小鳥遊 桜

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4/3/2023, 11:27:00 AM

【1つだけ】


「ねえ、おかあさん。どうして、おそらにおねがいごとを、してるの?」
〝それはね、今日は、お星様がみんなの願いごとを1つだけ叶えてくれるからだよ。〟
「ねがいごと…?」
〝そう。だからね、ルウも何かお願いごとをしてみたらどうかな?〟
「ルウは………」







『おい。ルウ。いつまで寝てんだよ。朝だぞ。学校遅刻しても知らねぇからな。』

懐かしい夢をみていたのに、バカうるさい声のせいで、起きてしまった。
…学校なんて行きたくない。
新学期だから行かないといけないなんて、誰が言ったの?
あんな所、行かなくてもいい。

『あ、そうだった。ルウ、今日は祭りの日だ。お前の母さんが好きだったよな。星祭。』
「そうね…お母さん、桜と星が見れるから、好きだったわ。」
『……行くなら、僕と一緒に行くか?人混み嫌いでも、誰かと一緒なら行けるだろ。』
「…夕方までに、考えとく。」


この人は、私の…親戚のようなもの。多分。
お母さんがなくなって、お父さんは私を置いてどこかに行って。親戚を何件も何件もたらい回しにされて…そんな私を見ていたのが〝リク〟だった。
その時、親戚とリクとで、何か色々とあったけど。もう、思い出せないや。
リクは『あんなやつら、忘れろ。子どものことを一番に考えないなんて、何がしたいんだよ。』って言ってくれた。
少しだけ、嬉しかった。


「ねぇ、リク。私、今日学校行かない。家で勉強してる方がいいわ。」
『わかったよ。ただし、飯食えよ。弁当も作ったからな。』
「わかった…いつも、ありがとう。」

リクは、何も言ってこない。
それが、いいんだけど。








『おーい。そろそろ祭りだけどさ。行くのか?行かないのか?』
「…行く。」
『ん。わかった。招待状持ってかないとな。アレがないと入れないからな……よし、2枚入れた。』

私も、準備しないとダメね。
一応、お祭りだからちゃんとした…でも動きやすい服を着て、髪は…リクにお願いしよう。リクの方が上手だし。

「ねぇ、リク。この服で行くの。髪型どうしたらいい?」
『そうだな…』

そう言って、ブラシとヘアゴム…色々な物を持ってくる。
こうして見ると、美容室みたい。



終わったみたい。
こんな短時間でこんなに綺麗な髪型にしてくれるなんて…本当にすごい。
『どうだ?気にくわない所とか違う髪型にしてくれとか…ないか?』
「そんなの、ないよ。綺麗。ありがとう。」
『よし。んじゃあ、行くか。歩きだけど。』
「いいよ。少し遠いけど、歩いていける距離だもの。」





たわいない会話。
カップル同士のイチャイチャ。
家族の楽しそうな明るい声。

祭りの会場に着くと色んな声が聞こえる。

〝星祭〟

そう、書いてる。本当に着いたんだ。って変な感情や思いが出てきた。



〝招待状を確認してもよろしいでしょうか?〟
『ああ。これ。』
〝…はい。2名様ですね。ようこそ星祭へ。〟

そう言ってパンフレットを2枚、渡してきた。
キラキラの…ラメかな?こんなパンフレット初めてみた。

「綺麗なパンフレット。」
『そうだな。……あ、ここ行くか?屋台広場。なんでも買ってやるよ。他にも色々とイベント広場に桜広場…なんか会場広すぎ。僕もルウも体力ないから、ゆっくり行くか。』
「わかった。」

パンフレット片手に色んな場所に行って、色んなものを買ってもらったり、色んなイベントをみたり、桜をみて、写真…はカメラ忘れたから撮ってないけど。


『ほんと、今日限定っていうのが、もったいないな。』
「そうね。」

そう言い終わるか言ったかぐらいで、アナウンスがなった。

〝まもなく、星への願いごとのお時間です。パンフレットに番号が書いてあるので、順番が来た方は星空の花畑広場へ来てください。焦らずゆっくりと来てください。〟


パンフレットを見ると〝30〟〝31〟と書かれていた。

『んー。まだっぽいな。でも、ちょっと遠いな…星空の花畑の近くまで行くか。真逆に居るみたいだし。』
「うん。わかった。」



星空の花畑の近くに着いた頃。私たちの数字のアナウンスが流れた。リクは少し息切れしてたけど…大丈夫かな。
『はぁぁぁ…こんな、ことなら、体力、つけとけば、よかった。』
「大丈夫?あいてない水あるよ。」
『おう…ありがとな。休んでから行くか。』









