海月

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「 距離 」 / 実話です。



彼と別れてから1週間。気持ちがまだ整理できていない中、友達だと思っていた人から突然告白された。

「すぐに返事はいらないから。一度だけでいい、デートしよう。」

そんな風に言われて、なんとなく断れずに約束をした。

大学の授業が終わった日、彼と私の家が他県にもかかわらず迎えに来てくれていた。

「これ、温かいほうじ茶。寒いかなと思って。」

そう言って差し出された缶を受け取ると、手にじんわりと温かさが伝わってきた。その小さな気遣いが、思いのほか心に沁みた。

「美味しいお店知ってるから一緒に行こ!!」

向かったのは、隠れ家みたいな落ち着いたイタリアンのお店だった。普段なら友達とワイワイ食べるような定食屋ばかりだった私には新鮮で、会話も自然と弾んだ。
「楽しいね。」と笑う彼の横顔を見て、ふと胸が温かくなった。

夕飯の後、帰り道で彼が提案してきた。
「せっかくだからイルミネーション、見ていかない?」
少し歩いた先の公園では、冬の光がきらきらと輝いていた。青や赤、金色のライトが夜の闇を照らし、その中で二人の影が揺れる。

静かに光を眺めていると、彼がぽつりと言った。

「 綺麗だね。」

驚いて振り向くと、彼の顔がほんのり赤かった。

「 もう一度言わせてほしい。一生大切にします。俺と付き合ってください。」

彼の声は真剣だった。こんな風に真正面から想いをぶつけられるのは初めてだった。

その場で答えを出すのは正直怖かった。でも、彼といる時間が心地よくて楽しかったのも事実だった。

「 私で良ければよろしくお願いします!」

私の言葉に、彼は驚いたように目を見開いた後、ふわりと笑った。

その日の夜、私たちは恋人になった。

「中距離恋愛だけど、頑張ろうね。」

彼は嬉しそうに笑いながら、そう言ってくれた。

まだどこか不安もあるけれど、彼がそばにいてくれるなら、少しずつ信じていける気がする。
イルミネーションの光の中で、私たちの新しい物語が静かに始まった。

12/2/2024, 3:45:07 AM