静けさの中に、花火の音が響く
このお祭りが終わったら
この花火の音が鳴ったら、最後だ。
あなたは夢を追うため、明日東の街へ旅立つ。
私の沈んだ顔とは対照的に、あなたの表情は明るい。
握った手が、まるで鎖に見えた。
「あの、さ」
行かないで
何度も言いかけた言葉が、伝えられない。
そんな自分勝手な願い、言えないよ。
バン_
その日一番大きな音が鳴った。
周りの人達が拍手をする。
ざわ
ざわ
パチパチ
最後だ、これで
「ねえ、」
「綺麗だったね」
そう言って彼は手を離した。
微笑むあなたを、つなぎ止めてはおけない。
わかっていたのに。
「うん、綺麗だった」
言えなかった。
「いってらっしゃい」
代わりに、願いを込めて。
繋いでいた方の手を振った。
_No.8 これで最後
はじめましてを、もういっかい
「あなた、誰?」
病気が進み、とうとう私のことも忘れてしまった君。
もう限界だった。
繰り返す日常に疲れてしまった。
もう全て
終わらせてしまおうと、思っていた。
夜の海は暗く、とても寂しい。
「泣いてるの?」
波の音と、君の声が聞こえる。
頬に触れる手は温かい。
ふと、君が私の名前を呼ぶ。
顔を上げるとそこには
昔と変わらない優しい笑顔があった。
忘れてしまったなら、また初めから。
何度だって伝えるよ。
「あなた、誰?」
それは、初めて君の名前を呼んだ日と同じように。
私はね_
_No.7 君の名前を呼んだ日
キミが楽しそうに見えたから、雨は嫌いではなかった
つい最近まで温かかったはずなのに、もう温度は感じられない。
今では小さな壺に納まっている。
あれほど億劫だった夜の散歩も、
恋しくて恋しくてたまらない
幸せだったかな
間に合わなくてごめんね
こんな私でごめんね
ぺたぺたというキミの足音がもう聞こえない家にいるのがつらくて、外に飛び出した。
6月。外は大粒の雨が降っていた。
涙と雨が混ざり合う。
ふと、足元で
パシャ。
懐かしい。君が雨で遊ぶ音が聞こえた。
まるで近くにいるよ、と言っているように。
楽しげな音は、響いていた。
_No.6 やさしい雨音
キミがいたから
石畳の上を、彼女はスキップで駆け抜けた。
添えられる鼻歌は、僕の作った曲だ。
「今回も素敵なメロディーだね」
歌詞は君がつける。
そうして出来上がった歌を、一つ一つ積み重ねていく。
ある夏。
「私ね、遠くへ行くの」
療養をしに、空気の綺麗なところへ。
僕のボロボロの服とは正反対で、真っ白く綺麗な服の彼女は寂しそうに笑う。
「そうか」
僕はそれしか言えなかった。
さよならさえも言えずに。
それからの僕の曲は、未完成なままだ。
自分で歌詞をつけてみようと思ったけれど、どれも上手くいかない。
あぁ、そっか。
僕の曲が歌になれていたのは、
キミがいたからだったんだね
_No.5 歌
これは私だけの秘密
「!」
「ねぇ、今見た?
流れ星!」
「…ううん、 目閉じてた」
「もったいない」
白に囲まれたこの病室で、
来客用の椅子に座ったあなたははしゃぐ。
「君が元気になりますよーにって、お願いしたよ」
「………元気になってきたかも」
よかった、と笑うあなたもわかってるはずだ。
私にもう時間がないこと。
叶わない願いをしたくなくて、嘘をついた。
見てたよ。本当は見えていたよ。
あなたの瞳に反射する、一筋の大きな流れ星。
一緒に 生きられたらなぁ
こんな思いは、私だけが知っていればいい。
あなたはどうか私を忘れて。
「また明日ね」
日が昇ることすら叶わなくても。
この思いは、私だけの秘密。
_No.4 そっと包み込んで