かも肉

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10/14/2025, 1:33:00 PM

お前!!!これ梨!!!この前梨のケーキの話書いたのに!!!!結構直近で!まじで何なん!!!!いや美味いけど!だけど最近やってこれはちょっともう!くそったれ!!!!梨美味しいですよねアレルギーならない程度に食べまくりたいです!!!!!

10/1/2025, 11:03:03 AM

作品75 秋の訪れ



 学校から帰ると、部屋が少し荒らされていた。空き巣ではない。どうやら自分がいない間に母が内緒で入ったらしい。連絡入れてくれたらもう少し掃除したのに。
 机の上には大量のお菓子と、少しのお金と、1枚だけ置き手紙が置いてあった。

 『最後の大会、準優勝おめでとう。ひと月遅くなったけど、お祝いとして冷蔵庫にケーキを入れておきました。夕食食べてからたべてね。下宿の人によろしく。』

 それは母からの、祝いのメッセージだった。
 大会。
 その単語だけで、あの時。大会の結果発表のときを思い出す。自分たちの学校名が呼ばれた瞬間、誰かが叫んだのをきっかけにみんな泣いて、おめでとうと言い合って、何度も何度も、夢じゃないことを確かめるようにつよく抱きしめ合った。閉会式が終わったあと、みんなは泣きながら家族に連絡を入れていた。
 それがひどく、羨ましかった。
 もし自分が今両親に連絡すると時間帯的に仕事だから迷惑になるし、連絡したところで優勝じゃないのにって言われて終わる。それが怖くて、この幸福感を壊したくなくて、言うのをやめた。

 けど、認められたんだ。褒められたんだ。それが嬉しくて嬉しくて、何度も母からの手紙を読んだ。

 夕食後、紅茶のためのお湯を沸かしながら、ケーキの箱を机の上に置いた。クリスマスプレゼントを開けるみたいに、丁寧に開ける。何かな。秋だしスイートポテトかな。最近りんごをよく見るからアップルパイだったりするのかな。
 開いた箱を覗くと、中にはひとつだけ、果物のような形をしたケーキが入っていた。何のだろうって思ってみた瞬間、自分の中で何かが冷え始めた。
 梨のケーキが入っていた。自分の姉は大好きで、自分は大っ嫌いな梨。
 少しずつ温まった幸福があっという間に冷えきったのと同時に、お湯の沸く音がした。ポットを開けて、コップに注ぐ。中に紅茶のパックを入れて、少し待ってから取り出す。大好きな紅茶の温かい匂いが、部屋だけを満たした。
 フォークを取り出し、ケーキに刺す。どうしてかなかなか切れない。そのせいで、ひどくぐちゃぐちゃになってしまった。一口大とか行儀悪いとか全部無視して口に運び、味わう前に紅茶で流し込んだ。機械的にそれを何度も繰り返す。何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。
 やっと食べ終わったときには、甘ったるくて吐きそうになった。吐く代わりに、ためてた思いが溢れてきた。
 本当は先月じゃなかった。先月大会あったのは姉で、姉の方はちゃんと優勝して。だけど自分のは先々月にあって、準グランプリで、親が大好きな一番じゃなくて。
 本当は、今日お母さん来てくれてたってのを知って少し期待した。だって。だって、今日私の誕生日だったんだもん。ケーキって書かれたのを見て、さらに期待した。小さい頃よく作ってくれた私の大好きなスイートポテトかなって少し期待した。なのにこれは売ってるケーキで。私じゃなくて姉のためのケーキで。こんなんならもうせめて。
 せめてりんごのケーキがよかったな。


⸺⸺⸺
※かも肉本人は梨のケーキめっちゃ好きです。

9/2/2025, 10:14:14 AM

作品74 ページをめくる



 片付けしている最中にノートを見つけた。あなたを感じたくてページをめくる。筆算練習、ぐにゃぐにゃな漢字、家庭学習……。全部に赤ペンで大きな花丸が書かれていた。
 それはもう二度と、書いてあげることができない物だ。そしてもう、頑張りを褒めることも、分からないところを隣で教えてあげることもできない。
 私にはもう、あなたの物にあなたの名前を書くことすらできない。

