歌
真夜中、昼間の明るさが嘘のようにとぷんと沈んだその時。
当たり前のように眠れない。
私はヘッドホンを引っ張り出してプレイリスト再生する。
何度も聴き続けて火傷のようにこびりついた曲をまた再生する。
曲目が増えることはない。
今までもこれからも同じ曲ばかりを焼き付けるのだ。
一曲目。
二曲目。
三曲目。
四曲目。
五曲目。
繰り返す度に思考は奥へ沈む。
流れに身を任せて頭は役割を放棄する。
まるで切れてしまった電球のように。
後悔ばかりが浮かぶ時間に、
その重みに潰されてしまわぬように。
俤ばかりに囲まれぬように。
心臓を掬い取って、死んでしまいたくなるから。
水のように流れて消えてしまいたくなるから。
溺死した思考に両手を組んで冥福を祈って眠るのを待つ。
光り輝け、暗闇の中で
酸素
学校の一角。
なんの変哲もない、授業が行われているだけの教室。
騒がしい教室。
窘める教師。
聞かん坊の高校生たち。子供たち。
その中で一人息を張り詰める。
大きな声が上がるたびに体はビクついて強張る。
逃げ場はなかった。
大きな声とともに怯えで跳ね上がる体。
気づかれないで良かったとその度に胸を撫で下ろす。
騒ぐことが正義のような彼らの前で、
大きい音が苦手だなんて言えるはずもなかった。
目の前で合唱される大声。
笑う、私以外。
顔を顰める教師。
途方もない騒ぎ声。
何でもいいからこの場を離れようと、
一言断りを入れて御手洗いに向かった。
コンタクトを直している先客にも気づかれないように、
静かに足早に個室へ閉じこもる。
どうして。
どうして!!!!!!!!!!!!!
あんなにも傍若無人に騒げるのか。
その声が人を傷つけている事が分からないのだろうか。
その声のせいで授業が聞こえない人も、
具合を悪くする人だっているのに。
惨めだ。
惨めだ。
惨めだ。
惨めだ。
惨めだ。
個室の中で空気が張り詰める。
惨めだ。
惨めだ。
惨めだ。
惨めだ。
惨めだ。
惨めだ。
惨めだ。
惨めだ。
自覚しないうちに涙が止め処なく流れていた。
惨めだ。
惨め。
惨めだ。
惨めだ。
惨め
惨めだ。
惨めだ。
惨め。
惨め。
惨めだ。
惨め。
惨め。
息ができなくて、酸素が肺に回らなくて。
惨め。
惨め。
惨め。
惨め。
惨め。
惨め。
私だけに酸素が足りない。