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5/13/2026, 2:27:11 PM

 好きな人ができた。その人のタイプに近づくため自分を殺し、新たな自分へと生まれ変わらなければいけない。ありのままの自分を愛してくれる人など、クレオパトラでもみつけることが難しいのだ。愛してほしければそうならなければならない。
 長年手入れしてきた艶のある黒髪は肩くらいまでバッサリ切った。
 おしゃべりな口も比較的、開くことが少なくなった。
 暗い性格を無理矢理にでも明るくした。
 毎日毎日、鏡を見て欠点を探した。
 チャームポイントはいつからかコンプレックスに変わり、隠すようになった。

そんな変わった私を見て離れていった人も、逆に来るようになった人もいる。
 今がどんなに苦しくても、貴方に愛されるのなら今を捨ててもいいの。それくらい貴方が好きなの。

 「最近変だよ?前の君の方が良かった。」

…私の恋はあっけなく終わった。
全て貴方のため、貴方のためなのに。
変じゃないよ?ほら貴方の好きな人になってるでしょ?

前の自分など、とっくに忘れてしまった。
一つずつ、壊れていった。
今思えば、貴方を好きになったことが間違いだったのかもしれない。誰か早く気づいて欲しかった。

前の自分になれば愛してくれるの?
今までの言葉はなんだったの?
無責任じゃないの?
一年後も一年前も私は私だよ?

私は私を無くした。

3/29/2026, 4:35:03 PM

 あの頃の私には人生も時間もかけるほどの夢があった。
運命ではなかった、奇跡でも、偶然でもない。只々、好きになろう、自分の夢中になるものを創ろうと考えていただけであって結局はなんでも良かった。
私だけの夢そんな夢を話した瞬間に肯定されるのもすごく嫌だった。私は自分の夢を独り占めしたかったからだ、なんでもいいけどコイツには越されたくないと。
 必死に努力した。全てを注ぎ込んだのだ。
でも、いざ目の前にすると、あぁ自分は向いてはいないのだなと、ネットを見ればそれぞれの生まれ持った環境で成績を伸ばす自分より遥かな年下のやつにも、心を打ち砕かれる。
 努力すればするほど今の自分では足りないことがわかってくる。時間が経てば経つほど、不安は募るばかりで諦めることで胸も頭も一杯だった。
 生憎自分の夢は叶うことができた。合格という文字を嗅ぎつけた心無い言葉をかけていた親戚がまるで応援していたかのようなそぶりで駆けつけた。
 そんな場所はすぐに離れた。親元を離れ1人で暮らす、不安はあったような気はしたが、実家にいるよりも心地が良かった。
 時間が経つごとに知ることになる。
夢を叶えた自分と努力をしていたのに叶えられなかった人、すごく気持ちがいい、誰かの上に立つことが生まれて初めての快感で仕方がなかった。
好きなことが業務化する中で知った。
落ちたアイツは成功したらしい。
会社を建て社長になり家族ができたそうだ。
私はアイツをカフェに誘った。
随分と呑気にアイツの口から出る言葉に嫌気がさす。
君はいいよね、社長になれて
自然と口から出た言葉と、アイツの口から出た言葉に私は負けた。
君だって夢を叶えただろう?

3/17/2026, 2:29:12 PM

大好きという言葉が本当に信用できるのか私は思った。
その場繋ぎの都合のいい言葉のように思えてきて、口にすれば本当になり言わなければ嘘になる。
つまり本当を知らず嘘をつかれたままの人間はいつしか壊れると、私は言いたいのだ。
すぐ好きになってしまうのだ。
異性も同性も。自分にないところも、話し方も仕草もいつも間にか好きなる。
本当に好きなのか、と思えば思うほどよくわからなくなってくる。好きの基準が広すぎて、自分の好きは本当ではないのだろうと。
大好きという言葉に限らず、信用、ありがとう、ごめんなさい、こんな言葉も結局のところ嘘なのだ。
嘘は約束を破るというイメージで事実は約束が守られることとして考える。
つまりいつか叶えば事実になるのだ。
だが嘘も事実も人の考えることであり他人の心理などわかるはずもない。

いつか愛してくれるのならそれでいいじゃないか。
いつか叶えばそれでいいのだ。

今はまだ泣かないよ

3/3/2026, 3:30:36 PM

ひなまつり、よく小さい時に保育園から帰ってきて祖母と一緒雛壇を出し人形を並べたものだ。
飾る時になっては祖母特有の都市伝説を私に教えてくれた。
今となってはあり得ない話なのに昔はその話を聞いて本気で信じて怖がっていた。
兄のいる男勝りな私が唯一雛人形たちの前に座って女の子らしく振る舞った。そして雛人形の前ではみんな寄ってたかってカメラを向け可愛い可愛いと言っていた。勿論気分がいいこと以外の何者でもない時間だった。

2/28/2026, 2:09:11 PM

 君が僕に訴えるように泣いた。
 それは主観的に見ればただのよくあるメンヘラチックなやつだ、でも僕はそうとは思わない。客観的に見てしまえば僕に何か訴えているようにも見え、助けを求めているようにも見える。
それでも、何か行動をしようとは思わなかった。というかしては行けないと思った。
主観的でも客観的でもない、本能的に君はいなくなると感じ取ってしまった。
「もし、もし私が遠くの街へ逃げたら貴方は追ってきてくれる?」
「もし、私がこの世からいなくなっても来世でまた見つけてくれる?」
「また名前を呼んでくれる?また私を彼女にしてくれる?」
異常ではなかった彼女は冷静だった。震えるはずの声は芯のあるはっきりとした声で自立していた。
ただ彼女の締め付けている心が泣いたのだ。
 今僕が何か行動をしようと何か彼女を助けようとするのはきっと邪魔なことでしかないのだろう。これ以上何かしてしまったら崩れてしまうような気がして。
苦しむ彼女を前にただ無力な自分に呆れるばかりだった。
「当たり前だよ。見つけるよ。どんな姿でも愛すよ。どんな名前でも君が振り返ってくれるのら何千万回、何億回も呼ぶよ。」
ふと思いついた言葉をつらつら並べ綺麗事の盾を作る、こんな状況でも僕は自分に都合の良い結末しか考えられないのだ。

僕は汗をかいて夢から目覚める。
悪夢を見ていたようだ。
こんな形で君を思い出すのか。
僕は身支度をし彼女の墓場がある遠くの街へ向かった。
「待っててね」

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