やっと着いた会場は、どの場所よりもすごく綺麗だった。
天国って言われても全然違和感がないぐらい。
疲れなんて、どこかにいってしまうぐらい…本当に、おとぎ話に入ったみたい。


〝30の方。どうぞ。足元に注意してくださいませ。〟

『1人づつなんだな。ルウ、ちょっと行ってくる。』
「うん。」





5分ぐらいしてから、リクが帰ってきた。

『ルウ。びっくりするなよ。マジでやばい。』
「う、うん。」

〝31の方。どうぞ。足元に注意してくださいませ。〟

なんか、ドキドキしてきた。
お母さんと行ったことあるはずなのに。






係りの人について行って、少し長い階段を降りて、トンネルがあってその先には…


「光ってる、花?あっ…空も見える。」
〝この花は特別で、光るのです。ここでしか咲かないみたいでして…本当に珍しい花です。さて、1つだけ星空へと願いごとをお願いします。願いごとが終わりましたら、トンネルの方へお越しくださいませ。〟


そう言って、係りの人はトンネルの方へと行ってしまった。

願いごと…

「リクとずっと一緒に居たい。もう、1人は、いや。」

そう。お願いした。

そういえば、小さい時、なんてお願いしたっけ?




〝そう。だからね、ルウも何かお願いごとをしてみたらどうかな?〟
「ルウは、なにもないよ。おかあさんがいるもん。」
〝そっか。嬉しいわ。ルウ、ありがとう。お母さんとっても嬉しいわ。〟





そうだ。何も言わなかったんだ。私。

今日は、叶えてください。
念入りにお願いごとをして…係りの人の所へ行く。


階段を登って、リクの所へと行く。
『おかえり。なんか、いいことでもあったのか?』
「うん。お母さんのこと思い出したり、素敵な思い出が出来たから。」
『そうか。……あ、小さい子は親と一緒に行くんだな。当たり前か。』




星空をもう一度見る。
本当に、綺麗だなぁ。

願いごと、叶うといいな。


『ルウ。何か買って帰るか。雑貨屋もあるみたいだぞ。』
「今、行く。」

3/30/2023, 5:55:02 AM

【ハッピーエンド】



むかしむかしのお話。

近未来的なお話。

海辺のお話。

家出してきた人のお話。

その人を拾ってきた人のお話。

ある国の平民のお話。

「このお話は…わたしには難しいなぁ。」

ゲームの悪役のお話。

モブ役のお話。


1人の少女は1冊づつ大切に掃除をして、綺麗にして、本棚にしまいました。


「まあ、こんな感じだね!」

物語がたくさんある、広くて少し寂しい部屋に1人の少女がいました。

少女は産まれた時からこの場所にいました。

最初は、たくさんの人がいました。
けれど、この場所にはたくさんの本しかないことに嫌気がさしてしまったのか…人々は、少しづつ少しづつ部屋から出ていきました。
少女に声をかけてくれる人もいました。
けれど、もう、なんて言ってくれたのか、覚えてません。

少女も、出ていこうかなと考えたこともありました。
けれども、少女が出ていくとこの本たちはどうなるのか。いつかボロボロになってしまって、読めなくなるのではないのか。読めなくなった本は、捨てられてしまうのではないか。
そう思った少女は、出ていくことをやめました。

「……ひとりでも、寂しくないもん。」
誰もいない寂しい部屋にひとりぼっちの声。

少女は、気分転換させようと1冊の本を取り出して声を出しながら読むことにしました。
こうすれば、寂しくない。
そう思いながら。



……何冊か読み終わって、少しだけ休憩することにしました。
この部屋は、何故かお腹を空かせることも喉が渇くこともなかったので、物語に出てくる〝食べ物〟に少しだけ興味がありました。
ひとりぼっちなので、〝誰かを想うこと〟や〝誰かとケンカ〟や〝誰かに恋をする〟なんて知りませんでした。

