所感2 届かない……
食糧庫の上の方に積まれた、魅惑的なお菓子達。ポテチ、じゃがりこ、ポッキー、プリッツ、おっとっと、柿の種、するめ、チョコレート……。どれもこれも美味しそうだ。しかし、一つも食べることができない。この身長じゃ、ジャンプしても椅子の上に上がっても届かないからだ。
そんな感じで、幼少期の頃は親がいなくてはおやつが食べられなかった覚えがある。好きな時に好きなように食べてねと我々に言う割には、良心的とは言えない場所に置く親。
あれは一体、何だったんだ……。
たまに思い出しては無意味に憤る。まあ今更昔の気持ちを出しても遅い。
それより今を見よう。
冷蔵庫からさけるチーズを取り出し、一つ丸かじりすることができる。小腹が空いたらコンビニに行って好きなお菓子を買える。というか夜中にお菓子を作れる。
嗚呼最高じゃァないか!
親と体重計から離れた今しかできない贅沢だ。
所感1 木漏れ日
今日からお話以外にも、心に浮かんだことを書こうかなと思う。元より、自分の心情を言語化する練習をするのを目的としてこれを始めたので、ただ本来の目的に戻っただけだ。
一応記載するが、これからも今までしてきた物語の様な物は書いていくつもりだ。その時の気分によってどちらかに変わるだけ。自身の心情を『作品』と番号付けて書くのはこっ恥ずかしいので、これらを『所感』と題する。
さて。
木漏れ日と聞けば、緑になっても尚幼さを残る色をした葉とそれを纏った木。そして、葉の色を僅かに盗んだのか、どこか黄緑のようにも見える黄色い日の光が脳裏に浮かぶ。多分、ネットで木漏れ日と調べればそれと似たような画像が出てくるだろう。いざしてみると案の定。
自身だけなのか如何かは知らないが、木漏れ日という言葉には夏を感じる。細かく言えば初夏といったところだろうか。
なぜそう感じるのか、少し考えてみた。そして幼いときのことを思い出した。
一つ、昔話をしよう。自分は北の方の田舎で生まれ育った。涼しい地域だ。今では地球温暖化だかなんだかでだいぶ暑くなってしまったが、幼少期の頃はとても涼しかった。
そうはいっても、夏はそれなりに暑い。
なので両親は、近所のソフトクリーム屋さんによく車で連れて行ってくれた。近所と言っても田舎の感覚なもんで、車で行けば30分以上かかる。ちなみに最寄りのコンビニはそこからあと数分走る。都会の者からしたら多分異常なのだろう。話を戻す。
そのソフトクリーム屋さんは田舎にある数少ない飲食店?と言うわけで、田舎の割には繁盛していた。行くたびにそこそこの人数がいる列がある。なので毎度毎度暇な時間が少しあった。
当然、ガキからすれば退屈である。
なのでその間我々ガキ共は、近くにある花壇に植えられている木の下周辺で遊んでいた。ちょうど親の目から離れることはないし、そこそこ広さがある野原もそこの近くにある。暇つぶしにはうってつけの場所。
そこでアイスが来るまではいつも遊んでいた。兄弟と鬼ごっこしたり、小さな木の切り株のような物を平均台のようにして歩いたり。一度、木登りをしようとしたことがあるが、公共の場に生えてる木のため流石にそれは怒られた。まあ、そんな感じでいつもアイスを待っていた。
そしてある年の初夏。その日はたまたま風が強く、また、その年初めてのソフトクリームだった。当然ウキウキで行き、ウキウキで遊ぶ。すると突然強風がやって来た。アイスを持った他の子は落としてしまい、泣いてしまうほどの。
自分は冬のために伸ばしていた少し長い髪のせいで視界が悪くなり、どうにかしようと目をつぶりながら髪を顔から避けようと、上を見た。犬のように顔を振り、さっと手櫛で髪をとく。そしてそのままの頭の位置で、目を開いた。
真っ先に目に飛び込んできたのは、あの木だった。
薄い緑色の葉を纏った木が恐ろしいと思うほど大きな音で、しかしそれでいて爽やかさも感じる動きをしながら、太陽の光を受けて揺れていた。
