かも肉

Open App
12/22/2024, 2:12:40 PM

作品42 ゆずの香り


 冬至といえば、かぼちゃとゆず湯。好き嫌いが分かれるらしいが、私は両方大好きだ。今年は、かぼちゃを煮物と団子にし、柚子は親戚から頂いて風呂に浮かべ、楽しんだ。
 それが昨日のこと。やっぱりいつもと違う風呂って気分が上がる。
 少し鼻歌をしながら登校する。やけに量の多い階段を登り、友達におはよーと挨拶し、席に向かう。
 窓側の一番うしろの席。この季節だと太陽の光で暖かいし、暖房はいい感じの距離にあるから、控えめに言って最高。しかも隣の席はクラスで一番頭がいい天才さんだから、近くの私は先生に当てられづらい。すべてが最高。
 机にカバンを置き、椅子に腰掛ける。外が寒かったぶん、暖房がよりありがたく感じる。
 ぬくぬく暖まっていると、隣の天才さんから話しかけられた。前髪を整える。
「なんかいいにおいするね。柚子?」
 慌てて髪の匂いを嗅ぐ。
「ほんとだ。」
「香水?」
「いや、昨日冬至だったからだと思う。ほら、ゆず湯。」
 なるほどと、納得したように天才さんが目を細める。かっこいいしかわいい。
「昨日だったんだ。」
「知らなかったの?」
「うん。ゆず湯入れなかったな。」
それはなんと。
「残念だね。」
「あ、でも。夕飯にかぼちゃは出てきたよ。」
「でもお風呂はいつも通りと。」
「いや、入浴剤入ってた。」
「え?ゆず?」
「いや。檸檬の入浴剤。」
「何故……。」
「お母さん、柑橘類の見分けついてないから?」
「全くの別物なのに。……あ、あれじゃない?んがつくからじゃない?」
何を言ってるんだと顔をされてから、気づいた顔をする。
「ああなるほど!そういうことか。」
「ね!」
「でも食べてないから意味ないかもね……。」
「そうだね……。」
 そこまで話して、チャイムがなる。先生が教室に入ってきて、ホームルームがはじまった。
 天才さんに向けていた体を前に向きなおし、顔を下に向け、細く長く息を吐く。顔がどんどん赤くなっていくのを感じた。
 私、ちゃんと普通に喋れてた?なんかすごいどうでもいいことしか話してない気がする。え、変な人とか思われてないよね?
 今更ながら手鏡で顔を確認する。前髪よし。先生にバレない程度の控えめメイクよし。肌の調子よし。
 大丈夫。今日はちゃんとかわいい。まあ、そのためにいつも頑張ってるからだけどね。
 手鏡をポッケにしまい、天才さんをチラ見する。
 私は隣の席の人、天才さんが好きだ。



⸺⸺⸺
檸檬の花言葉“心から誰かを愛しく思う”
柚子の花言葉“恋のため息”
ネットで調べただけなので正しいかはさておき、珍しくキャピキャピ系です。
柑橘類の見分けがつかないというのは、かも肉自身のことです。わあ恥ずかし。

12/21/2024, 12:23:50 PM

作品41 大空


 やっぱさ。人間誰しも空飛びたいって思うときあんじゃん?なぜか僕達は、空に強い思いを抱いているから。ほら、その証拠に、自由を絵として表すときに、大体は空を写してたりするし。
 それだけ、空って大切で憧れるものなんだよ。
 だから、僕が今からすることも、全部憧れから来てるだけ。だから、気にしないで。
 さっきから一生懸命そっちで、相談乗るよとか早まらないでとか言ってるけど。こっちからしたら、終始意味わからなくて、若干の恐怖を覚えてるよ。
 ずっとさ、空に行ってみたかったんだ。羽なんて僕らには存在しないけど、大きな翼を広げて大空に飛び立つ。なんかいいなって思わない?
 そしてその願いは高ければ高いほど。空に近ければ近いほど、叶いやすくなってく。
 わかる?あ、いや分からなくていいよ。共感されるなんて思ってないから。
 でも一つお願い。いい?ありがと。
 僕の。俺の夢、止めんなよ?



