NoName

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8/20/2023, 10:07:53 PM


寂れた青いとたん屋根の下に

1人取り残された麦藁帽子

その一面は雑草に覆われている。

寂れた自転車のサドルが幾年もの

風雨の厳しさを教えてくれた。

と、その時、突風によろめき、砂のように

根本から折れてしまった。

私は、思わず目を覆った黒い8月の

雲の下。

どこかから、陽の隙間がないかと、

天に助けを求めた。

そこには、

電信柱の数羽のカラスが

しゃがれたヒソヒソ声で、何かを

話しているだけだった。

8/16/2023, 12:56:50 AM


レモは、SNSの投稿を読んで、ため息を

ついた。

もう、俺に集るのはよしてくれ。

もう、俺、終わった人なのによ。

もう、アスリートとしては、引退したわけ。

あの筋書きのないドラマ、伝説のシーンの

ように空を舞うことはできない。

彼自身がよく分かっていた。

今までの肩書きは残るわけだか、

実際は、普通のサラリーマンに近い。

だから、普通にコンビニやスーパーで

買い物へも時期行けるようになる。

そう、思っていた。

だから、SNSで結婚の報告をしたときも、

ここまでの騒ぎになったことに驚きと失望を

感じた。

どうしたものだろうか?

このまま、今までのレモのイメージを

大切に守っていくべきか、

それとももっと素の自分を出していこうか。

食べかけのカップ麺はすでに伸びきって、

シャチホコばって、ぐったりとしていた。

レモンは、破れたパンツに指を入れ、

尻を掻いた。

思えば、小学生の低学年くらいまでは、

氷滑りが好きなだけのただの男の子だった。

氷滑りをしているとき以外は、

家でゲームをし、大好きなチョコを食べ、

脱いだ靴下はそこら中に置きっぱで、

よく母に叱られた。

それが、いつからだろうか。

漫画やアニメのキャラ、ひどいときは、

神格化された神のようにみられるようになっ

たのは。

最初、そんなふうにみられる彼自身を人ごとの

ように遠くの空を眺めているだけだった。

それが、テレビやラジオ、インターネットで

自分のことが取り上げる映像をみるにつけ、

半ば無意識に自ら、どんどんと舞台の台本

を読み、演出するようかのようになった。

見えない脚本家は、その都度、微妙に

趣向をかえ、半ば、強制的に彼自身を

動かす。そんな感じに近いかもしれない。

あの伝説の世界大会の試合でさえ、

かなりの虚気の演出が施されていた。

実のところ、テレビなどの報道にあった

足の怪我は数ヶ月前に完治していた。

それは、自分は一番分かっているはずだった。

だが、彼は意図的に欺いているのでは

なかった。全てがホンキのホンキだった。

そうでなかったら、簡単にこのウソは

見破られていただろう。

だか、誰も気づくものはいなかった。

その理由として、考えらるのは、

この時、彼は現実の世界の人間として

振る舞っていなかった。

もう一つは、彼を取り囲む空気、全体が

それを無意識に望んでいたことにあった。

そういった状況のなか、彼は、

一つのドラマ、神話をつくっていった。

彼は、いわば、1人の俳優、もしくは、漫画の

2次元キャラとそのものであった。

彼自身が無意識に誰かが求めているだろう、

筋書きを自分の舞台の演出として、

取り込んだ。

その結果があの試合の結末というわけである。

しかし、あれが、彼の盛りであった。

これから、少しずつ、萎びて、枯れていく。

周りも去って、華やかさや

輝きをどんどんと失っていく。

それは、エンディングがないドラマが

存在しないことからも明らかでだった。

もちろん、続編があるものもあるが‥。

とっ、彼のスマホがなった。

まさに妻となったばかりのマトリュからだ。

マトリュは、日本人ではない。

彼と同じ競技の彼女の国のトップ選手である。

だが、彼女の国は、日本とは違い、

世界大会で優勝するような選手は、

最重要の国賓扱いとなっているのだ。

そして、彼らの持つ力は、国を動かすことも

あるらしい。

以前、プロポーズをした夜に、

結婚後、彼女の国の一つの島をもらい、

2人で新しい国をつくりたい。

そんな、夢を本気で語ったこともあった。

住民は、全て、丸腰、丸裸で過ごす。

下着ももちろんつけない。

電気も通さない。

名前さえ使わない。

人類の最初である。

あるのは、それ自体。  

ギーっ、ピーぇ、プルぅーワ、ババっ。

今、レモは、蜘蛛の巣だらけのカビ臭い

部屋の布団の上で、涎を垂らして、目

を閉じている。

ビェーャヤ、ビェーヨ、ヨブバェージャャ

レモの頭のあたりは薄暗い部屋の中で、赤く、

