俺の恋人は、幼さが残る中に大人っぽさもある人。
可愛いし、おっちょこちょいなところも愛らしさが溢れていると思うんだ。
それに細かいところまで気が利くから、空気も読める。読めないふりもするけれど、そこも分かるからこそなんだよね。
何気ない一言がドキッとするんだ。
本人の幼さとは裏腹に、結構ね……こう、なんと言うか出るところは出て、引き締まるところは引き締まっているから大変ナイスバディと言うやつで。
無邪気さにそういうところが隠れてしまうけれど、恋人としては毎日のようにハラハラしています。
それをこっそり先輩に相談する。
「いい子だけど、そんなに心配しなくても大丈夫だと思うぞ」
そうは言いますが、恋人としては心配なんです。
おわり
四八一、フィルター
恋人も私も職場の人達は特別だ。
この都市に来て、独りだった私を雇ってくれた社長達には感謝しかない。
社長は私を娘のように大切にしてくれる。だから私も家族のように思っていた。
恋人ができた時も喜んでくれた。
それは同じ時期にこの都市に来た彼も同じような経験をしていたみたい。
家族のように大切だって言っていた。
だから、彼の師匠にあたる人にも紹介してくれた時は、家族に紹介してくれるようだった。
お互い職場の仲間たちには、それぞれの絆があって、間に入れるものではない。
でも、彼と私にはふたりだけの絆もそこにある。
おわり
四八〇、仲間になれなくて
ポツポツ、ポツポツポツポツ……。
小さく地面を叩く音が聞こえた。
彼女、傘持っていったかな。
俺は窓から灰色の空を見上げる。
少し前に恋人から帰宅の連絡を貰ったばかりだった。
俺はスマホを取り、彼女へ電話をかける。
少しの呼び出し音の後に元気な声が聞こえた。
『はい、どうしましたか?』
「うん。雨、降ってきていたでしょ。傘、ある?」
『あー……ないです』
「迎えに行くよ」
少し息を飲む声が聞こえた。
『ふふ。ありがとうございます。今……』
彼女が今いる場所を教えてもらい、俺は傘と車のキーを持って玄関を出る。
――
車で彼女の指定した場所に向かう。
雨足は強くなっていて、迎えに行くと伝えて良かった。傘が無い状態だったらびしょ濡れになっちゃうな。
彼女反対車線のお店の軒先に雨を避けて彼女は立っていたのを見かけて、迂回して向かい徐行して彼女に近づいた。
雨の中にいる彼女は、肌の白さがより際立って目を惹いた。
ああ、俺の恋人はきれいだな。
おわり
四七九、雨と君
学校をコンセプトにしたカフェができて、それなりに経つ。
彼女の職場に近いから、カフェが始まる前に待ち合わせ場所にさせてもらっていた。
今日もそんな感じで彼女を待つ。
このカフェはガラス張りで教室が外からもよく見える。賑わっているのが見えて楽しいけれど、今はまだカフェは始まっていない。
がらんとしたお店は誰もいない教室みたいで、少しだけ寂しく感じてしまう。
「お待たせしましたー!!」
明るく元気な声が後ろから響く。
振り返ると愛しい彼女が笑顔で俺に向かって走ってきてくれていた。
彼女の顔を見ると一気に胸が暖かくなる。
さっきの寂しさが嘘のようだな。
おわり
四七八、誰もいない教室
出張修理に呼ばれて会社のメンバー数人と依頼された病院に車で向かっていた。
信号が赤になりゆっくりと車が止まる。
早く行ってあげたい気持ちにもなるし、私も早く行きたい。
私の恋人は今から修理に向かう病院に務めているから、仕事をしている彼を少しでも見られたら嬉しいと思ってしまった。
彼の邪魔になるから〝会いに行く〟なんて出来ないけれど、ちょっとだけ見られたら、それで良かった。
くんっと身体に重力がかかる。信号が青になって社長が車を発車させていた。
慣れた街並みを横目に病院に進んでいく。
病院の車両を修理するから、気軽に会えるわけじゃないけれど、彼と同じ場所にいられるだけでいい。
家に帰ればいつでも会えるけれど、職場でちょっと見られる姿は少し特別だよね。
車がゆっくりとスピードを落として止まる。
早く病院に行って修理したいのに、中々進めさせてくれない信号を、思わず睨みつけてしまった。
おわり
四七七、信号