8/30/2025, 12:33:54 PM

作品73 ふたり



 昔の夢を見た。
 昔と言っても小学とかそこら辺のとき。当時、放課後のスクールバスが来るまでのほんの十分間、遊具やらグラウンドやらで僕らはよく遊んでいた。特に人気だったのはブランコ。次に回るジャングルジム。そしてシーソー。どれも人数に制限があるせいで、なかなか遊べない。
 だから、友人と他クラスの知らない人達で、誰が鬼なのかわからない鬼ごっこをよくしていた。滑り台に乗るのはずるいとか、遊具の中に入ったらタイムとか、子供のデタラメルールにあふれていた。今思えばすごく騒がしかったな。すごく楽しかったな。
 その光景を大人の僕が混ざれず見ていると、知らない子供に背中を叩かれ振り向いた。
「一緒に遊ぼ!」
誘われた。誘われた!その喜びでいっぱいで、
「うん!」
迷うことなく返した。
 そうして、僕は夢の中で子供になった。
 その子と一緒に、迫ってくる鬼から逃げ回る。その子は雲梯の上に登って、僕はすべり台の上に登った。鬼をしている子供が、子供特有のあの声でずるい!と笑いながら怒っていた。
 数分経ってバスが来た。一回も鬼にならずに済んだとみんなが自慢しあって、各々ランドセルを取りに行っていた。その子も草の上に転がったランドセルを拾い上げる。
「帰っちゃうの?」
終わりたくなくて、つい聞いてしまった。
「帰らないと。バス来てるし。」
「バス組なの?」
「違うけど。そっちはバス組でしょ。なら帰らないと。あと二分したら出発しちゃうよ。」
「違うよ。歩き組だよ。」
 互いをバス組だと勘違いしていたことが妙に面白くて、笑い合う。チャイムがなったのを合図に、バスが出発した。
「一緒に帰ろ。」
手が差し出された。帰りたくないと言いそうになり、迷惑をかけてしまうと思って、頷いた。
 二人で手をつなぐ。腕がひかれていく。手が小さかった。子供の手だと思った。止めようとしていた足が、その子の笑顔のせいで歩み始めた。なぜか目の前のその子がキラキラして見えて、なんとなく思った。
 あの子に似ているな。いや違う、あの子だ。
 それで、これが夢だとわかった。
 そのせいで、目が覚めてしまった。
 起きたのは草むらの上とかじゃなくて、ベッドの上。ぼんやりと天井を見ていると、少し寒いことに気づいた。体を見ると裸。服を着ながらふと視線を隣に移すと、知らんやつが裸で寝ていた。乱れたシーツと散らかった下着。少し臭い部屋。
 あーあ、やっちゃったか。
 そう思いながらタバコを吸いにベランダへ行く。ライターがうまくつかなくて、少しいらついた。やっと点いた。
 ため息とともに、口から煙を出す。上へ上へと登って行った。そして窓ガラス越しに、ベッドの上に転がった人を見る。どう見ても、あの子ではない。
 灰皿でタバコの火を消しながら、そんなクソみたいなのを考えていることに気づいて、笑いが込み上げてきた。未練たらたらすぎるだろ。少しして涙も出てくる。あーあほんと醜い。
 耐えきれなくなって、しゃがみこんでしまった。初めて僕に、愛情に似た何かを感じさせてくれたあの子。あの時の気持ちをまた感じたくて、今日みたいな最低なことたくさんしてるのに、今も感じらられずにいる。ほんっと醜すぎて笑える。笑えるのに、涙は止まらない。
 しばらくすると窓の開く音がして、顔を上げるより先に抱きしめられた。大人の手。男より小さいけど、大人の大きい手。微塵もキラキラしていない。
「大丈夫……?」
 心配そうに聞く声に、何も答えず抱きしめ返した。慣れない手つきで頭を撫でられる。慰めの優しい言葉もかけられた。それでさらに涙が出てくる。きっと彼女のこの行為に愛なんてなくて、ただ慈悲の心から来ているんだろうな。
 今日も昨日もいつまでも、僕は愛ではない物をくれる人達とふたりで過ごす。
 顔を上げると愛のないキスをされ、微笑まれた。吐き気がした。

7/30/2025, 12:22:32 PM

作品72 熱い鼓動


 はいどうぞと差し出され、おそるおそる触る。思っていたよりも重くて、思っていたとおり柔らかい。手の中で大人しく固まっていたそれは、次第によちよち歩き始めた。右、左、右、左。足にあわせて長い尻尾も少し揺れる。今だけ、私の小さな手のひらが、私より小さな生き物にとっての世界になっている。
 「可愛いでしょ。」
 飼い主のである友人が、この光景を愛おしむかのように言った。
 「うん。すごく。」
 「この子何か分かってる?」
 「ハムスター?」
 「違うよ……。」
 そう言って友人は、ゲージの中から更に一匹、ハムスターではないらしい小さな生き物を手のひらに載せた。3匹飼っているらしい。
 「ネズミ?」
 「んーんー。」
 「じゃあ何さ。」
 「チンチラ。」
 「何それ初めて聞いた。」
 「まじ!?」
 いきなりの大声に、私もチンチラもビクッとする。友人が、ごめんごめんと謝る。目線的に、多分だが私にではなくチンチラに。
 「……チンチラって可愛いね。」
 「でしょ。」
 皮肉は効かなかった。
 少し優しく、手のひらを握る。中で小さな生き物がかすかに動いた。かすかに鼓動が伝わる。嗚呼こんなに小さくても、生きてるんだな。
 手がゆっくり、あたたかくなった。

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