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6/25/2023, 1:37:32 PM

繊細な花


「イメージ通りだわ!」
女性は目を潤ませながら喜ぶ。目の前にあるのは、柔らかい色をした白のウェディングドレスで、ふわりと広がるAラインが美しかった。胸元のレースはとても丁寧で、繊細な花があしらわれている。
ほぅ、と思わず見惚れてしまうようなそれは、女性がイメージしたドレスそのもので、非常に大満足だった。
「ありがとう。これを着られるのがとっても楽しみ」
女性はそっとドレスに触れる。
女性の柔らかそうな雰囲気によく合うそのドレスはオーダーメイドで作られたものだったが、写真を見た他の女性たちから、自分もこのドレスを着てみたい、と希望が殺到した。
女性はそれを聞いて大いに喜び、ぜひ色んな人にも、とそのドレスを定番化することに了承した。
そうしてそのドレスには、女性の名前でもある胸元にあしらわれた花の名前が名付けられた。

6/24/2023, 2:22:12 PM

1年後


想像するのに遠すぎず、近すぎず。一年という期間があれば、それなりに目標も立てやすい。
半年後ではあっという間過ぎるし、三年後では色々変わりすぎているだろう。
だから一年後がちょうどいいんだよ、と誰かが言っていた。
けれど、一年は案外あっという間だし、当初掲げていた目標は達成していないことが多いし、一年前と何が変わったのか自分のことですらよくわからないんだ。
たった一年、されど一年。
これから先、一年をどうやって過ごしていくのだろう。

6/23/2023, 2:37:06 PM

子供の頃は


何でもできると思っていたんだ。それこそ、怖いもの知らずで、好奇心のままに動いて、世界がキラキラとしていて、楽しかったんだ。
でも、いつの間にか常識とか、周りの目とか、体裁みたいなものに歩く道を整備されて、何でも、はできなくなった。
怖いものがたくさん増えて、動けなくなって、世界はなんだかくすんで見えて、退屈に感じてしまうようになったんだ。
子どもの頃とは随分変わってしまったけれど、価値観とかいうフィルターを外してしまえば、そこは元いた通りの場所だということはもう知っているから。
だから、こんな世界、だなんて絶望しないで。ここは君のためだけに作られた、君だけの世界なんだから。
何だってできる、何にだってなれる。君がそれを信じ続けて、諦めないでいる限り、絶対に。

6/22/2023, 1:54:48 PM

日常


振り返れば、短い時間だったけれど、過ごした日々を日常だと思えるくらいには当たり前になっていた。
だから、明日もこんな日が続くと信じて疑っていなかったんだ。でも、当たり前だと思っていた日は来なかったんだ。
そのとき、ようやく気づいたんだよ。ああ、当たり前なんて本当はなくて、どれも特別で奇跡みたいなものだったんだ、って。
今日もこの素敵な日々を日常にしたくて、願うんだ。

6/21/2023, 1:34:49 PM

好きな色


どんな色が好き、と問いかければ、彼女は少し考えた後に答えてくれた。
「うーん、そうだなぁ。……彩度と明度が低い、そんな色かな。淡く、溶けてしまうような色。あとねぇ、向こう側が見えるような透き通って濁りのない透明も好きだよ。透明はさ、見えないから誰にも気づかれないし、その向こう側を見てくれるでしょ?」
そう微笑んだ顔は儚げで、どこか消えてしまいそうな危うさがあった。


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