かも肉

Open App
12/19/2024, 1:59:01 PM

作品39 寂しさ


 帰り道はいつも暗い。仕事は早く終わらせたはずなのに。気づくと夜が迫ってきて、暗くなっている。
 冬が来たんだな。
 あなたが呟いた。そうですねと返す。
 たまたまバス停まで帰り道が同じ。ただ、それだけの理由で、いつもあなたと一緒に帰っている。
 言葉を交わすときもあれば、交わさないときもある。他の人だったら気まずくなってしまうけど、あなただけは別。
 この時間が好きだ。
 雪が降り始める。あなたの髪の毛につき、その結晶をゆっくり崩していく。それがとても綺麗だった。
 見惚れながら歩いていると、あっという間にバス停までついてしまった。
 それではさようなら。
 あなたが言った。同じくさようならと返す。バスに乗ったあなたを、小さくなるまで見て、歩き始める。
 さっきよりも空気が冷たくなっている気がした。星の輝きが眩しく見えた。雪が少し積もっていた。
 一人分の足跡を、付けていく。

12/18/2024, 11:54:43 AM

作品38 冬は一緒に


 夢の話をしようよ。お互いの将来の夢。職業でも願望でも何でもいい。未来の話をしよう。
 まずは君から言ってよ。え?先にどうぞって?しょうがないな。先に話すから、ちゃんと次に話してね。
 ……なんか、照れくさいね。よし、じゃあ言うね。
 毎朝起きるたび眠そうな君の顔を見て、ご飯食べてる顔を見て、楽しそうな君を見て、喜んでる君を見て、泣いてる君を見て、落ち込んでる君を見て。毎日、百面相してる君の感情に触れていたい。
 ストーカーとかじゃないからね。純愛だからね。……ほら、笑ってくれた。それをずっと見てたいんだ。
 見れるためなら何でもする。
 具体例?えーそうだな……。
 春はさ、桜を見に行こうよ。近くの公園までお弁当持っていって。あ、でも夜桜も好きそう。どっちがいい?あとで教えてね。
 夏はさ、海に遊びに行って、祭りでりんご飴食べようよ。貝殻を持って帰って、思い出として形に残してさ。りんご飴は大きいから一緒に食べることになるかもね。君一人で食べてもいいよ。好きなもの、何でも買ってあげる。
 秋はさ、紅葉を見にどっか旅行行こうよ。少し肌寒いかもだから、羽織るものも買わなくちゃね。準備するの楽しそう。服は君に選んでもらいたいな。いいかな?
 冬はさ。冬は一緒に熱々の肉まん半分こして食べよ。クリスマスだったらケーキを半分こ。プレゼントを交換こして、一緒に過ごそう。年越しも一緒がいいな。
 そういうのを一周だけじゃなくて、飽きるまで何度も何度もしたい。
 えっと、だからね。何が言いたいのかっていうと。
 夢は、君とずっと一緒にいることだ。
 どんなに天気が悪くても、どんなに辛いことがあっても、どんなに周りから否定されても、君の隣にいたい。
 ……ほら。次は君の番だよ。早く言ってよ。……泣かないでいいから。ごめんねとかもいいから。ねえ、おねがいだから。
 これ以上その手を冷たくしないで。ちゃんと心臓動かして。ほら、息吸って。
 ねえ、一緒に未来の話をしようよ。君の願いを聞きたいな。さっき約束したばっかじゃん。聞かせてよ。喋ってよ。
 聞かせてくれるまで、ここにいるからさ。
 だからお願い。まだ寝ないで。その顔はまだ見たくない。

12/17/2024, 11:42:31 AM

作品37 とりとめもない話


 友達の定義は、とりとめもない話ができるかどうかにあると思う。
 いつだったか、友人と友達の定義について話したとき、そういう考えが出てきた。

 一緒にご飯を食べると友達?いや、嫌いなやつとでも食べるときがある。一度でも話したら友達?それだと知り合い多すぎて疲れるな。
 じゃあ、何だろうか。
 そこで出てきたのがさっきのあの言葉。二人の間では、なかなかいい線をいってるのではないかということで、この議論は終わった。
 なんで急にこんな話をしたかって?それはもちろん、君に伝えるためさ。
 お前は友達なんかじゃないってことを。

