ふらわー。

Open App
9/4/2024, 2:54:12 PM

きらめき

…才能。
欲しい。手に届かない。

なんで、あの子がは苦労せず初めてだというのにあんなにできるの?
なんで、僕は沢山の時間と努力をかけてずっと頑張ってるのにあの子に負けるの?

あの子みたいになりたい。
あの子になりたい。
あの子の才能が欲しい。

世界は本当に意地悪。


僕の本気は、君の適当に届きもしない。

こんなに頑張っているのに。


なんであの子はきらめいているの…?
才能の差。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「…あ、」
僕が初めて見たあの子。
「絵描いてるの?」
美術室の鍵をぶら下げて、制服のまま来た僕を、あの子はじっと見つめた。
床に散らばっているぐちゃぐちゃにされた紙。

「そうだけど」
クラスメイトに囲まれながら話すあの子と同一人物か疑うほど冷たかった。
「もうそろそろ下校時間だけど、もうちょっとあるから描いとく?」
あの子は目をそらした。
「いい。もういい」
「そう……」
僕は床に乱暴に投げ捨てられた紙を手に取る。
「あっ、待って!」
その声とともに、紙を開いてしまう。

「岡崎せんせーだ」
僕に唯一、優しく接してくれる先生。
「好きなの?岡崎せんせー」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「岡崎せんせーだ」
“完璧”がふわっと笑う。あ、完璧って笑うんだ…。
夕日の光が完璧の顔を照らしている。

「好きなの?岡崎せんせー」

「そうだったね」
「え?……」
「何その顔。失恋じゃないから」
「あーそうなんだ」
ばかにしてるのかと思ったが、完璧はほっとしたような表情をした。
「あたしってそんなに失恋してそう?」
「分かんない…」
なんだそれ。

「……岡崎先生ねー、好きだったの。今日まで」
「えっ」
「岡崎先生が嫌いになったわけじゃないのよ?」
「だよね!」
完璧は嬉しそうに声を弾ます。
「もっと魅力的な人見つけちゃって」
「岡崎せんせーより…?いないよそんな人」

「いるよ」
あたしの目の前にね。
「とってもきらめいてる人」



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


数年後、少し喧嘩しながらも笑ってじゃれ合っている夫婦が歩いていた。女性の方のお腹には、未来の命が託されている。

これが本当の“きらめき”なのかもしれない。

9/3/2024, 10:32:02 AM

些細なことでも

コオロギの高い鳴き声と、風で揺れる草葉の音。
ふと、思う。冷たい風があっているような気がする。少し寒い。
瞳を開けてみると、カーテンがゆらゆらと揺れている。
「…」
早朝、2時半。
君は僕の近くの椅子に座ったまま、小さな寝息を立てながら寝ていた。
「みなと、満月だよ」
起きない君に僕は語り続けた。
「…月が綺麗ですね」
僕は微笑んだ。
ちょっとおかしくなったけど。


君は、この意味知らないかな。
たぶん、知らないだろうなぁ…。
「いつか気づいてね」
そして、僕は瞳を閉じた。僕の最後である夜の月はとても美しかった。

みなとver.
「青羽…、」
僕は高校2年生になり、初めて知った。
夏目漱石由来の、月が綺麗ですね、の意味。

「届いたよ…ちゃんと、届いた……ッ」
君が死ぬ直前、少しだけ、ぼんやりとだけ、覚えている。「月が綺麗ですね」って、青羽が言ってた。
「僕もだよ…だからまた目を覚まして……ッ!…僕は……僕はぁッ!!」

君にとっては、些細なことなんだろう。
たぶん、叶わない恋と思っていたんだろうから。

「僕にとってはッ!…」



大切な思い出なんだ…。胸が締め付けられるけど、君が僕を愛してくれていたのだから。

9/2/2024, 10:57:57 AM

心の灯火

(今回は小説ではありません。意見みたいな。綺麗事ですね。でも、たまにはいいかなって。私だろうと、綺麗事はいうから)


それは、“自分”が壊れていない。そんな人が持つ、暖かくて優しい光。
心の奥底に潜む、その光は、善なのか。悪なのか。
まだまだ未熟な人間は、1つの答えを決めれないだろう。納得できないだろう。人によって、善と悪は違うのだから。
見えない心の灯火。
でも、それはきっと世界にたった1人だけ……いや、1人を救えれたなら、その灯火は存在した方がいい。
誰かが今、泣いていて、笑っていて、怒っていて、壊れそうで、自殺しようとしていて……。


心の灯火が救うのは、
貴方の心の灯火が優しいから。
貴方の心の灯火が、どんなに否定されたとしても、貴方の心の灯火は、消えないで欲しい。
誰かの心を灯して、自分で自分の心の灯火を守って欲しい。価値のあろうと、ないことだろうと、ただ思う。

