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窓越しに見えるのは


それはひどく穏やかなものでした。
空はいつも青く澄みわたっていて、丘の緑は変わらず鮮やかでした。
その光景に疑問を抱いたことは一度だってありませんでした。だって、その窓こそが外を見ることができる唯一のものだったのですから。
だから、外はずっと穏やかなものだと思っていたのです。この部屋の中のように、変わらず穏やかなままだと、そう思っていました。
けれど、現実はあまりにも残酷で。
助けに来た、と言った人たちは施設の人たちを殺してしまいました。君たちは実験の道具に過ぎなかった、と言われ、引きずられるように施設の外へと出ることになりました。
外は、外は穏やかなものとはかけ離れていました。青いはずの空は、コンクリートの灰色を混ぜたようなくすんだ色をしていました。鮮やかな緑色をした丘はなく、鬱蒼とした木々がこの施設を隠すように取り囲んでいました。
かなり前に、施設長は私たちにこう言いました。
「私たちがやることは一般的に見れば、非道かもしれない。それに、正しいことではないことを、私たちはよくわかっている。それでも、この実験は君たちを救うかもしれない。人類は救われるかもしれない。……だから、この可能性にかけてみたいんだ」
たしかに、囚われの身でした。それでも、施設の人たちは私たちに優しくしてくれました。家族のように、愛してくれました。それが、どれだけ、嬉しかったか。
悲しくて、辛くて、涙が止まりませんでした。彼らの遺体から離れようとしない私たちに、洗脳されていたんだね、でももう大丈夫だから、とその人たちは言いました。
私たちが違うと言っても、首を振って抵抗しても、聞く耳を持ってはくれませんでした。
私たちを無理やりに立ち上がらせ、次々と移動するための箱に乗せられていきました。
最後に振り返って、窓越しに見えたのは、まぎれもなく私たちの優しくて温かい家でした。

7/1/2023, 2:40:18 PM