私達は、いつも――ではないかもしれないけど、よく一緒だった。
中高と同じ部活で、二人で一緒に組んでいろいろなことをやっていた。
卒業後は、たまにの連絡だけで、なかなか会えなかったけど、でも、ふとした時にどうしてるかなって考えたりしていた。
きっと、あなたも、そう思ってくれていたって信じている。お互いに、絆を感じていたって。
そんなあなたから、久しぶりに「会わない?」と連絡が来た。
嬉しい。私もそろそろ顔が見たいと思っていたから。
そうして、久しぶりにあなたに会った。
「最近どう?」
そんな当たり障りのない話から始まって、昔の話、共通の友達の話、最近はまっているもの、いろいろなことを話した。
あの頃に戻ったようで、楽しかった。
「――ところで」
彼女が身を乗り出してきた。
「もっと幸せになりたいと思わない?」
え、急に何?
彼女がバッグから何かを取り出した。
「最近はまっているものの一つに、風水があって――」
突然、百八十度の話題転換。
バッグから取り出したのは様々なアクセサリーや宝石、そしてパンフレット。
「この先生がすごく素晴らしい人で、その方が運気を流し込んでくださったのがこのアクセサリーで――」
私はあなたに絆を感じていた。
あなたも私に絆を感じてくれていた。そう思っていた。
でも、その絆は、思い込みだったのか。そのナントカ先生に簡単に負けてしまうくらいの、本当は脆い絆だったらしい。
『絆』
疲れた。あまりにも張り詰めすぎて。
だから、「たまには」と、そう思って息を抜いてみた。
そしたら、ダメだね。息を抜きすぎた。
「ダメでしょ!」
博士に怒られた。
「なんで息を抜いたの。風船人間のあなたが息――空気を抜いたら動けなくなるに決まってるじゃない」
わかってはいた。博士に作られた風船人間の、私の風船のような皮膚に詰まっているのは、空気しかないから。
「たまには」って、そう思っただけなのに。
息抜きって難しい……。
『たまには』
大好きな君の為に、何だってしてあげたい。
甘やかし過ぎかもしれない。だけど、それだけ大好きなんだ。
今日も晩ご飯を用意して、君の帰りを待つ。
「やめてよ」
君に言われた。
なんで。どうして。もしかして晩ご飯失敗してる?
「いつもいつもそんなことして」
もしかして、本当はいつも不味くて、不快にしていたのかもしれない。他のことでも不快にしてたかも。いや、そもそも俺のことが不快とか――
「私だって君の為にいろんなことして甘やかしたいのにー!」
――え、そこ?
「たまには私にもやらせてよ! 今日の食器洗いは私がやるからね!」
大好きな君の為にすることも、大好きな君にしてもらうことも、どちらも心地良い。
一緒に居る、至福の時間。
『大好きな君に』
雛人形を早く片付けないとと行き遅れるという。そんな話は聞いたことない?
雛祭りが終われば、もう出番は終了。また来年ね。と、もう用無し扱いみたいで可哀想だ。
ところで、私の地域は雛祭りが一ヶ月遅れだった。
三月三日が終わっているのに出していていいの?
雛祭りが三月三日だということを、いろんな情報から知っていたものだから、そんなことを小さい頃の私はずっと疑問に思っていた。
まぁそんなわけで立派に行き遅れたわけですよ。あ、は、はははぁー……。
『ひなまつり』
天界から堕とされた。
元々位の高い天使だった。周りに頼られていたし、真面目にやることをやっていた。何も問題はないと思っていた。
それが、罠に嵌められた。
結果、世界には疫病や貧困、争いなど、様々な厄災が広がってしまった。
取り返しの付かないことをしてしまった申し訳なさや後悔と、なぜこんなことになってしまったのかという疑問、そして恨みや憎しみが心を支配して、ぐちゃぐちゃなまま、天界から堕とされた。
これからどうしたらいいのか。何もわからなかった。
ただ、たった一つ心に残ったものがあった。
――復讐心。自分を陥れた者へ必ず復讐してやるという固い意志だった。
それが今の自分を生かして動かす動力源。たった一つの希望である。
『たった1つの希望』