貴方に心の灯火で救えなくても、誰かを救おうとするなら、心の灯火はある。
救えない結果になろうと、貴方の心の灯火は隠してもいいから、消えないで欲しい。消さないで欲しい。

綺麗事だけど、これが私の意見なんだ。
未熟で醜い私の心の灯火が、誰かの心を灯すようになりますように。

9/1/2024, 2:36:44 PM

開けないLINE

咲宮 風夏 視点

「ふーりんと同じクラスになれた!」
中学からの親友であるミライと同じ高校を受験して、見事2人で合格できた。
「ほんとだねー」
しかも、前の席がミライ。
「ねー、お前らどこ中ー?」
私とミライが話していると、班が同じの男子2人がこちらを見ていた。
「✘‎✘‎✘‎中だよ〜!2人はっ?」
ミライが勢いよく話にのる。
「俺ら、✘‎✘‎中」
「へー」
私の興味なさげな声を聞くと、隣の男子が眉をひそめる。
「何お前?反応うざ」
「あっそ」

この、名瀬という奴とは、数週間後には、犬猿の仲、とクラス……いや学校中で有名になる程に、仲が悪かった。

「ねぇ、風鈴」
その日の放課後、なぜかミライの隣の席の春坂が話しかけてきた。
「だから、風夏だって…ミライがずっと私の呼び方が風鈴なのが悪いんだ……」
私がぶつぶつ言っていると、春坂が口を開く。
「好きなんだ…」
横を向いているけど、頬が照っているのは分かる。
「あっ、やっぱり〜?!絶対ミライのこと、」
「俺、風鈴が好き!!!」
「…え?」
真っ直ぐな瞳は私を捉えていた。
私は、言葉につまった。だってずっと、春坂はミライのことが好きだと思っていたから。私が春坂に告白されるなんて、思ってもいなかったから。
「春坂……私のどこがいいの?」
何もいいところなんてないのに。
「…最初は、ぶっきらぼうな人だなって思ったよ。……でもさ、沢山の時間を共にしていく内に分かったんだ。美人で頭がいいのに、絶対に人を見下すような態度を取らなくて、人を褒めることが苦手で、優しくて寂しがり屋で、実は泣き虫で……それでも大切な人の為に頑張れてて……」
「あと今みたいに、すぐ照れるとこ」
「てっ照れてなんかっ!」
声が裏返る。私は照れてないんだから。
「俺と、付き合って下さいっ!」
あぁ、春坂、本気なんだ。
「私も好きっ!!!」

水川ミライ視点

「……」
初恋の相手の春坂と、親友のふーりんは付き合った。お似合いカップル。
そして、2回目に恋してしまった名瀬は、ふーりんに片思いしていた。
「あーあっ!ミライもふーりんになれたらなぁ……」
LINEの着信音がなる。
「…ふーりんから?」
通知には途中までしか書かれていない。
【私、名瀬に告白された……。意外すぎない?!】
そこまでしか読めなかった。
「嫌だっ!嫌だよぉ……ふーりんになりたかった…」
布団の上で泣きじゃくる。
親友……そして、強い強い恋のライバルであるふーりんからのLINEが、どうしても開けなかった。
「ごめんねッ、ふーりん……」

8/31/2024, 3:59:19 PM

不完全な僕

僕には、9才の年の離れた、夜斗という弟がいた。
真っ黒で大きな瞳。白色のすべすべな肌。ゆっくりと美しい動作で凛とした声。穏やかで透明な夜斗の心に、全ての人が惹かれていった。

そんな弟が、
愛らしかった。
僕みたいな“不完全”に手を差し伸べてくれたのは夜斗だけだったから。

「ねぇ、夜斗。なんで僕と居てくれるの?」
「えー、お兄ちゃん…」
僕が疑問に思っていたことを口にしてみると、夜斗はむすっ、と頬を膨らませた。
「え、何…?なんかした?」
「したもんっ!」
夜斗は少し不機嫌そうに口を尖らせる。
「だってぇ…お兄ちゃんってさあ………僕のことどう思ってる?」
「好きだよ?」
当たり前。僕の大切な世界にたった一人の弟なんだから。、と僕が真顔で考えていると、夜斗がそっぽを向いて口を開く。
「……お兄ちゃんのこと、僕も好き」
「嬉し〜夜斗好きー!」
「…いつか分かってよね、鈍感」
「え、何を?」
僕が問うと、夜斗は少し微笑む。
「好きの意味」

不完全な僕でも、好いてくれる人はいた。
不完全でも、過ごしてて幸せだなって感じれる。
きっとそれが不完全かどうかより、もっと大切なことだから。

「好き」

Next