大狗 福徠

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8/2/2025, 5:52:56 AM

8月、君に会いたい
魚面の夢を見た。
すぐ上には水面。
足元には玉状の石の群れ。
大昔、川に落ちた時の夢。
確かこのあとすぐに引き上げられて、それで。

溺れていた記憶を見ていたというのに焦りはない。
エアコンの効いた涼しい部屋の中で、
俺はこれ以上ないくらいの平穏を保っている。
枕元の時計は2:36を指す。
まだまだ夜中だ。
カーテンを除けてみればぽっかりとした月が浮かんでいる。
まるいまるい、魚の目みたいにまるい月。
起きているのに夢を見ている。
夢を見ているというよりは、これは。
夢に見ているのか、あの日の情景を。
溺れた恐怖と焦りに勝るほど美しかったあの景色を。
揺れる水面。
流れる透明な水。
周りを泳ぐ小魚たち。
そして、目の前のあの大きな魚。
皮膚をぱくつくでもなく、逃げるでもなく、俺の目の前にいた。
あれから何年経っただろう。
鮮明に思い出せば出すほどまるで恋のように焦がれるのだ。
まだ、生きているのだろうか。
あの大きさならば、鳥にも狙われることは少なかろう。
もし、いまだに生きているのならば。
会いたい。
あの溺れた夏のように。
あれに出会った8月の川の中で。

7/31/2025, 11:42:16 PM

眩しくて
外が眩しい。
朝日が昇ったらしい。
傾いた雨戸の隙間から、閉まりきらない障子から日が差す。
何かの鳥が鳴いている。姿を見たことはない。
少しの明かりが自分の睡眠には猛毒だった。
質の悪いヘッドホンから聞こえる歯欠けの音楽は、
結局睡眠導入の意義を果たさなかったようで今日も徹夜だった。
ヘッドホンでもかき消しきれない話し声が更に安眠を妨害する。
寝ても起きても結局は気狂い共に害される日々。
外に逃げたところで行き先はない。
灼熱の夏の陽気と、耐え難い視線に倒れて終いだ。
そうなりかけたのを、よく覚えてる。ましてや今は病み上がりで。
朝っぱらから片割れに理不尽にも八つ当たりで怒鳴られ
もう片割れには神経を逆撫でされ続ける。
そんなクズ二匹の血を継いで狂った者の娘の私はもはや獣で
人権なんてのも尊厳なんてのも存在はせず、
あの片割れと同じように馬鹿の一つ覚えで
神経の逆撫でしかできない。
もはや死ぬしかない。
他人様の基本的人権の尊重を害さぬように
一家全員殺して死なねばならない。
しかしそんな度胸も覚悟もクソもなく。
害獣五匹はのうのう生きている。
外が眩しい。
生きるお金には困らない人たちが。
ゲームが楽しい人たちが。
好きな本を、字を読んでいられる人たちが。
愛したペットを最期まで正しく看取れる人たちが。
ちゃんと絵を描いていられる人たちが。
しっかり人と話せる人たちが。
友達がいる人たちが。
逃げられる人たちが。
泣ける人たちが。
怒れる人たちが。
夜寝れる人たちが。
出かけられる人たちが。
眩しくて羨ましくて恨めしくてしょうがない。


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 ぜんぶじつわ
 いまも

7/30/2025, 7:47:25 PM

熱い鼓動

7/26/2025, 3:18:48 PM

涙の跡

7/25/2025, 8:21:19 PM

半袖
貴方は半袖を着ない。
貴方の傍らにはクッション。
もう片方にはブランケットを兼ね備えていつだって眠りこけている。
指定の真っ白なカーディガンを着て、
伸ばしっぱなしの髪を垂らして、
大きな黒縁メガネをかけた貴方に肌を見せる隙なんてない。
ぼんやりとした大きい目はうつらうつらと彷徨っている。
厚いまぶたは今にも閉じてしまいそうで。
どうか眠らないでと心のなかで嘆願する。
眠った貴方には隙が出来てしまうから。
カーディガンの下の制服、その下の素肌。
真っ白な肌に刻まれる無数の傷跡。
夏にはインナーを着れない貴方。
どうかまだ眠らないでいて。
半袖を着れない貴方。
冬まで眠らないでいて。
その隙を知るのはあたしだけでいいから。

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