8月、君に会いたい
魚面の夢を見た。
すぐ上には水面。
足元には玉状の石の群れ。
大昔、川に落ちた時の夢。
確かこのあとすぐに引き上げられて、それで。
溺れていた記憶を見ていたというのに焦りはない。
エアコンの効いた涼しい部屋の中で、
俺はこれ以上ないくらいの平穏を保っている。
枕元の時計は2:36を指す。
まだまだ夜中だ。
カーテンを除けてみればぽっかりとした月が浮かんでいる。
まるいまるい、魚の目みたいにまるい月。
起きているのに夢を見ている。
夢を見ているというよりは、これは。
夢に見ているのか、あの日の情景を。
溺れた恐怖と焦りに勝るほど美しかったあの景色を。
揺れる水面。
流れる透明な水。
周りを泳ぐ小魚たち。
そして、目の前のあの大きな魚。
皮膚をぱくつくでもなく、逃げるでもなく、俺の目の前にいた。
あれから何年経っただろう。
鮮明に思い出せば出すほどまるで恋のように焦がれるのだ。
まだ、生きているのだろうか。
あの大きさならば、鳥にも狙われることは少なかろう。
もし、いまだに生きているのならば。
会いたい。
あの溺れた夏のように。
あれに出会った8月の川の中で。
8/2/2025, 5:52:56 AM