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7/5/2023, 1:46:33 PM

星空


視界の端で、キラリと光った気がした。
隣に座る君が瞬きをする度に、それはキラキラと輝く。
まるで、星空を閉じ込めたような輝きを乗せるまぶたがぱちり、と開いた。
「ん? どうかした?」
その輝きに見入ってしまい、目が合って君はきょとんとした顔をする。
「いや、何もないよ。ただ、まぶたがキラキラしてて綺麗だなって」
「でしょ! このラメめちゃくちゃ綺麗でさー」
テンション高く、楽しそうに話す君は何よりも輝いていた。

7/4/2023, 2:22:13 PM

神様だけが知っている


神と呼ばれるその人は今日も、いってらっしゃい、とおかえり、を繰り返す。
帰ってきた魂に、体験してきた人生を聞いて。時に喜んだり、時に悲しげに泣いたりしていた。
魂の声は神様にしかわからないから、私たち天使はただ魂を導き、連れていくだけ。
だから、その魂がどんな人生を歩んできて、次はどうなりたいのか、神様だけが知っていた。
かなり昔に、魂になって帰ってきた私は、神様にこう言った。
「……もう、新しく何かになりたくないです」
幸せとは程遠いような人生だったけれど、覚えておくにふさわしいと感じられた一生だったから。せめて、もう少しだけ、このことを覚えていたい。
新しく変わってしまえば、その生が終わるまで思い出せはしないだろうから。
そう思って、そのことを伝えれば、神様は優しく微笑んで、ここにいることを提案してくれた。
純粋な天使のように、魂は真っ白ではないし、所々欠けてしまっているけれど、今日もこうして魂たちを導き、その声が聞こえないかと耳を傾けた。

7/3/2023, 1:40:55 PM

この道の先に


この道の先に、果たして未来はあるのだろうか。
一寸先は闇のようで、深い霧が立ち込めるみたいに何もわからなくて。ただ道なき道を歩きながら、歩いてきたところを道にしていくんだ。
何が起こるか、なんて誰にもわからなくて、誰も知らなくて。
それでも、その先が素敵で幸せなものになることを夢見て。
今日もその一歩を踏み出すんだ。

7/2/2023, 1:05:05 PM

日差し


「眩しいね」
「眩しいねぇ」
強い日差しが差し込む室内は、ぶーん、と鳴る首振り扇風機のおかげで生暖かい空気が充満していた。
「暑いね」
「暑いねぇ」
じんわりとした暑さと肌にまとわりつく湿気が不快感を倍増させる。脳みそはすでに溶けてしまったかのように、彼女が口にした言葉を繰り返すばかりだった。
「……すき」
「好きだねぇ……ん?」
口から飛び出てきた言葉の意味に気づいて、驚いてそちらを向けば、そこには夏の暑さとは別の意味で真っ赤に染まる彼女がいた。

7/1/2023, 2:40:18 PM

窓越しに見えるのは


それはひどく穏やかなものでした。
空はいつも青く澄みわたっていて、丘の緑は変わらず鮮やかでした。
その光景に疑問を抱いたことは一度だってありませんでした。だって、その窓こそが外を見ることができる唯一のものだったのですから。
だから、外はずっと穏やかなものだと思っていたのです。この部屋の中のように、変わらず穏やかなままだと、そう思っていました。
けれど、現実はあまりにも残酷で。
助けに来た、と言った人たちは施設の人たちを殺してしまいました。君たちは実験の道具に過ぎなかった、と言われ、引きずられるように施設の外へと出ることになりました。
外は、外は穏やかなものとはかけ離れていました。青いはずの空は、コンクリートの灰色を混ぜたようなくすんだ色をしていました。鮮やかな緑色をした丘はなく、鬱蒼とした木々がこの施設を隠すように取り囲んでいました。
かなり前に、施設長は私たちにこう言いました。
「私たちがやることは一般的に見れば、非道かもしれない。それに、正しいことではないことを、私たちはよくわかっている。それでも、この実験は君たちを救うかもしれない。人類は救われるかもしれない。……だから、この可能性にかけてみたいんだ」
たしかに、囚われの身でした。それでも、施設の人たちは私たちに優しくしてくれました。家族のように、愛してくれました。それが、どれだけ、嬉しかったか。
悲しくて、辛くて、涙が止まりませんでした。彼らの遺体から離れようとしない私たちに、洗脳されていたんだね、でももう大丈夫だから、とその人たちは言いました。
私たちが違うと言っても、首を振って抵抗しても、聞く耳を持ってはくれませんでした。
私たちを無理やりに立ち上がらせ、次々と移動するための箱に乗せられていきました。
最後に振り返って、窓越しに見えたのは、まぎれもなく私たちの優しくて温かい家でした。

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