それが何故か、見慣れた木なのに、いつものものとは思えないほど、美しく見えた。
色、音、動き。どの要素があんなにも美しく感じさせたのか、分からない。だがあの景色は何年経った今でも鮮明に思い出せる。
あの瞬間僅かに見えた木漏れ日は、まだ幼い子供の心でさえ美しいと思えれるような感動をくれた。
うまく話がまとまらないが、要は幼い頃見た木漏れ日がたまたま初夏の頃だったため、木漏れ日=初夏というイメージが自分にはあるというわけだ。我ながらぐたぐただ。オチがないというのは辛いものだな。
最後に、木漏れ日関係で一つ。
これから私の故郷の方ではそろそろ桜が咲く頃だ。もしかしたらもう既に散っているかもしれない。そうなら少し残念だが、まだ残っているならしたいことがある。
夕方になりかけた頃に桜の木の下に行きたい。
少し赤に染まった桜と、その空の色と、差してくる光が、初夏の木漏れ日とはまた違って、綺麗だから。出来る事なら、昔の友人と共に見たい。
グダグダ長くなってしまって申し訳ない。ここまで読んでくれたあなたに、心より感謝します。
日常を少しだけ忘れられるような、そんな素敵な景色をあなたが見られますように。
作品67 ラブソング
もし僕が歌を作れるなら。
街で流れてるような、ありふれたラブソングを作りたい。
きっと君は気づきもしないんだろう。
いつも下に落としてるその視線をたまに上げて、そうしたらどこからか小さな音で流れてくる音楽。イヤホンを耳から落としたときに一瞬聞こえる街の騒音とともに不意に耳に触れる音楽。
その程度の存在でいい。いや、その程度がいい。それがいいんだ。
誰にもバレずに、一つの雑音としてでいいから、君の日常に溶け込みたい。
そんな音楽を。
誰にも知られず朽ちていく、そしてくすぐったくて、そこら辺にありふれたような。
そんなラブソングを作りたい。
⸺⸺⸺
ラブソングと言えば天使にラブソングを。
あれは神映画。
作品66 すれ違う瞳
「お待たせしました、こちらご注文の品です。」
そう言われて机の上に真っ白なクリームがたっぷり乗っかったシフォンケーキと、そして彼女の目の前には微かにチョコの匂いが漂うチョコケーキが置かれた。
ありがとうございますと言い、フォークを握る。彼女は瞳を輝かせて、食べていい?と聞く。笑いながらもちろんと返す。
二人でいただきますを一緒に言い、フォークを入れる。彼女がキャーっと小さく声を出した。可愛らしくて思わず笑ってしまう。二人で同時に口へ運び、食べる。
「美味しい!」
そう言って彼女がこちらに目線を渡した。一瞬目があったように感じる。嗚呼食べてしまいたいくらい可愛い。気持ちを隠しながら微笑みかけ、コーヒーを飲んだ。話しかけたくなるのを我慢して、音が鳴らないようそっと写真を撮った。
食べ進めながら、二人で話す。無くしてしまった三毛猫のぬいぐるみ。よく混むようになってしまったお気に入りのカフェ。最近飼い始めた黒いかわいい子猫。そして少しだけ仕事の愚痴。他にも色んなことを百面相しながら喋る彼女の姿は、自分のものだけにしたいくらい可愛かった。
「ごちそうさまでした!」
気づけばケーキが無くなっていて、彼女たちは会計を済ませようとしていた。急いでコーヒーを飲み終える。早くしないと、彼女たちが店から出ていってしまう。店員さんに謝罪をしながらお金を払い、急いで店から飛び出した。
ちょうど彼女は友達と別れて、一人で歩いているところだった。バレないように気をつけながら後をつける。
家につくまでの道のりで一度だけ彼女はふり返り、こちらの方をちらっと見た。一瞬、目があったように感じたが、すぐ逸らされる。前を向くとき、少し顔が強張っていた。その表情すらも愛おしい。
いつか、君の瞳をしっかり見つめたいな。
⸺⸺⸺
作品5 子猫
より、お相手目線。
性別はお任せで。