青く、点滅を繰り返している。

その頭には、メタリックな蜂の巣型のヘル

メットを乗せてあるのだった。

8/14/2023, 6:19:16 AM


わたしは平日の曇天の下、行くあてもなく、

車を走らせていた。

平日の午前中、周りの奴らは、

血走った目つきで車を走らせている。

茶髪の鼻の曲がったにいちゃんは、

ハンドルをとんとんと叩きながら、

前方にいる僕に何か言っている。

「ジジイ、早くいけよ。もたもた、すんな。」

今度は、おしゃれなコンパクトカーに

乗ったアイドル顔の女の子と目が合う。

その瞬間、その女はゴキブリを見るような目

つきに変わる。

「きしょいんだよ、ハゲ、メガネ。」

私は、悲しい、気持ちで、しょんぼりと、

外の田んぼや木々に視線を移す。  

そして、一つため息をついた。

そのあと、

そこから逃れるように脇道にそれ、とにかく

車通りがない方へ、ない方へと

向かっていく。

狭い農道やら、ひどい煙を吐いた煙突が並ぶ、

工場の横もどんどんすり抜けていった。

夕闇が迫る頃には、もう、あたりには、

僕の記憶の痕跡は残らなくなった。

もうそろそろ、引き返そうかと、

あたりを見渡していると、

後ろから、黒いサングラスの男が般若の

形相で、こちらに向かって、手招きのよう

な動きをしているのが目に入った。

彼の霊柩車のようなガタイのいい車が、私の車のすぐ後ろに

張り付いた。

その時には、僕の心臓のテンポは、最高超に達しており、

私の毛根はすでに逆立っていた。

バックミラー越しの死神から目を逸らし、

がむしゃらに車を走らせる。

それから20分は、ひたすら、前だけを見て、

道なき道をいった。

「もう、大丈夫だろう」とバックミラーを覗くと、

さっきまで、影のように付き纏っていた車は

見当たらなくなっていた。

「ふぅーと」胸を撫で下ろし、念のため、もう

一度、バックミラーを確認する。

視界の端の方に

「この先、行き止まり、落車注意。」

と、その瞬間、白地の看板に赤くかかれた文字が逆さ

になり、そして、垂れていくのだった。

8/13/2023, 4:58:19 AM


それは、突然だった。

携帯電話の緊急アラームがけたたましくなり、

脳みそや内臓が全てカクテルされそうな

振動を体全身で感じた。

僕は、布団の中からやっと、首を出し、

まだ、冷たさが残る、部屋を夢心地に

みていた。

ドスドスというブルドーザーに今にも家ごと壊されるそんな響きとともに襖は揺れる。

しばらくして、ジーンという耳鳴りが聞こえる
ようになる頃に、ようやく、僕は、立ち上がる
ことを思い出した。

家の中は、本棚の本、雑貨たちが、乱痴気騒ぎのあとの雑魚寝するようにバタバタと倒れていた。

そのなかの1つに丸い大きな掛け時計が埋もれているのに気がついた。その時計は14時46分で
止っていた。

これが僕の3.11 との出会いだった。

そして、この時僕は、昔の関東大震災のことを考えていた。

その後、かろうじて生き延びたテレビのおかげで、

ことの真相を少しずつではあったが、知ることができた。

地震、津波、福島原発。
実際、日本で起こっているとは、思えなかった。

時の首相たちが東電のコスプレをして、
必死で票集めに邁進している。
そう思いたかった。

加えて、あの津波がまるで映画のCGと思ってしまう自分の想像力のなさ。 

「ここでは、想像力のないものから死ぬ。」
どこで、知ったかは、忘れてしまった。

しかし、実際、あの場所にいたら、もう、僕は
この世のものではなかっただろう。

それでも、生きていた僕‥。
なにかの衝動にかられるように、家の外に出た。北がどっちかすら、分からず空をみた。

しかし、そこには、目の前に巨大な赤い月がいた。ほんの小さな僕らを巨人が覗きこんでいるようだった。

僕は身震いした。

明日、この空、一面、雲で覆っていてほしい。
口からなにかの呪文を唱えながら、願った。
もし、そうでないとしたら、また‥

その時以来、僕はなにか嫌な出来事があるたびに、あの赤い月が僕らを覗き混んでいやしないかと探すようになった。

8/10/2023, 8:36:42 PM


A様
何か、恵んで下さい、
元気な男の子を産むんです。

作業員
‥‥

A様
米米米米

働かないば、ならないんですよ。

毎日、机に向かっている。

作業員
‥‥


1ヶ月ご‥

A様
¥¥¥¥

お金ないと、しょうがないでしょ。

机にしがみ、ついている。

作業員
‥‥

2ヶ月後‥
A様
🍚🍚🍚🍚

この子に、あげてください。

作業員
はい、飯っ。

A様
机から顔を上げる。
ああー、よかった、よかった、助かりました。

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