少女は、〝カラッポ〟でした。



いつの間にか少女は寝ていたみたいで、ゆっくりと起きていつものように辺りを見回すと、1人の少年がいました。
…少年というか、なんというか、大人??
それでも、少女は嬉しかったのです。
この部屋に誰かが居るなんて何年ぶりだろう!
そう思って、少年?に声をかけました。

「ねえ!どうしてここにいるの?ここは本の部屋だよ!本好きなの?おすすめの本があるの!あっそうだ物語に出てくる人はおもてなし?をするって言ってた!何しよ」
『……うるさい。』
…少年に怒られました。少女は、少ししょんぼりしてしまいました。
それを見た少年は、ため息をついて

『…なんでここにいるんだよ。リア。』
「え…えっと、わたし名前なんてないよ。その人、だぁれ?物語に、そんな人いたっけ?」
『物語じゃなくて、お前の名前。…遅かったのか?いや、でも……』
そう言って少年は黙ってしまいました。

り、あ
どこで聞いたんだろう。聞いたことあるような?たくさん誰かが呼んでくれたような。

『とりあえず帰るぞ。ここは夢の中なんだよ。アイツが言うにはその扉から出れば、まだ間に合うから。このままだとお前、本当に、消えて……』
そう言って少年は泣いてしまいました。
わたしが消えるってなんだろう。
そういえば、元々ここにいた人達はみんな〝帰らなきゃ〟〝家族に会いたい〟〝キミもはやく帰らないと〟って言ってたのを少女は思い出しました。

「ねえ、お兄さん。わたし、ここを離れたら本たちが可哀想だよ。誰も掃除してくれない。綺麗にしてくれないの。可哀想。」
『……お前は、いつもそうだったな。人にも物にも優しくて、物を落としたら泣きそうな顔して謝っててさ。でも、もう、だめなんだよ。はやく帰らないと。リア、頼むから俺を置いて行かないでくれよ。』

お兄さんの言ってることが、何故かわかる。少女は、わたしは、思ったの。

「…本たち、わたしが掃除しなくても大丈夫なの?」
『あぁ。』
「絶対?」
『絶対に、大丈夫だ。』

わたしは、初めて会ったはずのお兄さんの言うことが信用出来た。なんでだろう。

『じゃあ…帰るぞ。』
そう言って手を出す。

わたしは……

・手を握ってお兄さんと扉の向こうへ行く

・やっぱり、ここにいる。




























リア。



『リア!』

…誰かの声。

ピッ……ピッ……っていう音が聞こえる。

目を開けるのが、大変。

ゆっくりとゆっくりと目を開けると、真っ白な部屋に、涙でぐちゃぐちゃな私の兄さんの顔。

たった1人の家族の顔。

『良かった……どこか痛いところあるか?』
私の声は出なかったから、首をゆっくり振る。
どこも痛くないよって安心させるために、何度も何度もゆっくりと振る。



大きな事故が、あったみたい。

そこに私は巻き込まれて、ほかの患者さんたちは目が覚めるのに…私だけ、ずっとずっと起きなかったみたい。



大怪我をしたけど、奇跡的に、みんな無事。

そんなニュースが流れてるのを、兄さんと一緒に病院の病室で、みていた。

3/22/2023, 4:26:13 PM

【バカみたい】
※愚痴回です。ごめんなさい。フェイクはちゃんと入れます。




約5年前、小学生からの友人と絶交した。

私はやっと解放された…と同時に友人(仮)からの最後の言葉のせいで今でも心が苦しくなって消えたくなる。



きっかけは友人の身勝手な行動。言動。

相談した内容は無許可ですぐスクリーンショットして第三者に送って『〇〇はこう言ってるよ!』って言われる。
ちなみに、あなただから相談したんだけど。なんで他人に言うかな?私より頭いいのに何でもかんでも他人に言うの?大学行ったのにバカなの?っていうのは内緒。


同窓会メンバーに私居ないのに『四葉(仮名)行くよね?同窓会!四葉行かないなら私も行かない!話し相手いないもん!』っていう謎アピール。グループ内の会話のスクリーンショットももちろん送ってくる。『この子行くって!あの人たちは来るのかぁ…。』とか色々聞いてないこと言ってくる。