⸺⸺⸺
希死念慮の形は人によって違うよーって話です。

12/20/2024, 5:28:06 PM

こんにちは、かも肉です。
いつもたくさんハートを送ってくださり、誠にありがとうございます。
これまで毎日書くことを心がけていたのですが、あまりにも書くことに夢中になってしまい、寝不足で体調不良になってしまいました。
この馬鹿みたいな経験を踏まえ、これからは二日に一回とか、そこら辺のゆっくりしたペースでやっていきます。
というより、気づいたらアプリ消してるかもです。普通にスマホの容量がなさすぎて、アプリの断捨離を始めているので。
一応これまで書いたのは全部コビーしているので、失うものは何もありません。ただ、創作欲求を満たすだとか、文章を書く練習するだとかがすごくやりやすいので、正直続けるか消すか微妙なところです。
まあ、急に消えてたら断捨離したんだなと思ってください。
なんでこんなグダグダ書いているかって?それはもちろん、今回のお題がムズいからっすよ。
こんな野郎が書いた文章を読んでいただけているのかと思うと、とても嬉しいです。
消えるその日まで、どうかお楽しみください。
そう言って明日になって確認すると、あれ消えてる!とかならすごいうけるんすけどね。
はい、ここまで読んでいただきありがとうございます。
それでは本題の“ベルの音”だっけ?なんだっけな。直で書いてるから消せない。まあ、適当に行きましょ。“ベルの音”ですどうぞ。
⸺⸺⸺
作品40 ベルの音


 家の近くに喫茶店ができた。歩いて十五分、自転車で五分くらい。そのは、とても美味しくて、特に喫茶店オリジナルのパフェが絶品だ。
 なぜこんなに詳しいのかというと、
「ねえ、ここ、気になるよね!一緒に行こ!」
 この女のせいだ。

 彼女は前の席に座ってる、所謂キラキラしてる系の女子。何故か陰キャの私にいつも絡んでくる。漫画かよ。
 でもまあ、私はあなたに興味ない。
「いや、甘いの苦手だからいい。」
「コーヒーもあるって!」
「コーヒーはお腹痛くなる。」
「普通のご飯もあるよ!」
「家ので十分。」
 だからいつもこんな調子で、嘘をついたりして、あらゆる誘いを断っている。なんで親しくないやつなんかと一緒に、飯食いに行かなきゃいけないんだよ。
「ねーねーいこーよー。」
 無視して帰る準備をする。
 今日は早く帰らなければいけない。なぜなら、好きな作家さんの最新作が、やっと近所の書店に並ぶからだ。
「急いでるから。さようなら。」
 足早にドアに向かう。誰も私を止められない。もちろん彼女も。いつだか布教したことがあるが、多分覚えておないだろう。
 まあだから、さっさと帰ろうか。
 教室の入り口近くまで歩いていく。
「……本買ってあげるよ?」
 思わず足が止まってしまった。
 後ろを振り返ると、彼女がニヤリと悪そうな顔で笑っていた。
「行こっか?」
 その誘いに乗ってしまった。

 カランコロンと、ドアのベルが鳴る。
 五分で帰ってやると決心して学校を出たはずなのに、その決心はあっと言う間に塵となった。
 店内に足を踏み入れる。片手には、さっき買ってもらったばかりの本がある。決心が揺らいだのは、これのせいだ。悪くない。
 そう自分に言い聞かせながら、店内をぐるりと見渡した。
 なるほど、いい感じのお店だ。レトロな雰囲気で、かかってる曲もセンスがある。カウンター席しかないようなので、一人で来るときとかは良さそうだ。
 頭を物理的な意味で必死に動かしていると、キッチンの方からいらっしゃいませと言う声が聞こえた。キッチンを見てみる。お父さんより年上で、おじいちゃんよりも若干若いくらいの男性。所謂おじさんが、エプロンを着て立っていた。
 席に座ると水とメニューを渡され、ごゆっくりどうぞと言い、去っていく。
 隣に座っている彼女に見えるように、メニューを置いた。
「えーどうしよー。やっぱパフェがいいと思うけど、気分はパンケーキなんだよなー。ねーねーどうする?決めた?」
 はしゃいでる様子で、彼女が言った。なるほど、メニューの写真はどれもすごく美味しそうだ。これは、迷うな。
 しばらく考えていると、彼女がまた言った。
「え、やっぱりケーキも良くない?パフェがパンケーキがケーキ……。悩む!」
 彼女が行ったメニューの写真を順に見ていく。私だったらパンケーキだな。そう思ったので、パンケーキにした。あとは彼女が選ぶのを待てばいい。
 しかしなかなか決まりそうにない。次は原点に戻って、パンケーキとパフェで悩んでいた。なんだか可哀想に思えてくる。
 しょうがないな。
「私パンケーキにするから一口交換する?」
 そういうとキラキラした目でこちらを見つめてきて、
「いいの!マジ感謝!ありがとー!」
 と、すごい感謝された。なんか、かわいいな。
 さっきのおじさんを呼び、パフェとパンケーキを頼む。すぐ運ばれてきた。
 食べる前に写真を取り、好きなところを選ばせて口に運んでやる。美味しそうに食べていた。たしかに美味い。これは行きつけになりそうだ。
 夢中で食べていると、彼女がフォークを近づけてきた。
「はい、お礼!おいしーよ?」
 少し抵抗しつつもいただく。
「!?え、おいし!?」
 思わず声に出てしまった。
「ありがとうございます。」
 おじさんが嬉しそうな顔で、こちらを見た。
「ね、おいしいよね!」
 満面な笑みで彼女が喋った。
 可愛い人が二人いる。これは行きつけに知るしかない。
 そう決めたとき、ドアの方からベルの音がした。新しいお客さんが入ってくる。
「いらっしゃいませ」
 おじさんの声が、まだ少し残ってるベルの音とともに、店内に響きわたった。


