯えながら日々を過ごしていた。
暴力も、受けるようになった。少しのことで手を上げられ、言葉で攻撃されることが増えていった。泣きたかったけれど、泣いてもどうにもならないとわかっていた。だから耐えた。でも、それがモラハラというものだと気づいたのは、友達に相談したときだった。
「別れたほうがいいよ。そんな男、やめなよ。」
「そんなの、愛じゃないよ。」
みんながそう言ってくれた。けれど、私は離れられなかった。彼と別れることで、何か大切なものを失うような気がしていたのかもしれない。愛しているわけでも、彼が必要だと感じていたわけでもない。ただ、私が彼を失うことが怖かった。
それでも、付き合って3ヶ月が経ち、私の心は限界を迎えていた。鏡に映る自分は、まるで迷子になった子猫のようだった。誰かに助けてほしいと、声にならない声を上げているように見えた。
「もう別れよう。」
そう伝えた時、彼の反応は意外とあっさりしていた。
「そう?じゃあ、別れようか。」
それだけだった。あんなに私を支配していたはずの彼が、私に対して何の未練もなく、簡単に離れていった。その瞬間、私は彼が私を最初から愛していなかったことに気づいた。彼にとって、私はただの存在、何の意味もない存在だったのだ。
私は静かに涙を流した。愛って、なんなんだろう。本当の愛って、どこにあるんだろう。彼の腕の中にあるはずだったものは、ただの空虚だった。
その夜、私は一人でベッドに横になりながら迷子になった子猫のような自分を抱きしめた。
「 あなたとわたし。」/ 実話です。
友達として仲良くしようと決めたはずだった。でも、どこかで私たちは、その境界線を曖昧にしていた。友達以上の情が、心のどこかに漂っていたのかもしれない。それでも、お互いその気持ちに触れることなく、穏やかに過ごしていた。
ある日、私に新しい恋人ができた。正直、彼にどう伝えたらいいのか迷ったけれど、やっぱり一番に報告するべきだと思った。
「あのね、私、恋人できたんだ。」
その一言を送るのに、いつも以上に時間がかかった。彼の反応が少し怖かった。でも、すぐに返信が来た。
「おめでとう!何かあったらすぐに連絡しろよ〜!」
彼の言葉はいつも通りで、ほっとした。やっぱり、彼は私のことをちゃんと理解してくれている。変わらず友達でいてくれる。それがありがたくて、胸が少し温かくなった。
でも、数時間後、スマホの画面にまた彼からのメッセージが届いた。
「こんなに好きになったのは君が初めてだよ。大好きでした。」
一瞬、息が止まった。画面を見つめる私の手は震えていた。でも、次の瞬間、そのメッセージはすぐに送信取り消しされた。まるで、最初からなかったかのように、消えてしまった。
私はその後、何も言えなかった。言葉が見つからなかった。だけど、彼の気持ちは確かにそこにあったんだ。ずっとそばにいてくれた彼が、こんなに深く私を想ってくれていたなんて。気づかなかった。いや、気づかないふりをしていたのかもしれない。
涙がこぼれそうになりながら、スマホを握りしめた。彼に何を返すべきなのか、どうしていいのかわからなかった。ただ、ひとつだけ言いたいことがあった。
「ほんとに辛い時にそばに居てくれて、近くで見守っててくれてありがとう。」
その一言だけを、慎重に送った。彼からの返事はなかったけれど、それでよかった。お互い、もうそれ以上何かを求める必要はなかった。
「永遠に。」/ 実話です。
彼とは友達としての関係に戻ったけれど、それは思っていた以上に自然なものだった。別れてからも、彼は変わらず優しかった。むしろ、昔よりも私のことを気遣ってくれるように感じていた。辛いことがあった時、ふとした瞬間にトラウマを思い出して心が重くなる時、彼は何も言わずにそばにいてくれた。彼の静かな存在が、いつも私の心の安らぎになっていた。
その日も、そんな彼との穏やかな時間が続いていた。友達と一緒にテニスをしに行こうという話になり、久しぶりにみんなで集まった。テニスコートに立つのは本当に久しぶりだった。私も彼も、そして他の友達も、よく一緒にテニスをしたものだ。懐かしさが胸にこみ上げてきた。
彼がラケットを手にして、軽くボールを打ち返す姿を見ていると、あの頃の彼を思い出した。真剣な顔でボールを追いかける姿、時折見せる笑顔。その時はまだ恋人同士だった。でも今は、そんな日々が懐かしく感じられるだけで、心に痛みはなかった。それはきっと、彼が今も変わらずにそばにいてくれるからだろう。
ゲームが始まり、みんなで笑いながらプレーを楽しんだ。時折ラリーが続くと、思わず白熱してしまう。彼が全力でボールを打ち返すたびに、心の中で「懐かしいな」と思いながら、その姿を見つめていた。彼は変わらない。昔と同じように、まっすぐで優しくて、そして少しおどけた笑顔で私を見てくる。
試合が終わり、みんなでベンチに座り込んで一息ついた。心地よい疲れが体に広がり、久しぶりに体を動かした充実感で満たされていた。私は彼に向かって微笑んで言った。
