小鳥遊 桜

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【1つだけ】


「ねえ、おかあさん。どうして、おそらにおねがいごとを、してるの?」
〝それはね、今日は、お星様がみんなの願いごとを1つだけ叶えてくれるからだよ。〟
「ねがいごと…?」
〝そう。だからね、ルウも何かお願いごとをしてみたらどうかな?〟
「ルウは………」







『おい。ルウ。いつまで寝てんだよ。朝だぞ。学校遅刻しても知らねぇからな。』

懐かしい夢をみていたのに、バカうるさい声のせいで、起きてしまった。
…学校なんて行きたくない。
新学期だから行かないといけないなんて、誰が言ったの?
あんな所、行かなくてもいい。

『あ、そうだった。ルウ、今日は祭りの日だ。お前の母さんが好きだったよな。星祭。』
「そうね…お母さん、桜と星が見れるから、好きだったわ。」
『……行くなら、僕と一緒に行くか?人混み嫌いでも、誰かと一緒なら行けるだろ。』
「…夕方までに、考えとく。」


この人は、私の…親戚のようなもの。多分。
お母さんがなくなって、お父さんは私を置いてどこかに行って。親戚を何件も何件もたらい回しにされて…そんな私を見ていたのが〝リク〟だった。
その時、親戚とリクとで、何か色々とあったけど。もう、思い出せないや。
リクは『あんなやつら、忘れろ。子どものことを一番に考えないなんて、何がしたいんだよ。』って言ってくれた。
少しだけ、嬉しかった。


「ねぇ、リク。私、今日学校行かない。家で勉強してる方がいいわ。」
『わかったよ。ただし、飯食えよ。弁当も作ったからな。』
「わかった…いつも、ありがとう。」

リクは、何も言ってこない。
それが、いいんだけど。








『おーい。そろそろ祭りだけどさ。行くのか?行かないのか?』
「…行く。」
『ん。わかった。招待状持ってかないとな。アレがないと入れないからな……よし、2枚入れた。』

私も、準備しないとダメね。
一応、お祭りだからちゃんとした…でも動きやすい服を着て、髪は…リクにお願いしよう。リクの方が上手だし。

「ねぇ、リク。この服で行くの。髪型どうしたらいい?」
『そうだな…』

そう言って、ブラシとヘアゴム…色々な物を持ってくる。
こうして見ると、美容室みたい。



終わったみたい。
こんな短時間でこんなに綺麗な髪型にしてくれるなんて…本当にすごい。
『どうだ?気にくわない所とか違う髪型にしてくれとか…ないか?』
「そんなの、ないよ。綺麗。ありがとう。」
『よし。んじゃあ、行くか。歩きだけど。』
「いいよ。少し遠いけど、歩いていける距離だもの。」





たわいない会話。
カップル同士のイチャイチャ。
家族の楽しそうな明るい声。

祭りの会場に着くと色んな声が聞こえる。

〝星祭〟

そう、書いてる。本当に着いたんだ。って変な感情や思いが出てきた。



〝招待状を確認してもよろしいでしょうか?〟
『ああ。これ。』
〝…はい。2名様ですね。ようこそ星祭へ。〟

そう言ってパンフレットを2枚、渡してきた。
キラキラの…ラメかな?こんなパンフレット初めてみた。

「綺麗なパンフレット。」
『そうだな。……あ、ここ行くか?屋台広場。なんでも買ってやるよ。他にも色々とイベント広場に桜広場…なんか会場広すぎ。僕もルウも体力ないから、ゆっくり行くか。』
「わかった。」

パンフレット片手に色んな場所に行って、色んなものを買ってもらったり、色んなイベントをみたり、桜をみて、写真…はカメラ忘れたから撮ってないけど。


『ほんと、今日限定っていうのが、もったいないな。』
「そうね。」

そう言い終わるか言ったかぐらいで、アナウンスがなった。

〝まもなく、星への願いごとのお時間です。パンフレットに番号が書いてあるので、順番が来た方は星空の花畑広場へ来てください。焦らずゆっくりと来てください。〟


パンフレットを見ると〝30〟〝31〟と書かれていた。

『んー。まだっぽいな。でも、ちょっと遠いな…星空の花畑の近くまで行くか。真逆に居るみたいだし。』
「うん。わかった。」



星空の花畑の近くに着いた頃。私たちの数字のアナウンスが流れた。リクは少し息切れしてたけど…大丈夫かな。
『はぁぁぁ…こんな、ことなら、体力、つけとけば、よかった。』
「大丈夫?あいてない水あるよ。」
『おう…ありがとな。休んでから行くか。』









やっと着いた会場は、どの場所よりもすごく綺麗だった。
天国って言われても全然違和感がないぐらい。
疲れなんて、どこかにいってしまうぐらい…本当に、おとぎ話に入ったみたい。


〝30の方。どうぞ。足元に注意してくださいませ。〟

『1人づつなんだな。ルウ、ちょっと行ってくる。』
「うん。」





5分ぐらいしてから、リクが帰ってきた。

『ルウ。びっくりするなよ。マジでやばい。』
「う、うん。」

〝31の方。どうぞ。足元に注意してくださいませ。〟

なんか、ドキドキしてきた。
お母さんと行ったことあるはずなのに。






係りの人について行って、少し長い階段を降りて、トンネルがあってその先には…


「光ってる、花?あっ…空も見える。」
〝この花は特別で、光るのです。ここでしか咲かないみたいでして…本当に珍しい花です。さて、1つだけ星空へと願いごとをお願いします。願いごとが終わりましたら、トンネルの方へお越しくださいませ。〟


そう言って、係りの人はトンネルの方へと行ってしまった。

願いごと…

「リクとずっと一緒に居たい。もう、1人は、いや。」

そう。お願いした。

そういえば、小さい時、なんてお願いしたっけ?




〝そう。だからね、ルウも何かお願いごとをしてみたらどうかな?〟
「ルウは、なにもないよ。おかあさんがいるもん。」
〝そっか。嬉しいわ。ルウ、ありがとう。お母さんとっても嬉しいわ。〟





そうだ。何も言わなかったんだ。私。

今日は、叶えてください。
念入りにお願いごとをして…係りの人の所へ行く。


階段を登って、リクの所へと行く。
『おかえり。なんか、いいことでもあったのか?』
「うん。お母さんのこと思い出したり、素敵な思い出が出来たから。」
『そうか。……あ、小さい子は親と一緒に行くんだな。当たり前か。』




星空をもう一度見る。
本当に、綺麗だなぁ。

願いごと、叶うといいな。


『ルウ。何か買って帰るか。雑貨屋もあるみたいだぞ。』
「今、行く。」

4/3/2023, 11:27:00 AM