SNSで友人はよく『明日休みだから誰か遊ぼ!お願い!』って投稿していた。休みがあう人はコメントしていくのだが、誰もいなかったら私にlimeでメッセージを送ってくる。
『ねえーこの日休みなんだよねー。どうせ暇でしょ?遊びに行こうよ。行きたい場所あるからそこに行って解散しよ』
こんな感じのメッセージ。
ちなみに遊びに行くと、友人はずっとずっとずっとスマホいじり。そしてそれが終わったと思ったら『ごめんね〜今から彼ピに会いに行くからちょっとまってて〜』って言われて30分~1時間待たされることが多々ある。


彼氏が出来ると私との約束を勝手に無言で破って彼氏優先になる。もちろんメッセージなんか来ないし返ってもこない。
いつもどこで出会うのかわからない人と付き合ってる。
そんな人。


リアル優先ではなくてネット優先の人。



あと、学生の頃……いや、もういいや。
思い出したくもない。(自主規制)な人。



それと誰だって「この人には相談したいけどこの人にこの相談しても無意味だからしたくないな。」とか「この人に迷惑かけたくないから言いたくない。」って思うことあるでしょ?

そういうのわかんない奴なのよ。

『なんで相談してくれないの!?親友でしょ?相談もしてくれないなんて…あんたなんか大嫌い!』
なんて言われたこともある。(最初の方にも書いたけど、勝手に第三者に晒すから嫌なんだよね。)
まぁ、でも、その時の私は「大変だ。悪い事をした。すぐに相談しないとダメだ。」って思ってなんでもかんでも相談した。
……でもあの人は、何もしてくれない。相談聞いたら、定型文みたいに毎回毎回同じような返事をして、適当なアドバイスして、終わり。


まぁ、そんな感じの人。
めんどくさい。自己中心的な人。
でもいい所も……あった、よね?
なんで仲良くしてたんだろ。
ほんと、バカみたい。




私ね、最初はなんとなくの違和感だったの。「今日調子悪いのかな。」「忙しいのかな。」「疲れたって投稿してる…仕事頑張ってるんだもんね。この前の相談のことなんだけど言うのやめておこう。」とか色々と私なりに頑張って考えていた。
それでもあの人は『また相談してくれないの。私の事信用してないのかな……あっ!もしかして察しろってこと!?何様のつもり?ムカつく。』っていう投稿。
次第に嫌気がさして、すごくイライラしてきて、この人のことをSNSに投稿した。
「片思いの人を横取りしてきて、暇な時だけメッセージ送ってきて本当に迷惑。約束も破って何がしたいの?」
みたいな感じで。

そしたら即limeが来て(いつも忙しいから〜とか彼氏と通話してた〜とか言って全然メッセージこないのにね)
『あんたどういうつもり?私のどこが悪いの?言い分聞いてやるからさっさとメッセージ返しなさいよ。毎回毎回私に助けてくださいって言わないのってさ、私に察しろってことでしょ!?(以下略)』
っていう長文メッセージが来たので、本音で今までの気持ちも相談してもしなくても結局変わらないことも全部言った。
もちろん相談しなかった理由もした。仕事頑張ってるのわかってるから疲れてるみたいだから相談しなかったっていう話もした。


結果?
無視されましたよ。話し合いで解決するような内容なのにね。所詮私とあの人はこういう関係っていうことなのよね。
それにSNSでは『私が悪いって言ってればいいよ。私悪くないもん。あいつのこと大嫌い。』ですって。


私と喧嘩別れしてからのあの人は、ほとんど投稿しなくなった。(毎日投稿してたのにね。)
何故かはわからないけど。


まあ、もうどうでもいいや。



以上。
ただちょっとした相談しなかっただけで、何故か憎まれて恨まれるようになった人のお話でした。

不快な思いをした方、本当にごめんなさい。
同じような経験した!って方、どんなに苦しくなっても消えたくなっても一緒に生きましょうね。

あの人たちは、性格なのかなんなのかわからないけど…周りがしっかりとちゃんと言わないと治らないからね。
あの人は、治りそうにないけど。



ここまで読んでくださった方。

本当に、本当にありがとうございました。

2/28/2023, 11:26:39 AM

【遠くの街へ】
【登場する名前は、架空の人物です。】







…あのさ。バイト終わりに家に帰ったんだけど。
なんか、道端に人が倒れてるんだけど。
しかもめっちゃ小さい子ども。

「おい。大丈夫かよ。なんかあったのか?」

……ピクリともしない。
とにかく、持ってる物とか怪我の確認をしよう。
持ち物は……あった。小学生?
持ち物の名前が全部ひらがなで書かれている。
親の文字ではなく、お世辞にも綺麗な文字ではなくて……とにかく、子どもの文字だった。

