川柳えむ

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3/6/2024, 10:40:41 PM

 私達は、いつも――ではないかもしれないけど、よく一緒だった。
 中高と同じ部活で、二人で一緒に組んでいろいろなことをやっていた。
 卒業後は、たまにの連絡だけで、なかなか会えなかったけど、でも、ふとした時にどうしてるかなって考えたりしていた。
 きっと、あなたも、そう思ってくれていたって信じている。お互いに、絆を感じていたって。

 そんなあなたから、久しぶりに「会わない?」と連絡が来た。
 嬉しい。私もそろそろ顔が見たいと思っていたから。
 そうして、久しぶりにあなたに会った。
「最近どう?」
 そんな当たり障りのない話から始まって、昔の話、共通の友達の話、最近はまっているもの、いろいろなことを話した。
 あの頃に戻ったようで、楽しかった。

「――ところで」
 彼女が身を乗り出してきた。
「もっと幸せになりたいと思わない?」
 え、急に何?
 彼女がバッグから何かを取り出した。
「最近はまっているものの一つに、風水があって――」
 突然、百八十度の話題転換。
 バッグから取り出したのは様々なアクセサリーや宝石、そしてパンフレット。
「この先生がすごく素晴らしい人で、その方が運気を流し込んでくださったのがこのアクセサリーで――」

 私はあなたに絆を感じていた。
 あなたも私に絆を感じてくれていた。そう思っていた。
 でも、その絆は、思い込みだったのか。そのナントカ先生に簡単に負けてしまうくらいの、本当は脆い絆だったらしい。


『絆』

3/5/2024, 10:34:47 PM

 疲れた。あまりにも張り詰めすぎて。
 だから、「たまには」と、そう思って息を抜いてみた。
 そしたら、ダメだね。息を抜きすぎた。

「ダメでしょ!」

 博士に怒られた。

「なんで息を抜いたの。風船人間のあなたが息――空気を抜いたら動けなくなるに決まってるじゃない」

 わかってはいた。博士に作られた風船人間の、私の風船のような皮膚に詰まっているのは、空気しかないから。
「たまには」って、そう思っただけなのに。
 息抜きって難しい……。


『たまには』

3/4/2024, 10:30:42 PM

 大好きな君の為に、何だってしてあげたい。
 甘やかし過ぎかもしれない。だけど、それだけ大好きなんだ。
 今日も晩ご飯を用意して、君の帰りを待つ。

「やめてよ」
 君に言われた。
 なんで。どうして。もしかして晩ご飯失敗してる?
「いつもいつもそんなことして」
 もしかして、本当はいつも不味くて、不快にしていたのかもしれない。他のことでも不快にしてたかも。いや、そもそも俺のことが不快とか――
「私だって君の為にいろんなことして甘やかしたいのにー!」
 ――え、そこ?
「たまには私にもやらせてよ! 今日の食器洗いは私がやるからね!」

 大好きな君の為にすることも、大好きな君にしてもらうことも、どちらも心地良い。
 一緒に居る、至福の時間。


『大好きな君に』

3/3/2024, 3:03:42 PM

 雛人形を早く片付けないとと行き遅れるという。そんな話は聞いたことない?
 雛祭りが終われば、もう出番は終了。また来年ね。と、もう用無し扱いみたいで可哀想だ。
 ところで、私の地域は雛祭りが一ヶ月遅れだった。
 三月三日が終わっているのに出していていいの?
 雛祭りが三月三日だということを、いろんな情報から知っていたものだから、そんなことを小さい頃の私はずっと疑問に思っていた。
 まぁそんなわけで立派に行き遅れたわけですよ。あ、は、はははぁー……。


『ひなまつり』

3/3/2024, 2:57:28 AM

 天界から堕とされた。
 元々位の高い天使だった。周りに頼られていたし、真面目にやることをやっていた。何も問題はないと思っていた。
 それが、罠に嵌められた。
 結果、世界には疫病や貧困、争いなど、様々な厄災が広がってしまった。
 取り返しの付かないことをしてしまった申し訳なさや後悔と、なぜこんなことになってしまったのかという疑問、そして恨みや憎しみが心を支配して、ぐちゃぐちゃなまま、天界から堕とされた。
 これからどうしたらいいのか。何もわからなかった。
 ただ、たった一つ心に残ったものがあった。
 ――復讐心。自分を陥れた者へ必ず復讐してやるという固い意志だった。
 それが今の自分を生かして動かす動力源。たった一つの希望である。


『たった1つの希望』

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