無人島に行くならば
一人は嫌いと常々笑う君がそんな問いをかけてくる。
無人島に行くならば君は何を持っていく?と。
特に一つとも言われなかったのであれこれ答えていると
君は持って行き過ぎだと吹き出した。
そういうお前は何にするんだと聞いてみりゃ、
これまた笑顔で全部と言いやがった。
お前こそ持って行き過ぎだとつついてやれば、
これまた楽しそうにきゃあきゃあ笑う。
お前が言った全部の中に、俺は居るんだろうか。
それとも物だけ持ってって、お前は一人で居るつもりなのか。
どうしてそんな顔で笑ってられる。
今にも泣きそうなその顔で。
でも絶対無人島なんて行かないと思う。一人は嫌いだから。
結局お前はからから笑って、そのままここを離れていってしまった。
friends
眠れないでいる朝四時って、
なんでこんなに気持ちが悪いんだろう。
心も頭も重くて吐きそうなのに脳だけ回って嫌になる。
寝ぼけているのに眠れないでいる脳みそのまま君が語りかけてくる。
どこだかで深夜の心理状態がどうたらこうたら
書かれているのを見た気がするが、
きっと今君が求めているのはそういうのじゃないだろう。
何も言わずに君の横へ寝そべる。
君は些か不服そうに身を捩るが、
起き上がったり文句を言ったりはしてこなかった。
君はまっすぐ天井を見上げている。
酷い隈。何日寝れていないんだろう。
けれどもそんなに見つめるのも踏み込むのもいけないから
僕はそっぽを向くことにした。
音が頭の中でぐるぐるしてる。
やかましくてかなわないからもっと大きな音でかき消す必要がある。
君は未だにぼんやり喋っているから、
それを聞き零さないようにした。
今日のそれはなんだか雲が変でよかった。
またお風呂場に虫がいた。
数学ってなんであんなに難しいの。
今日の水筒の中身DAKARAだった。
リサイクルショップに可愛いぬいぐるみがいたからお迎えしたい。
あそこの壁だけなんかさみしい。
新しい詩集が欲しいな。
そういうようなことを垂れ流しにしてくる。
君が見てきた、感じた日常の共有。
無口なはずの君がそれをしてくれるのが何よりも嬉しい。
毎日にプレゼントがあるみたいだ。
お互いただのシェアハウス相手。
学校が同じだったわけでも同じバ先なわけでもない。
だからこその距離。近づけば崩れる。
だから付かず離れず君の隣を死守するんだ。
いつまで経っても、君が全て打ち明けられる友達のままで。
君が紡ぐ歌
あなたの詩は澄み切って、透明な透明な水みたいだった。
体の隅まで行き渡って、なければ生きていけないかのよう。
お前の歌は染み入る光のよう。
深く深く入り込んで奥底まで照らす。
あなたの詩が好き。
私はもう澄んだ水でしか生きられなくなってしまった。
お前の歌を好いている。
俺はもう陽だまりの中にしかいられない。
いつまでもあなたが詩を紡ぐ様を見ていたい。
この世の全てを悟りきったかのようなその横顔を。
いつまでもお前が歌う姿を眺めていたい。
思った全てを連れて行く覚悟を。
あなたの紡ぐ詩は私の全てだ。
お前の叫ぶ歌は俺の全てだ。
この思いが互いに伝わらなくてもいい。
そのうたの一助になれれば、それでいいから。
光と霧の間で
飄々とした青空のもとでお前は生きていた。
他ならぬ俺がそうした。
お前に霧は似合わない。
晴天こそが素晴らしい。
俺を霧に置いていくのが良い。
お前は殊更輝けることだろう。
しかしお前はそれを良しとしなかった。
あろうことか俺のような木偶の坊に救いを与えたのだ。
だから、あのような死に方をしたのだ。
愚か者。このような醜男にばかりかまけているから。
お前の文才があれば何でもできたろうに。
やさしいひだまりから鬱屈とした霧の中などに入るから。
温かい心は冷え切り凍って、溶け切る前に砕けてしまった。
お前はもういない。
俺に温かさを教えたお前はもういない。
なんてことを。
お前の墓の前で俺は恨み言ばかりを垂れる。
感謝してもしきれないのに、目先の不幸にとらわれる。
幻覚のお前がいる。
愚か者のお前がいる。
俺の詩は呪いのようだとお前は言う。
お前が呪いにした。呪いにしたお前がそれを言うのか。
お前はそれもそうだと納得してしまう。
優しいお前が次に何を言うか俺は予想がついてしまったので、
先に謝ってくれるなよと吐き捨てた。
惨めになるのはごめんだと。
お前はまたそれもそうだと納得した。
惨めだなんて、最初からそうだというのに。
俺がお前をひだまりにそそのかしたあの時からずっと。
いつかのお前が蘇る。
お前は何か言って笑っている。
目の前の幻覚も笑っている。
触れようとした手は空をかき、お前の墓に触れる。
ひだまりの熱であたたかい。
お前はもういない。
冷え切った俺だけが残されている。
ああ、なんて惨いことを。
お前だけが温かかったのに。
秋の訪れ
寒々しくなってきた空。
まだ息は白くはならないけれど、
びゅうびゅう風が暑さを連れ去る。
けれどもなんでもないような顔をしたあんたは
へっちゃらみたいでからから笑っている。
寒くはないの、と何度も問うてはみるけど
平気の一言だけが返ってくる。
まだ君にだけは秋が来ないんだねぇ、と笑えば
君は変なの、と言ってまたからころ笑うのだった。
まだ夏の君ともう秋の僕がいれるのはあと数日だけ。
夏と秋を一緒くたにして、次の休みは僕ら二人で何をしようか。