小鳥遊 桜

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【この場所で】



この場所は、僕の天国です。
夜に親に怒鳴られることもなく、朝に家族が散らかした部屋の片付けをすることもなく、朝昼晩のご飯の用意をしなくてもいい。
本当に、いい場所。

…まぁ、その、橋の下なんだけどね。
家?は、ダンボールで出来た家。
服やお金、は少ないけど持ってきた。
貴重品も持ってきた。大切なものだから。
お金も全然ないから節約生活しなきゃね。
僕、お仕事してないし。

よし、いつものように、その辺に生えてる草を食べよ。
夜中になったら、お巡りさんが来るからお昼の時間にいっぱい集めないと。

そう思いながら、橋の下から出て気になる人を見つけた。
虚ろな目して座ってる
人の心配なんてしてる場合じゃないけど…大丈夫なのかな?

まるで……

グーーー

僕の、お腹がなった。
あの人と目が合った気がする。
僕は、慌てて隠れる。

「見つかった…かな?まぁ、大丈夫だよね!」
空耳か…みたいな感じでどこかに行ってくれるよね!
『誰だ?』

……見つかった。
恥ずかしい。
今、顔、真っ赤だよ。泣きそう。

『腹減ったの?もしかして、お前の家あれ?ホームレス?』
そう言って、男性はダンボールハウスを指さす。
「はい…あっでも、心配しなくても大丈夫です!ダンボールでも、生きていけます!」
そう早口気味に言い終わると、またお腹がなる。それもさっきより大きな音。
……あぁ、恥ずかしすぎて、涙目になってきた。

男性はため息をして、待ってろ。って言ってどこかに行った。
どこ行ったのかな…お巡りさんの所だったら、嫌だなぁ…あの家に帰りたくない。


何分たったかな…男性が色々な物が入ってるビニール袋を持って帰ってきた。
『お前が何が好きなのかわかんないから、適当に買ってきた。食えよ。グーグーなってうるさいからな。』

……男性は、神様でした。
えっ、でも、いいのかな。
裏がありそうで、逆に怖いんだけど
『それに』
「へ?」
『……なんでもねえ。はやく食えよ。何も要求なんてしないから。』


それから、僕は、男性が買ってきてくれたものをありがたく食べました。
とてもとても美味しいです。
何か話さないとって思いながら、食べながら、僕は家庭の事で家出をしてきたこと、ダンボールで2週間住んでること、その辺の草を食べて生活してきたことを簡単に話した。

…なんだか、この人には、自然と色々と話してしまった。
不思議な人だなぁ。

『じゃあ、俺帰るから。お前もさっさと寝ろよ。』
周りを見渡すと夕暮れになってた。そりゃあ、帰るよね…でも、この人になにかしてあげたい。どうしようって考えてたけど……うん。やっぱり、僕に出来ることはこれしかない!

「あの…もし良かったら……じゃなくて、あの!僕、家事全般出来るからなんでも出来るから家について行ってもいいですか?!あ、これが身分証明書です!未成年じゃないから大丈夫ですよね!?」
って……あ、やっちゃった。
めちゃくちゃ早口で、しかも絶対、変な人認定された。


沈黙。辛い。
チラッと、男性の顔を見る。
うわぁぁぁ、呆れた顔してる。
もう、無理ですよね。本当に、ごめ
『いいよ。家具も必要最低限しかないし、崩れそうなぐらいボロボロな家だ。それでもいいなら。あぁ、そうだ。後は、出ていきたいなら、俺に言わずに勝手に出ていってもいいからな。』
「本当ですか!?やったー!今から支度して貴方について行きます!」

これが、兄さんと僕の出会い。
懐かしいなぁ。

『りお。』
「兄さん?どうしたの?」
『仕事行くから。』
「わかったよ!お弁当作ってるからね!」
『いつもいつも……作るの、めんどくさいだろ。』
「いやいや!全然大丈夫だよ!台所に行こう!」


この場所が、今の僕の天国。
すごくいい場所で大好きな場所。

今日も、この場所で……この大好きな場所で、家事頑張るぞー!

2/12/2023, 6:57:19 AM