H₂O

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6/30/2023, 2:25:01 PM

赤い糸


小指から、小指へ。
運命と呼ばれるそれは、あまりにも乱暴で。
もし、その相手を好きになれなかったら、どうするんだろう。

6/29/2023, 1:27:31 PM

入道雲


初めて会った日のことを、あなたは覚えていてくれているでしょうか。
まだ暑くなりきれていない夏の始まりのようなその日、見事な青空ととても立派な入道雲が印象的でした。
突然降りだした豪雨のような、ともすれば通り雨のような雨の中、雨宿りができる場所を探して、走っていました。公園の東屋に着くと、そこには同じように雨宿りをしているあなたがいました。
雨に降られた同士、ちょっぴり気恥ずかしくて、気まずくて、苦く笑い合ったのをよく覚えています。
偶然の出会いは、いつしか必然のものだったと思えてきて、運命だなんて言葉を使ったらあなたは怒るでしょうか。嫌がるでしょうか。
それでも、あの日会えたことが私にとっては忘れられない思い出となったのです。

6/28/2023, 1:50:05 PM




うだるような暑さの中、流れる汗がキラキラと太陽に反射して、手を差し出して笑う君が誰よりも眩しかった。
天気は快晴で青空と呼ぶにふさわしい空で、雲一つなかった。
こんな暑さだと言うのに、はしゃぎ合って、走り出したくなる衝動にかられながら、いつもの場所へと急ぐ。
大人たちが近づかないその場所は、子どもたちにとって秘密基地みたいなもので、好き勝手やって遊ぶのが好きだった。
夏なんて、ただ暑い季節で、早く涼しくなればいい、と思うことが増えていって、走ることなんてもうしたくないと体が悲鳴を上げる歳になった。
それでも、あの頃の僕らは、大人なんかにはわからないその刹那を、誰よりも楽しんでいたと思う。

6/27/2023, 2:09:45 PM

ここではないどこか


なぜ、こんなところで出会ってしまったんだろう。
こんな状況じゃなければ、憎み合うことも、恨み合うこともなかったのに。
互いに命を狙う立場なのに、覚悟が決まらず、今日も不毛な戦いを続ける。当てる気のない照準に、致命傷にはならない傷ばかりつけ合って。
でも、もう終わりにしよう。次は、ここではないどこかで、君とちゃんと話がしたい。
「またね」
そう小さく呟いて、銃口を自分のこめかみへと突きつけて、人差し指を引いた。

6/26/2023, 1:19:38 PM

君と最後に会った日


「またね」
そう言って、わかれたはずだった。
静かに降り続ける小雨の中、少し頼りない折り畳み傘をさして、手を振る。振り返した君は、たしかに口元に笑みを浮かべていた。
君がいる次の日を当たり前に望んで、そうなると信じて疑っていなかったんだ。
でも、また、は来なかった。
今でも、あの分かれ道を通る度に君のことを思い出す。もうどんな声をしていたか、思い出せないけれど。そのときの服装や顔すらもよく覚えてはいないけれど。
記憶の中に生き続ける君は優しく微笑んでいるから、またね、をまだ期待しているんだ。

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