12/16/2024, 1:33:20 PM

作品36 風邪


 ピピピと、音が鳴るのを確認し、服の中から体温計を取り出す。37.8。
 見事に熱が出ている。
「何度だったー?」
 リビングから母の声が聞こえた。
「37.8!学校休める!」
「そーね。連絡してくるから寝てなさい。」
 心配する様子は微塵もなく、母はスマホを取り出し電話をかけた。よそ行きの声。
 何故か女の人って電話するとき1オクターブくらい声のトーンが上がるよな。あれ何なんだろ。音楽苦手だからオクターブなんて知らないけど。
 そんなのさておき、休みができた。嬉しい。何しようかな。体はすごい元気だし何でもできる。
 とりあえず、映画観るか。
 スマホを手に取り面白い映画と検索をかけ、適当にスクロールし止める。指に一番近かった映画を見ることにした。
 リモコンを手に取りテレビをつける。さっき見た名前を数文字打つとすぐ出てきた。結構有名らしい。興味ないけど。
 ところで。映画といえばポップコーンとコーラが必要だ。しかし、悲しきことに口の中が乾くものも炭酸も苦手だ。
 と、いうわけで。
「お母さーん。ジュース飲んでいー?」
母に声をかけた。
「三杯までね。」
 小さくガッツポーズしてから冷蔵庫を開ける。リンゴジュースとアップルジュースとぶどうジュースが並んでいた。リンゴかアップルだなと迷う。
 そしてしばらく考え気づく。
 どっちも同じじゃねーかよ。だめだ頭は風邪の影響もろに食らってる。
 半ば投げやりになって、一番近くにあった方を取ると、日本語の方に当たった。
 机にペットボトルを置き、コップを持ってきて注ぐ。氷もあったら入れたいけど、残念ながら作っていなかった。
 テレビの前にあるソファーに座り、再生ボタンを押す。映画が始まる前にある広告が流れた。
 早く始まらないかな。
「ちょっと買い物行ってくるけど、欲しいものある?」
 振り向くと、母が車の鍵を片手に立っていた。
「んーとね。カルピスとゼリー。あと新しいゲーム機。」
「ゼリーね。お昼は?何食べたい?何食べれる?」
「何でもいける。あ、おかゆ食べたい。」
「わかった。」
じゃ留守番お願いねといい、玄関へ向かっていった。なんて事務的なやり取りなのだろう。しかもカルピス無視されたし。
 いってらーと叫びテレビを見ると、ちょうど広告が終わったところだった。
 ゴロリと寝っ転がり、頭とコップを手すりに置く。この映画が終わる頃は、三時間目が始まるころかなと計算する。なんか得した気分。
 うきうきしながら画面を見た。

 うーん。微妙。
 エンドロールを眺めながら、出てきた感想はそれだった。
 伏線もないし起承転結もあまり強くない。セリフも全部棒読みだし、クライマックスがあるわけでもない。強いて言うなら画はきれいだった。大人になってみると、面白いかもしれない。きっとそうだ。
 なんて偉そうに考えていると、だんだん眠くなってきた。

 目が覚めたのは、母のただいまーという声だった。
「あれ寝てたの。映画どうだった?」
聞いてしまうのかそれを。
「そこそこ。お母さん好きそうだった。」
「てことはつまらなかったのね。」
やはり母には敵わない。
「はいこれゼリー。」
蜜柑の写真がついたゼリーを渡された。さすが。分かってる。
「あざます。」
 ありがたく受け取り、椅子に腰掛け、蓋をペリペリっと開ける。蜜柑のいい匂い。やっぱ果物といえば蜜柑に限るな。
 プルプルとしたそれを匙ですくい上げ、口に運ぶ。甘酸っぱい果実が口の中で弾ける。あーまじでたまんない。さいこー。
 一個食べ終えたところで、母がお粥を持ってきた。
「もう食べたの!?これ食べてからにしなよ……」
「だって渡してきたじゃん。」
「まったく……」
 そう言いながらおかゆが前に置かれた。目の前に湯気が広がる。熱々だ。
 じーちゃんばーちゃんお手製の梅干しを上にのせていると、母が言った。
「あ、そういえば食糧庫にフルーツ缶あったはずだから、お昼足りなかったら食べて。」
それはすばらしい。
「ちなみに……?」
期待を込め、聞いてみる。
「蜜柑。」
「神様。」
 小さくガッツポーズすると、早く食べなさいと怒られた。
 おかゆを軽く冷まし、パクっと食べる。うん美味しい。やっぱ風邪ひいたときはおかゆだな。
 ごちそうさまでしたと両手を合わせ、食器をシンクへ運び水につける。
 そして食糧庫を開け缶カンがあるのを確認し、ベッドに向かう。食べようと思ったけど、流石に食べすぎた。
 布団に入り時間を確認すると、ちょうど学校では五時間目が始まるところだった。明日は念の為休む予定だから、登校するのは明後日からか。面倒くさい。こっそり休もっかな。
 なんて考えながら、ベッドの隣にある本棚から読みかけの本を一冊取り出した。
 寝る前に読むために買った小説。題名に夢という文字が入っているから、寝る前にぴったりだ。
 栞が挟まれているページを開き、文字をなぞる。
 じんわりと頭の中で風景が広がり、セリフが再生される。こういう時間が、一番幸せだな。ずっとこうなってたい。
 満腹になったからか、まぶたが重くなる。
 夢の中で、誰かが百合に接吻し、男が子供を背負い、知らん人が木彫りをしていた。
 絶対この話に影響されているからだろうけど、思う。
 なんてカオスなのだろう。


⸺⸺⸺
蜜柑は芥川龍之介なのに夢十夜。なんなら檸檬も入れたかった。こうして人と作品をごちゃまぜにしていく。風邪ひいたときの夢みたい。

12/15/2024, 2:50:35 PM

作品35 雪を待つ


 雪がふると、あの子が来る。小さなおててでちっちゃな雪だるまを作る子。
 何個も何個も雪だるまを作って、あの子よりもせが低い、年下の子たちにくばっている。それをいつも、部屋の中からながめている。 
 いいな。いつか一緒にあそびたい。
 うでにはてんてき。少し歩くとすぐ疲れる体。きんにくのない細い足。真っ白な服を着た大人の人と、なれてしまったしょうどくの匂い。
 いつも見ているこうけいだ。お母さんお父さんにはたまにしか会えない。
 あと何回、雪を待てば、あの子達とあそべるのだろう。あと何回、雪を見れるのだろう。
 いくらきいても、だれもこたえてくれない。



⸺⸺⸺
小さい子が喋ってる感じにしたくて平仮名いっぱい使ったはいいものの、すんごい読みづらい。

Next