⸺⸺⸺
はい、眠いです。雑ですみません。優しい目で見てください。

12/19/2024, 1:59:01 PM

作品39 寂しさ


 帰り道はいつも暗い。仕事は早く終わらせたはずなのに。気づくと夜が迫ってきて、暗くなっている。
 冬が来たんだな。
 あなたが呟いた。そうですねと返す。
 たまたまバス停まで帰り道が同じ。ただ、それだけの理由で、いつもあなたと一緒に帰っている。
 言葉を交わすときもあれば、交わさないときもある。他の人だったら気まずくなってしまうけど、あなただけは別。
 この時間が好きだ。
 雪が降り始める。あなたの髪の毛につき、その結晶をゆっくり崩していく。それがとても綺麗だった。
 見惚れながら歩いていると、あっという間にバス停までついてしまった。
 それではさようなら。
 あなたが言った。同じくさようならと返す。バスに乗ったあなたを、小さくなるまで見て、歩き始める。
 さっきよりも空気が冷たくなっている気がした。星の輝きが眩しく見えた。雪が少し積もっていた。
 一人分の足跡を、付けていく。

12/18/2024, 11:54:43 AM

作品38 冬は一緒に


 夢の話をしようよ。お互いの将来の夢。職業でも願望でも何でもいい。未来の話をしよう。
 まずは君から言ってよ。え?先にどうぞって?しょうがないな。先に話すから、ちゃんと次に話してね。
 ……なんか、照れくさいね。よし、じゃあ言うね。
 毎朝起きるたび眠そうな君の顔を見て、ご飯食べてる顔を見て、楽しそうな君を見て、喜んでる君を見て、泣いてる君を見て、落ち込んでる君を見て。毎日、百面相してる君の感情に触れていたい。
 ストーカーとかじゃないからね。純愛だからね。……ほら、笑ってくれた。それをずっと見てたいんだ。
 見れるためなら何でもする。
 具体例?えーそうだな……。
 春はさ、桜を見に行こうよ。近くの公園までお弁当持っていって。あ、でも夜桜も好きそう。どっちがいい?あとで教えてね。
 夏はさ、海に遊びに行って、祭りでりんご飴食べようよ。貝殻を持って帰って、思い出として形に残してさ。りんご飴は大きいから一緒に食べることになるかもね。君一人で食べてもいいよ。好きなもの、何でも買ってあげる。
 秋はさ、紅葉を見にどっか旅行行こうよ。少し肌寒いかもだから、羽織るものも買わなくちゃね。準備するの楽しそう。服は君に選んでもらいたいな。いいかな?
 冬はさ。冬は一緒に熱々の肉まん半分こして食べよ。クリスマスだったらケーキを半分こ。プレゼントを交換こして、一緒に過ごそう。年越しも一緒がいいな。
 そういうのを一周だけじゃなくて、飽きるまで何度も何度もしたい。
 えっと、だからね。何が言いたいのかっていうと。
 夢は、君とずっと一緒にいることだ。
 どんなに天気が悪くても、どんなに辛いことがあっても、どんなに周りから否定されても、君の隣にいたい。
 ……ほら。次は君の番だよ。早く言ってよ。……泣かないでいいから。ごめんねとかもいいから。ねえ、おねがいだから。
 これ以上その手を冷たくしないで。ちゃんと心臓動かして。ほら、息吸って。
 ねえ、一緒に未来の話をしようよ。君の願いを聞きたいな。さっき約束したばっかじゃん。聞かせてよ。喋ってよ。
 聞かせてくれるまで、ここにいるからさ。
 だからお願い。まだ寝ないで。その顔はまだ見たくない。

Next