この後に主人公が盗聴しているシーンを入れて作品5に共通点的なつながりをつくりたかったんですけど、あまり機械詳しくないんで諦めました。
作品65 ふとした瞬間
タイマーを3分にセットしてからスタートボタンを押し、蓋を剥がしてお湯を注ぐ。真っ白な湯気がやかんから出てきて、少しの間メガネに張り付いた。線まで注げたら、カップの上にやかんを少しの間乗せる。しばらくしてやかんの熱で蓋が元のようにくっついたら、コンロの上に戻す。
片手には氷水が入ったガラスのコップとタイマーを。もう片方には割り箸と少し熱いカップラーメンを持って、テレビの前にある小さいちゃぶ台の上に置く。
……我ながら、何一つ無駄のない作業だ。
そう独り言を言いながら、女性みたいな長さになってしまった髪を一つにまとめる。
こんな無駄のない動作だが、普段からカップラーメンを食べてるわけじゃない。何なら数年ぶりに食べるくらいだ。
いつもは近くのパン屋で売れ残ったパンを買ったり、賞味期限間近の惣菜をスーパーで買ったり、時間があれば簡単に作るとかして、ちゃんと食事はしている。ただ今日は、パッケージにでっかく書かれたこの『新発売!!!』という文字に惹かれてつい買ってしまった。ついでに言うと、一番好きなカレー味も一つ買ってしまった。
まあ、たまにはこういう食事もあるということで。別に誰かに怒られているわけじゃないが、一応そう言ってこの食事を正当化しといた。
しばらくするとタイマーが鳴った。メガネを外し、蓋をペリペリと剥がした。食欲をそそる匂いが部屋に広がる。カレーのいい匂いだ。
と思ってから、新作ではなく間違えてカレーの方にお湯を注いでしまったことに気づいた。あーやってしまった。同じ茶色に騙された。まあ、確実に好きな味だし、良しとしよう。いつもみたいに、秒で自己完結した。
割り箸を口に咥えながらテレビをつけ、そのまま箸を割る。綺麗に割れて、少しテンションが上がった。
いただきますと言って、まずスープを飲む。ああこの味。安定にうまい。そして麺を啜る。麺にしてはやけにコシのないこの麺が、俺はそんなに嫌いではない。本場のラーメンに怒られそうだが、美味いから許されるはずだ。
麺を食べ、申し訳程度に入った具を食べ、スープを飲む。そしてまた麺を食べ、水を飲む。テレビでは最近話題と紹介された若手の芸人が派手にスベっていた。
しばらくすると、麺がなくなり、スープだけが残った。
立ち上がり、キッチンへ向かう。たしか米を冷凍していたはずだ。あったあったと喋りながら、レンジで温める。いい感じに温まってから、チーズとスプーンを手に取り、ちゃぶ台へ戻った。
余ったスープの中に熱々の米を入れ、チーズも入れる。明日絶対肌大変なことになるなと思いながら、スプーンでちょっとだけ混ぜる。いい感じに混ざったところで、また食べ始める。悪魔みたいな美味さだ。
すぐに〆は無くなった。ごちそうさまでしたと言ってまた立ち上がり、またキッチンへ向かう。少しぬるくなってしまったやかんの中のお湯を温め直しながら、マグカップに紅茶のティーバッグを入れた。そして冷蔵庫から小さい白い箱を取り出し、フォークと皿を食器棚から取って、それだけ先にちゃぶ台に置いといた。すぐにお湯が沸き、マグカップの中に注ぐ。カレーとはまた違う、いい匂いだ。
出来上がった紅茶を持ちながら、ちゃぶ台へ戻る。そして白い箱からお楽しみのケーキを取り出す。コレのために今月頑張ったと言っても過言ではない。
高まる気持ちを抑えて、紅茶を一口飲む。それではお楽しみの。
いただきます。
そっと口に運び、計算しつくされたその甘さに思わず笑みが溢れる。本当にもう最高だ!
テレビでは、先程の芸人のボケで会場が大盛り上がりしていた。
笑いながらふと、こういう時間がずっと続けばいいなと思った。
⸺⸺⸺
幸せなで笑っている時にふと我に返るあの時間が、幸せにただ浸っているときよりもさらに幸せを感じられる気がするから、あの時間はそれなりに好き。