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それは、突然だった。

携帯電話の緊急アラームがけたたましくなり、

脳みそや内臓が全てカクテルされそうな

振動を体全身で感じた。

僕は、布団の中からやっと、首を出し、

まだ、冷たさが残る、部屋を夢心地に

みていた。

ドスドスというブルドーザーに今にも家ごと壊されるそんな響きとともに襖は揺れる。

しばらくして、ジーンという耳鳴りが聞こえる
ようになる頃に、ようやく、僕は、立ち上がる
ことを思い出した。

家の中は、本棚の本、雑貨たちが、乱痴気騒ぎのあとの雑魚寝するようにバタバタと倒れていた。

そのなかの1つに丸い大きな掛け時計が埋もれているのに気がついた。その時計は14時46分で
止っていた。

これが僕の3.11 との出会いだった。

そして、この時僕は、昔の関東大震災のことを考えていた。

その後、かろうじて生き延びたテレビのおかげで、

ことの真相を少しずつではあったが、知ることができた。

地震、津波、福島原発。
実際、日本で起こっているとは、思えなかった。

時の首相たちが東電のコスプレをして、
必死で票集めに邁進している。
そう思いたかった。

加えて、あの津波がまるで映画のCGと思ってしまう自分の想像力のなさ。 

「ここでは、想像力のないものから死ぬ。」
どこで、知ったかは、忘れてしまった。

しかし、実際、あの場所にいたら、もう、僕は
この世のものではなかっただろう。

それでも、生きていた僕‥。
なにかの衝動にかられるように、家の外に出た。北がどっちかすら、分からず空をみた。

しかし、そこには、目の前に巨大な赤い月がいた。ほんの小さな僕らを巨人が覗きこんでいるようだった。

僕は身震いした。

明日、この空、一面、雲で覆っていてほしい。
口からなにかの呪文を唱えながら、願った。
もし、そうでないとしたら、また‥

その時以来、僕はなにか嫌な出来事があるたびに、あの赤い月が僕らを覗き混んでいやしないかと探すようになった。

8/13/2023, 4:58:19 AM