川柳えむ

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 子供の頃、家で見つけた小さな金色の鍵を大切にしていた。
 何の鍵かはわからない。ただのアクセサリーだったのかもしれない。
 でも、同時の私にはそれが、魔法の扉を開く鍵のように思えて、わくわくした。
 ネックレスにしてしばらく身に着けていたけど、その鍵はいつの間にかどこかへ行ってしまった。
 どこにやったかわからない。落としてしまったのかもしれない。
 そのことすら忘れて、日々を過ごしていた。

 目の前に妖精がいる。
 妖精なんて架空の存在だろう。
 わかっているのに、何故かその光景を受け入れていた。
 妖精が手招きをする。
 ついていくと、妖精が実家の私の部屋の、机の引き出しを開けた。
 妖精は、その引き出しの奥底を指差した。
 ――そこで、目が覚めた。

 丁度休みだったので、電車を乗り継ぎ、実家へと帰ってきた。
 夢だとわかっているのに、何をやっているんだろう。
 家に着くとすぐに、今はもう物置になっている自分の部屋へと駆け込み、とっくに使われていない机の引き出しを開けた。
 そこには、たくさんの宝物が詰まっていた。
 好きだった人形、おもちゃの宝石、海岸で拾った貝殻やシーグラス、かわいいシール、子供の頃の写真もあった。
 その一番奥に、あの鍵のネックレスが、静かに横たわっていた。
 そして、気付いた。
 あの妖精は、小さい頃の私の姿をしていた。
 あの頃、たくさんの出来事が重なって、もう子供を卒業しなきゃいけないと、大切なものを全て仕舞い込んで、隠して、心に鍵をかけた。捨てられなかった。でも、忘れようと。
「もういいよ」
 あの妖精の姿が見えた気がした。子供の頃の自分が、そう言った気がした。
 無理して大人にならなくても良かったんだ、と。

 子供の頃、家で見つけた小さな金色の鍵を大切にしていた。
 ネックレスにしていたその鍵を、今も身に着けている。


『君が隠した鍵』

11/24/2025, 11:04:41 PM