恋の予感がした。
甘酸っぱくてクセになる、そんな予感がしたのだ。
初めての恋は一目惚れ。
誰にも取られたくなくて必死で必死で、でも嫌われたくなくて見守るだけで終わってしまった。
次の恋もその人だった。
諦めようと思っていた、でもいつもプレッシャーに負ける心が勝ってしまうものだから諦めることができなかった。
でも次第に嫉妬に溺れ、優しさに殺され、周りと比べ、
改良に改良を重ねた結果、自分では無くなってしまった。
どこかでは満足しているけれど、どこかではずっと嫌な予感しかしなかった。
一目見た時、貴方はまるで一輪のコスモスのようだった。
コスモスには調和や謙虚という言葉があってこんなにもこの言葉が似合う人がいるのだと知り、言葉が詰まった。
周りに合わせ控えめに笑う彼女の優しさと苦しみに気づくものは私だけ私さえ知ってればいい。
どこかできっとあの大きな目から大粒の涙が流れ、どこかできっとこの小さな顔に可愛らしい笑顔が咲くのだろう。
鈴のような綺麗な音色の声に、美しい黒の羽衣のような髪。
どこをとっても完璧な彼女を自分のものにしたかった。
最愛の貴方がいなくなる前にこれだけは伝えさせて。
病室でかろうじて息をしている貴方の手をぎゅっと握り悲しみがバレないよう平然を装いながら囁く。
永遠なんて、ないけれど。
また生まれ変わっても必ずあなたを探すから、だからあなたも私を探して?
今みたいな関係じゃないかもだけどずっと隣にいるのは貴方がいい。
ずっとずっと好きだから。
おばぁちゃんになっても好きだから。
来世の性別も生物も性格も見た目も何もかも変わっても貴方を、貴方を好きなこと絶対忘れないから。
貴方も忘れないで。
「僕と一緒にいなくなろ?」
と私の前で囁く女の子。
私の目に映るのは容姿端麗で高嶺の花。そして人や動物から好かれる優しい、女の子らしい女の子が映っていた。
そんな子からいきなり“いなくなろう”なんて言われることなんて人違いなのかそれか好意を寄せてるもの同士でしか聞かないであろう言葉が発せられた。
私が唖然としてるうちに高嶺の花は崩れていく感じがした。
最近までは“私”だった一人称が不自然な“僕”に変わって、怖いくらいに必死さが伝わってしまうほどだった。
彼女は私を愛しているのだ。
出ないと今までの行動が理解できない。
無駄にボディタッチが多いのも、私を見る目がだんだんと変わっていくのも、“同性”と“行動”が私を混乱させ気持ち悪さを押し殺して息をしていた。
でも今その理由がわかってしまった。
私は特に性に関して興味がないから誰でも大丈夫なのだが同性だからという言葉で混乱してあの気色の悪い行動に対して目を塞いでたのかもしれない。
そんなあなたが私より辛いと言わんばかりに言った言葉が心底許せなかった。
誰にも嫌われたくないあなただから私の前だけ本当の自分を出したの?
それとも同性同士の恋愛が想像できなかったから?
混乱が混乱を招いているときに彼が私の手を握って意識がはっとした。
そこはもう手遅れで世界が逆さまになっていた。
一向に既読がつかないメッセージ。
メッセージを確認するためにつけては同じ結果で消してそんな繰り返しで1秒1秒が長く感じる。
こんなにも私の頭はあなたでいっぱいだというのにあなたは私を頭の片隅にも置いてはくれないのね。