ふらわー。

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不完全な僕

僕には、9才の年の離れた、夜斗という弟がいた。
真っ黒で大きな瞳。白色のすべすべな肌。ゆっくりと美しい動作で凛とした声。穏やかで透明な夜斗の心に、全ての人が惹かれていった。

そんな弟が、
愛らしかった。
僕みたいな“不完全”に手を差し伸べてくれたのは夜斗だけだったから。

「ねぇ、夜斗。なんで僕と居てくれるの?」
「えー、お兄ちゃん…」
僕が疑問に思っていたことを口にしてみると、夜斗はむすっ、と頬を膨らませた。
「え、何…?なんかした?」
「したもんっ!」
夜斗は少し不機嫌そうに口を尖らせる。
「だってぇ…お兄ちゃんってさあ………僕のことどう思ってる?」
「好きだよ?」
当たり前。僕の大切な世界にたった一人の弟なんだから。、と僕が真顔で考えていると、夜斗がそっぽを向いて口を開く。
「……お兄ちゃんのこと、僕も好き」
「嬉し〜夜斗好きー!」
「…いつか分かってよね、鈍感」
「え、何を?」
僕が問うと、夜斗は少し微笑む。
「好きの意味」

不完全な僕でも、好いてくれる人はいた。
不完全でも、過ごしてて幸せだなって感じれる。
きっとそれが不完全かどうかより、もっと大切なことだから。

「好き」

8/31/2024, 3:59:19 PM