【ハッピーエンド】
むかしむかしのお話。
近未来的なお話。
海辺のお話。
家出してきた人のお話。
その人を拾ってきた人のお話。
ある国の平民のお話。
「このお話は…わたしには難しいなぁ。」
ゲームの悪役のお話。
モブ役のお話。
1人の少女は1冊づつ大切に掃除をして、綺麗にして、本棚にしまいました。
「まあ、こんな感じだね!」
物語がたくさんある、広くて少し寂しい部屋に1人の少女がいました。
少女は産まれた時からこの場所にいました。
最初は、たくさんの人がいました。
けれど、この場所にはたくさんの本しかないことに嫌気がさしてしまったのか…人々は、少しづつ少しづつ部屋から出ていきました。
少女に声をかけてくれる人もいました。
けれど、もう、なんて言ってくれたのか、覚えてません。
少女も、出ていこうかなと考えたこともありました。
けれども、少女が出ていくとこの本たちはどうなるのか。いつかボロボロになってしまって、読めなくなるのではないのか。読めなくなった本は、捨てられてしまうのではないか。
そう思った少女は、出ていくことをやめました。
「……ひとりでも、寂しくないもん。」
誰もいない寂しい部屋にひとりぼっちの声。
少女は、気分転換させようと1冊の本を取り出して声を出しながら読むことにしました。
こうすれば、寂しくない。
そう思いながら。
……何冊か読み終わって、少しだけ休憩することにしました。
この部屋は、何故かお腹を空かせることも喉が渇くこともなかったので、物語に出てくる〝食べ物〟に少しだけ興味がありました。
ひとりぼっちなので、〝誰かを想うこと〟や〝誰かとケンカ〟や〝誰かに恋をする〟なんて知りませんでした。
少女は、〝カラッポ〟でした。
いつの間にか少女は寝ていたみたいで、ゆっくりと起きていつものように辺りを見回すと、1人の少年がいました。
…少年というか、なんというか、大人??
それでも、少女は嬉しかったのです。
この部屋に誰かが居るなんて何年ぶりだろう!
そう思って、少年?に声をかけました。
「ねえ!どうしてここにいるの?ここは本の部屋だよ!本好きなの?おすすめの本があるの!あっそうだ物語に出てくる人はおもてなし?をするって言ってた!何しよ」
『……うるさい。』
…少年に怒られました。少女は、少ししょんぼりしてしまいました。
それを見た少年は、ため息をついて
『…なんでここにいるんだよ。リア。』
「え…えっと、わたし名前なんてないよ。その人、だぁれ?物語に、そんな人いたっけ?」
『物語じゃなくて、お前の名前。…遅かったのか?いや、でも……』
そう言って少年は黙ってしまいました。
り、あ
どこで聞いたんだろう。聞いたことあるような?たくさん誰かが呼んでくれたような。
『とりあえず帰るぞ。ここは夢の中なんだよ。アイツが言うにはその扉から出れば、まだ間に合うから。このままだとお前、本当に、消えて……』
そう言って少年は泣いてしまいました。
わたしが消えるってなんだろう。
そういえば、元々ここにいた人達はみんな〝帰らなきゃ〟〝家族に会いたい〟〝キミもはやく帰らないと〟って言ってたのを少女は思い出しました。
「ねえ、お兄さん。わたし、ここを離れたら本たちが可哀想だよ。誰も掃除してくれない。綺麗にしてくれないの。可哀想。」
『……お前は、いつもそうだったな。人にも物にも優しくて、物を落としたら泣きそうな顔して謝っててさ。でも、もう、だめなんだよ。はやく帰らないと。リア、頼むから俺を置いて行かないでくれよ。』
お兄さんの言ってることが、何故かわかる。少女は、わたしは、思ったの。
「…本たち、わたしが掃除しなくても大丈夫なの?」
『あぁ。』
「絶対?」
『絶対に、大丈夫だ。』
わたしは、初めて会ったはずのお兄さんの言うことが信用出来た。なんでだろう。
『じゃあ…帰るぞ。』
そう言って手を出す。
わたしは……
・手を握ってお兄さんと扉の向こうへ行く
・やっぱり、ここにいる。
リア。
『リア!』
…誰かの声。
ピッ……ピッ……っていう音が聞こえる。
目を開けるのが、大変。
ゆっくりとゆっくりと目を開けると、真っ白な部屋に、涙でぐちゃぐちゃな私の兄さんの顔。
たった1人の家族の顔。
『良かった……どこか痛いところあるか?』
私の声は出なかったから、首をゆっくり振る。
どこも痛くないよって安心させるために、何度も何度もゆっくりと振る。
大きな事故が、あったみたい。
そこに私は巻き込まれて、ほかの患者さんたちは目が覚めるのに…私だけ、ずっとずっと起きなかったみたい。
大怪我をしたけど、奇跡的に、みんな無事。
そんなニュースが流れてるのを、兄さんと一緒に病院の病室で、みていた。
3/30/2023, 5:55:02 AM