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3/22/2023, 2:17:31 PM

バカみたい


バカみたいに笑って、バカみたいに泣いて、バカみたい怒って。そんな君が誰よりも幸せそうだった。
今を全力で楽しんで生きて、何をするにも一生懸命で、君はこの世界の誰にも負けないくらいに生きることを楽しんでいた。
そんな君の隣にいるだけで、同じように楽しくなれて、過ごす日々たちがかけがえのないものになった。
きらきらとした星屑みたいな過去と、キラキラとした一瞬一瞬が愛しい今と、まだ見ぬ輝かしい未來をバカみたいに全力で生きるんだ。

3/21/2023, 1:50:42 PM

二人ぼっち


ふと目が覚めた。辺りはまだ暗くて、人どころか太陽すらもまだ起きていないような時間だった。
もう一度寝てしまおうと目をつむるが、妙な時間に目が覚めるときに限ってまったく眠たくならない。諦めて起き上がろうか、と寝返りをうてば、伸びてきた腕につかまる。
布団の外へ出ようとしていた体は絡み取られ、布団の中央へと逆戻りだ。
「……もぅ、あさ?」
寝ぼけているような小さな声が聞こえて、まだだよ、と返事をしながらもう一度寝返りをうって、その腕の中へともぐり込む。
ぎゅっ、と抱きしめれば、同じようにぎゅー、と抱きしめてくれるのが嬉しくて何度も抱きしめるのを繰り返す。
目を閉じたまま微笑んで、もう寝なさい、と囁かれるが、眠くないと抗議すればその瞼が少しだけ開いた。
「いい子だから。おやすみ、ね?」
優しくそう諭されてしまえば、素直に従いたくもなるし、だんだんと眠くなってきたような気もする。
世界はまだ眠っている中、二人だけのそのやり取りがなぜだか心地よかった。

3/20/2023, 2:00:37 PM

夢が醒める前に


決して正気に戻ってはいけない。
この世界ではおかしいのも、狂うのも大歓迎さ。
でも、一つだけ忠告しておこう。決して正気には戻らないことだ。それはきっと君の身も心も滅ぼす。
だから、今日もおもしろおかしく、頭を狂わせて好き放題するんだ。正気に戻る前に、夢から醒める前になんかもう戻れないんだから。


3/19/2023, 2:04:35 PM

胸が高鳴る


午前八時過ぎ、定刻にきちんとやって来た電車に乗り込む。いつも通り少し奥の方まで歩いて、乗車口に程近い位置に立つ。
いつもと変わらない景色、顔馴染みの乗客たち。そんな日常に色がついたのは、去年の夏だった。
暑苦しい日差しが容赦なく降り注ぐ中、幾分か涼しい電車の中はまるで天国だった。流れる汗を拭いながら、視線を少しだけ斜めに向けたそこは、いつもは誰も立っていないのに、その日は珍しく男の子が立っていた。
少し視線を上げるくらいには高い背に、どこかの校章が入った制服、前髪が目にかかりそうになっていて見えづらいが、中々の美形だった。
第一印象は、綺麗な子、だった。じっと見ていたからか、彼と目が合ってしまって慌てて逸らす。少ししてもう一度そちらをちらりと見れば、彼はただただ流れる景色を眺めていた。
それが出会いで、それからというものの今日はいるのか、とその位置を見るのが癖になってしまった。平日に毎日見れるというわけではなく、週に一、二度程のときもあれば、一ヶ月も見れないときもあった。
だが、ここ数ヶ月はほぼ毎日見れている。私の定位置が決まっているように、彼も必ずそこに立っていた。
少しだけ視線をそちらに向けて、盗み見る。あまり褒められるような行為ではないが、仕方ないと正当化したくなる。目の保養なのだ、仕方ない。
バレないようにしながら、その顔を堪能し、今日も一日頑張るぞ、と気合いを入れる。
目的地に着く前にもう一度拝んでおこうとちらりとそちらを向けば、彼と目があった。少しだけ微笑んだようなその笑みが向けられて、思わず固まってしまう。
予想もしていなかったその笑みに頭を混乱させつつ、笑うと幼くなるんだぁ、なんて現実逃避した。
もしかして、ずっと見てたのがバレたか。冷や汗と動悸が止まらない中、降りる駅に到着してしまう。降りるには彼の前を通るしかないのだが、絶対ヤバイやつだと思われているので、足早に降りようと人の間を縫って移動する。
申し訳なさと恥ずかしさで体を小さくさせながら、彼の前を通りすぎる、はずだった。電車から降りようとしたそのとき、彼の手が私の右手に少しだけ当たった。
反射的に出たごめんなさいに、体は勝手に電車から降りていて、彼の方を振り向く。
駅員のアナウンスとドアが閉まる音が響き渡る中、彼は笑って小さく手を振った。
「また、あした」
そう動いた彼の口元を呆然と眺める。胸が高鳴るまで、あと―――。

3/18/2023, 1:36:33 PM

不条理


ああ、なぜこんな世界に生まれてしまったんだろう。人には感情があって、その感情は複雑に絡まりあい、時にそれは人を縛りつけ、傷つける。
やりたいことも、叶えたい夢も、見るだけで、それを叶えることは許されなかった。
今日も私たちは武器を手に取る。顔も名前も知らない、同胞を殺したそいつらを葬り去るために今日も殺したくないそいつらを殺す。
銃口を相手に向けて、引き金を引く。あまりにも簡単に命を奪うその行為に何も感じなくなったのはいつ頃だろうか。
ああ、私は今何をしているんだろう。次々と命が消えていく中で、こんなにも命は軽いものだったのかと改めて疑問に思う。
生まれてきたとき、たしかに祝福されたはずなのに。生きていかなければならないのに、こんな風に命を扱って、そうしていかなければ生きていけないなんて。
敵の射撃手と目があった気がした。その手が引き金にかかるのを見届けて、空を仰ぐ。
快晴の青空の下で、願わくば次は平和な世界でありますように、そう祈って目を閉じた。

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