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君と最後に会った日


「またね」
そう言って、わかれたはずだった。
静かに降り続ける小雨の中、少し頼りない折り畳み傘をさして、手を振る。振り返した君は、たしかに口元に笑みを浮かべていた。
君がいる次の日を当たり前に望んで、そうなると信じて疑っていなかったんだ。
でも、また、は来なかった。
今でも、あの分かれ道を通る度に君のことを思い出す。もうどんな声をしていたか、思い出せないけれど。そのときの服装や顔すらもよく覚えてはいないけれど。
記憶の中に生き続ける君は優しく微笑んでいるから、またね、をまだ期待しているんだ。

6/26/2023, 1:19:38 PM