〝さいとう はな〟

女の子?髪短いし男っぽい服だし女の子が好きそうな物を持ってないから男かと思った。
怪我は、してないな。
してないけど、なんだ?
この、傷跡の数。もしかして、こいつ……

『ご…なさ……』
「は?」

なんか、言った?〝ごめんなさい〟?寝言みたいだけど。

「ってか、どうしよ。女児ゆうかい?になる。…あ。そうだ警察!それか救急車呼ぶか。」

なんで、はやく思いつかなかったんだよ。
落ち着いてスマホで電話しようとする。

「……あ。」

スマホ、家だ。わすれてた。
夜中だから人居ないし、かといって、こいつ1人にする訳にもいかない。なんか寒そうだし。上着かけて家に戻るか。



スマホを持って、外に急いで行くと女の子が体育座りをしていた。

「お前、起きたんだな。大丈夫か?倒れてたから心配した。」
『あ。ありがとう、ございます…あと、その…親に言わないでください。倒れてたの。私が悪いから。親は、悪くないの。だから』
「わかったわかった!一気に喋るな。」

やっぱり、親に怯えてるみたいだな。

「でさ、家に帰らなくていいわけ?もう夜の11時になるけど。」
『帰ってくるなって言われました。もう顔も見たくないって言われました。帰ってきたらなぐるって言ってました…。』
「なんだそれ。なあ、児童保護施設っていうのがあるんだけど、そこに相談した?お前みたいな小さい子どもは、すぐ動いてくれると思うけど。」
『親は悪くないから。私が悪いから。』

…ダメだ。
どうしようか。俺が代わりに電話するか?
傷だらけの女の子を保護してるって言えば何とかなりそうだけど。
ちらっと、女の子を見る。ガタガタと震えてる。そんなに寒くないのに。

『あの。私、公園行くから大丈夫です。ありがとうございました。』
「いやいや!全然大丈夫じゃないから。とりあえずさ、俺も公園行くから。俺、家族居ないし門限とかないし…とにかく心配だから、ついてくわ。」
『うん…わかった。』



……長い長い沈黙。
ひたすら女の子と一緒に公園に行く。
夜中だから危ないし、それに公園に着いてから児童保護施設の人に電話した方が場所もわかりやすいと思ったから。

『ここの公園です。』

へえ。結構広い公園だな。
ここなら

『あの。公園、一緒に遊んで。』

……え、いやいやいやいや!
ただでさえ、女児ゆうかいみたいな感じなのに、遊んでたらこっちが怖い。通報される!

「いや、あのさ!えっと…先に、大人の人に電話しようかなって思ったんだけど…だめ?」
『大人の人…?そう、ですよね。わかりました。座って、待ってます。』

そう言ってベンチに座る。
ちらちらと確認しながら、電話する。
施設の人は、すぐに来てくれるそうだ。
それに優しそうな人だった。

「なあ、施設の人、すぐ来るってさ。近くにいるみたいで。」
『うん。わかった…迷惑かけて、ごめんなさい。』
「あのな、子どもは迷惑かけていいから。……そうだな。少しの間だけど。遊ぶか?」
『いいの?遊びたい!』

急に笑顔になった。
やっぱり、子どもだな。
それに、初めて笑顔見た気がする。




……遊んだ。疲れた。
子どもは、体力おばけって言うけど、本当だな。

『お兄さん、最初は、ヤンキー?かと思ったけど、優しい人で良かった。』
「あ?…まぁ、よく言われるわ。バイト中もおばちゃんに怖がられるし、何もしてないのに目つき悪いって怒られるし。」
『あ…そうなんだ。』
「まぁ、気にしてねえよ。」

他愛ない話。
この子は、少しでも日常を忘れることができたのか分からないけど、忘れることが出来たならいいや。



その後、施設の人が来て色々事情聴取?されて、何かあったらって言われて名刺渡されて、女の子と施設の人は、大きめの車に乗って行った。
女の子とは、その後、会えてない。
…てか、会える方がおかしいけど。
元気に過ごしてるなら、それでいいか。

「そろそろ仕事行くか。」

遠くの街へと引越しても、いつも思い出す。
俺の選択は正しかったよな?