「懐かしいね。久しぶりにテニスしてる君を見て、なんだか昔のことを思い出しちゃった。」
彼は少し驚いたような顔をして、でもすぐに優しい笑みを浮かべた。
「そうだね。昔はよく一緒にやってたもんな。」
その言葉に、私も少し照れくさくなって笑った。思えば、彼との関係はいつもこうだった。何かを一緒に楽しんで、少し照れながら笑い合う。昔も今も、彼は変わらない存在でいてくれる。それが、私にとってどれだけありがたいことか、言葉では言い尽くせない。
「いつもありがとうね。私がしんどくなった時も、こうしてそばにいてくれて。これからも、親友としてよろしくね!」
そう伝えると、彼は少し照れたように頬をかきながら、いつもの優しい声で答えた。
「もちろん。俺こそ、これからもよろしく!」
その言葉に、心が温かくなった。私たちの関係は、恋人ではないけれど、もっと大切なものに変わっていた。親友として、互いに支え合う存在として、これからもずっと一緒に歩んでいきたい。彼との時間が、これからも永遠に続いていくことを願ってやまない。
太陽が少しずつ傾き始め、私たちはテニスコートを後にした。夕陽が照らす道を、彼と並んで歩く。静かな時間が心地よく、言葉は少なくても、そこには確かな絆があった。
これからも、彼と共に過ごす日々が続いていく。親友として、いつまでも 一緒にいたい。
永遠に。
「 もう一つの物語。」/ 実話です。
高校生活は次第に落ち着いてきたはずだった。彼と別れてからも、何とか自分の気持ちに折り合いをつけて、新しい生活を送ろうと頑張っていた。彼との思い出も、幼なじみとの苦い過去も、少しずつ心の奥に押し込め、前に進もうとしていた。
そんな時、学校で仲が良かった男友達に告白された。それは突然で、驚きと戸惑いが入り混じった瞬間だった。彼とはずっと友達として接してきたし、そんな風に思われているなんて考えもしなかった。
「ごめん、そういう気持ちには応えられない…」
正直にそう伝えた。友達としての関係は続けたいと思ったけれど、恋愛感情はなかった。断ることに対しては多少の罪悪感はあったけれど、彼もきっと理解してくれるだろうと思っていた。
しかし、彼はそれ以来、少しずつ様子がおかしくなっていった。
最初はただの偶然だと思っていた。学校帰りに彼と何度も同じ電車に乗ったり、偶然にも私の最寄り駅で顔を合わせることが増えたりした。彼も帰り道が同じなのだろうと自分に言い聞かせ、特に気に留めていなかった。
でも、それがただの偶然ではないことに気付いたのは、ある日、彼が駅の改札で私を待っていた時だった。
「なんでここにいるの?」驚いて尋ねると、彼は笑顔で答えた。「なんとなく、君に会いたくなったんだ。」
その瞬間、背筋に冷たいものが走った。彼の言葉に違和感を感じ、そこから先の会話が頭に入ってこなかった。逃げるように家に帰ったけれど、その夜はなかなか眠れなかった。
それから、彼は頻繁に私の下校ルートに現れるようになった。学校では目立った行動を取らず、普通に友達として接してくる彼だったけれど、放課後になると彼の姿が常に私の視界に入り込んできた。最寄り駅で待ち伏せされたり、帰り道で後ろをつけられたり。恐怖が少しずつ心に染み込んでいくのを感じた。
ある日、私はもう限界を感じていた。駅の出口で彼が待ち構えているのを見た時、何も考えずに走って家に向かった。心臓が早鐘のように鳴り響き、無意識のうちにスマホを手に取り、誰かに助けを求めていた。
そして気付くと、私は彼にメッセージを送っていた。別れたはずの彼。もう私たちは何も関係ないはずなのに、それでも、彼の顔が頭に浮かんでいた。震える手で「助けて」とだけ打ち込んで送信した。
「大丈夫?なんかあった?」
彼の声が聞こえた時、私はほっとしてその場に座り込んだ。彼はすぐに駆けつけてくれた。彼の家は遠いはずなのに、私のメッセージにすぐ反応してくれたことが信じられなかった。
「どうしてこんなに早く来れたの?」と聞くと、彼は困ったように笑って「君からの連絡だから、すぐに駆けつけたんだよ!」と言った。その言葉に、思わず涙がこぼれた。彼は黙って私の隣に座り、そっと肩に手を置いてくれた。その優しさが胸にしみた。
「これからは、俺が毎回家まで送ってあげるよ。怖い思いなんてさせたくないから。」
彼のその言葉に、私はただ頷くことしかできなかった。別れたはずの彼が、再び私のそばにいてくれることが、どうしてこんなに心強いのだろう。
それから、彼は毎日私を家まで送ってくれるようになった。学校から一緒に帰ることが、日常の一部になっていった。彼との会話も、少しずつ昔のように戻っていった。
でも、私は知っている。彼との関係が元に戻ることはない。もう彼とは復縁するつもりはないし、彼もそれを理解しているだろう。けれど、今は彼の存在がただありがたかった。彼が私の心に寄り添ってくれることで、少しだけ心の重荷が軽くなっている気がした。
この物語は、私たちの新しい始まりではない。けれど、お互いに支え合うことで生まれたもう1つの物語。