タイムマシンを開発するのが夢だ。
その第一歩として、未来が覗ける双眼鏡を開発した。
左のレンズにあるリングで日付を、右のレンズにあるリングで時間を指定すると、その指定した日時が覗けるのだ。
早速試してみる。まずは一分後。特に変化はないが、ちゃんと覗き込める。次は一時間後。お、物の位置が変わっている。じゃあ次は明日。大きな変化は見られないが、やはり物の位置が若干変わっている。
よし、次は百年後……見えない? 十年後も、見えない……。五年後も見えない。では、一年後は?
驚いた。一年後、タイムマシンを完成させている自分の姿が見えた。
もしかして、この双眼鏡では一年後が限界なのかもしれない。しかし、それでも構わない。タイムマシンを完成させて、直接自分の目で未来を確かめればいいのだから!
それから一心不乱に開発を続けた。
とうとうあの日見た瞬間が訪れた。タイムマシンを完成させたのだ。
意気揚々とタイムマシンに乗り込み、百年後を設定する。
あの日見えなかった未来へ、出発だ!
そして、その未来で何も見ることはなかった。あの日見えていたもの――いや、見えなかったものは、確かだった。
『見えない未来へ』
空を一陣の風が吹き抜けていった。
誰も気を止めていなかった。いつもの風だと思っていたから。
風は大地を揺るがして、世界を変えた。
今はもう、そこに風を感じる者はいなかった。
『吹き抜ける風』
スカイランタンのイベントが行われていた。気球みたいなランタンを空に飛ばすあれだ。
そのイベントの概要に、不思議なことが書かれていた。
『短冊に忘れたいことを書いて、空に飛ばしてしまいましょう』
こういうのって、願い事を書くんじゃなく?
まぁ忘れてしまいたいこともあったし、面白そうだし、何より空を舞うたくさんのランタンは綺麗だろうと、参加することに決めた。
願い事を書いた短冊をランタンに貼り付け、放つ為の会場へ移動する。
みんな恥ずかしかったことでも書いているのか、短冊が見えないよう隠している人が多かった。
日が暮れて、ライトを灯したランタンが一斉に放たれた。カラフルなLEDの灯りに、ヘリウムガスで飛ばされているので、空は様々な色で覆い尽くされた。
なんて綺麗だろう……。
その光景を見ているうちに、短冊に書いたことだけでなく、ランタンを飛ばしたことも、自分がなぜここにいるのかすらも忘れてしまったのだ。
『記憶のランタン』
すっかり肌寒くなってきて、もうすぐ君の出番ですね。
頼りない僕を、いつも助けてくれてありがとう。
僕は、今年どうだったかな? 少しくらいはちゃんと役目を果たすことができたかな?
ここからは君が頑張ってね。僕が言うことじゃないかもしれないけど。
僕は君の季節も楽しみにしてるよ。
また来年会いましょう。
秋より
『冬へ』
月が君を照らしていた。
雲の隙間から顔を覗かせた月が、まるで君だけのスポットライトのように、ぽっかりと。
そんなことがあるのだろうか? 君は月の精のように見えた。
儚く笑う君は、今にも月に帰っていきそうで。
思わずそっと優しく抱き締めた。
『君を照らす月』