赤く染まった落ち葉で道が敷き詰められて、それはまるでレッドカーペットのようだった。
レッドカーペットの先には、明るい場所。
スポットライトのように明るい日差しに照らされた君が、そこで待っている。笑いながら、こちらに手を振る。
僕は手を振り返すと、落ち葉の道を足早に歩き出した。
『落ち葉の道』
子供の頃、家で見つけた小さな金色の鍵を大切にしていた。
何の鍵かはわからない。ただのアクセサリーだったのかもしれない。
でも、同時の私にはそれが、魔法の扉を開く鍵のように思えて、わくわくした。
ネックレスにしてしばらく身に着けていたけど、その鍵はいつの間にかどこかへ行ってしまった。
どこにやったかわからない。落としてしまったのかもしれない。
そのことすら忘れて、日々を過ごしていた。
目の前に妖精がいる。
妖精なんて架空の存在だろう。
わかっているのに、何故かその光景を受け入れていた。
妖精が手招きをする。
ついていくと、妖精が実家の私の部屋の、机の引き出しを開けた。
妖精は、その引き出しの奥底を指差した。
――そこで、目が覚めた。
丁度休みだったので、電車を乗り継ぎ、実家へと帰ってきた。
夢だとわかっているのに、何をやっているんだろう。
家に着くとすぐに、今はもう物置になっている自分の部屋へと駆け込み、とっくに使われていない机の引き出しを開けた。
そこには、たくさんの宝物が詰まっていた。
好きだった人形、おもちゃの宝石、海岸で拾った貝殻やシーグラス、かわいいシール、子供の頃の写真もあった。
その一番奥に、あの鍵のネックレスが、静かに横たわっていた。
そして、気付いた。
あの妖精は、小さい頃の私の姿をしていた。
あの頃、たくさんの出来事が重なって、もう子供を卒業しなきゃいけないと、大切なものを全て仕舞い込んで、隠して、心に鍵をかけた。捨てられなかった。でも、忘れようと。
「もういいよ」
あの妖精の姿が見えた気がした。子供の頃の自分が、そう言った気がした。
無理して大人にならなくても良かったんだ、と。
子供の頃、家で見つけた小さな金色の鍵を大切にしていた。
ネックレスにしていたその鍵を、今も身に着けている。
『君が隠した鍵』
たくさんの物を手放していく。あなたから貰ったあれやこれ。あなた自身も。
悲しかった。でも、いつまでも持っているわけにはいかないから。
泣きながら、日々を耐えた。
あれからどれくらい経っただろう。
ある日、あなたからメッセージが届いた。
そこには、あの頃ずっと待ち望んでいた言葉が書かれていた。
でも、もう遅いよ。
あなたの全てを手放して、空いてしまった空間は、時が過ぎ、今はもうそれ以外で満たされている。
私は今ある宝物を大切に持っていく。
『手放した時間』
辺り一面の紅葉に顔も上気する。あまりに見事な光景で、子供ながらに、これが美しいと呼ばれるものなのだろうと理解した。
両親が呼んでいる。
そちらへ向かおうと一歩踏み出した。
次の瞬間、風が吹いて木の葉が宙を舞った。視界が紅く遮られて何も見えなくなり、その場から動けなくなる。
徐々に風は収まっていき、視界が晴れていく。
次に目にしたのは、知らない男と、その場に倒れた両親と、ただただ美しい紅に染まった世界だった。
『紅の記憶』
たくさん踏み躙られたそれは、とうとう粉々になって壊れてしまった。
その断片を一欠片だけ拾って、泣きながら箱のずっと奥底に仕舞い込んだ。
そのまま忘れて、長い年月が過ぎた。
何かあった気がしていたけれど、思い出さないようにしていた。ずっと目を塞いでいた。
ある日、弾けるように箱が開いた。奥底から、あの頃の気持ちが溢れ出した。
今からでも間に合うだろうか?
その小さくなった、けれども重い断片を、大切に手に取った。
『夢の断片』