大学の帰り、あの時の公園の前を通った。
あのお兄さん、居るわけないよね。
ありがとうって言えなかった。
私の家族は、良くない人たちだったから。

『ありがとうございました。』

小声で、ボソリと、言って、公園を去った。

2/12/2023, 6:57:19 AM

【この場所で】



この場所は、僕の天国です。
夜に親に怒鳴られることもなく、朝に家族が散らかした部屋の片付けをすることもなく、朝昼晩のご飯の用意をしなくてもいい。
本当に、いい場所。

…まぁ、その、橋の下なんだけどね。
家?は、ダンボールで出来た家。
服やお金、は少ないけど持ってきた。
貴重品も持ってきた。大切なものだから。
お金も全然ないから節約生活しなきゃね。
僕、お仕事してないし。

よし、いつものように、その辺に生えてる草を食べよ。
夜中になったら、お巡りさんが来るからお昼の時間にいっぱい集めないと。

そう思いながら、橋の下から出て気になる人を見つけた。
虚ろな目して座ってる
人の心配なんてしてる場合じゃないけど…大丈夫なのかな?

まるで……

グーーー

僕の、お腹がなった。
あの人と目が合った気がする。
僕は、慌てて隠れる。

「見つかった…かな?まぁ、大丈夫だよね!」
空耳か…みたいな感じでどこかに行ってくれるよね!
『誰だ?』

……見つかった。
恥ずかしい。
今、顔、真っ赤だよ。泣きそう。

『腹減ったの?もしかして、お前の家あれ?ホームレス?』
そう言って、男性はダンボールハウスを指さす。
「はい…あっでも、心配しなくても大丈夫です!ダンボールでも、生きていけます!」
そう早口気味に言い終わると、またお腹がなる。それもさっきより大きな音。
……あぁ、恥ずかしすぎて、涙目になってきた。

男性はため息をして、待ってろ。って言ってどこかに行った。
どこ行ったのかな…お巡りさんの所だったら、嫌だなぁ…あの家に帰りたくない。


何分たったかな…男性が色々な物が入ってるビニール袋を持って帰ってきた。
『お前が何が好きなのかわかんないから、適当に買ってきた。食えよ。グーグーなってうるさいからな。』

……男性は、神様でした。
えっ、でも、いいのかな。
裏がありそうで、逆に怖いんだけど
『それに』
「へ?」
『……なんでもねえ。はやく食えよ。何も要求なんてしないから。』


それから、僕は、男性が買ってきてくれたものをありがたく食べました。
とてもとても美味しいです。
何か話さないとって思いながら、食べながら、僕は家庭の事で家出をしてきたこと、ダンボールで2週間住んでること、その辺の草を食べて生活してきたことを簡単に話した。

…なんだか、この人には、自然と色々と話してしまった。
不思議な人だなぁ。

『じゃあ、俺帰るから。お前もさっさと寝ろよ。』
周りを見渡すと夕暮れになってた。そりゃあ、帰るよね…でも、この人になにかしてあげたい。どうしようって考えてたけど……うん。やっぱり、僕に出来ることはこれしかない!

「あの…もし良かったら……じゃなくて、あの!僕、家事全般出来るからなんでも出来るから家について行ってもいいですか?!あ、これが身分証明書です!未成年じゃないから大丈夫ですよね!?」
って……あ、やっちゃった。
めちゃくちゃ早口で、しかも絶対、変な人認定された。


沈黙。辛い。
チラッと、男性の顔を見る。
うわぁぁぁ、呆れた顔してる。
もう、無理ですよね。本当に、ごめ
『いいよ。家具も必要最低限しかないし、崩れそうなぐらいボロボロな家だ。それでもいいなら。あぁ、そうだ。後は、出ていきたいなら、俺に言わずに勝手に出ていってもいいからな。』
「本当ですか!?やったー!今から支度して貴方について行きます!」

これが、兄さんと僕の出会い。
懐かしいなぁ。

『りお。』
「兄さん?どうしたの?」
『仕事行くから。』
「わかったよ!お弁当作ってるからね!」
『いつもいつも……作るの、めんどくさいだろ。』
「いやいや!全然大丈夫だよ!台所に行こう!」


この場所が、今の僕の天国。
すごくいい場所で大好きな場所。

今日も、この場所で……この大好きな場所で、家事頑張るぞー!

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