大好きな大好きな彼。
お医者さんだから誰にでも気遣いができて、優しいところがある。
でも誰にでも優し過ぎる人だから、他の人にも好意を持たれていたんじゃないかなって思った。
だから私の想いは心の奥にしまっておくことにしたの。
でも、彼は私を選んでくれた。
強ばった表情で想いを告げてくれて、とても嬉しかった。
私も――と、返した時に見せてくれた笑顔がとても眩しくて。
「あのね」
「うん」
「だいすき」
戸惑いから変わる彼の表情を見て改めて思ったの。
優しさや気遣いとは別に、私がどうしようもないほど惹かれた〝太陽のような笑顔〟が、そこにあった。
だいすき。
おわり
四四一、眩しくて
救急隊の仕事は常に緊張感を持っていなければならない。
救助のプロとしてはそうかもしれない。
でも、本当は普段通りにリラックスした方がいいんだよね。
定期的に訓練もして、その訓練通りに進める。
でも、訓練通りに進むことなんてほとんど無いんだよね。予想外のことにも対応するための知識や訓練も行う。
日々の訓練を思い出しながら待機していると、出動を告げる音が鳴り響く。
緊張が走り心が熱くなる。
すぐに立ち上がって、出動するための支度を始めた。緊張を解すように軽く身体を動かしてから、振り返る。
さあ、行こう。
どんな人も助けてみせる。
おわり
四四〇、熱い鼓動
ちょっと恋人に聞きたいことが出来たけど、どうしようかな。
と、いうのも彼の仕事は救急隊員という、この時期的にも忙しい人だから邪魔をしたくないんだよね。
私はスマホを覗いてから、視線を逸らして天を仰ぐ。
どうしようかな……。
一応、メッセージとして下書きを書き終えて保存している。あとはそれを送るだけなんだけれど。
邪魔になったら困るよね。
気を使う人だから、声掛けてくれるの迷惑になりそうだなと思ったらメッセージを送れなくてモンモンとしていた。
ぐるぐるしつつも、やっぱり送らなきゃダメだと思ってメッセージの下書き欄から送信ボタンを押す。
緊張が走って背中に冷や汗が落ちるけれど、送信したからもう引き返せないので肩の力が抜けた。
ブルルッとスマホが震える。
突然だから驚いてしまったけれど、画面を見たら彼だった。
「もしもし?」
『ナイスタイミングだよー!!』
「え?」
『ちょうど休憩に入ったところでさ。俺も話したかったから嬉しかったー』
いつもよりどこか嬉しそうなのかもと感じるくらいに言葉が弾んでいる。
「うふふ。私も声聞きたかったから嬉しいです」
『俺も!』
いっぱい考えて、モヤモヤもしていたけれど、メッセージのタイミングが合ってたみたいで本当に良かった。
――
俺の彼女は本当にタイミングが良い。
連絡したい時に連絡をくれる。
ちょうどメッセージを入れようかなと思ったタイミングでメッセージが来たから、思わず電話してしまった。
おわり
四三九、タイミング
今日は恋人と休みの日が一緒で、天気が悪くてお部屋デート。買い物も行きたい気持ちはあるけれど、今は少し雨が強くて出かける気にもならない。
気圧も急激に下がっているからか、身体も重く感じて気分も重い。
視線を窓の外に向けると先程より暗さは無くなったけれど、まだしっかり雨は降っている。
「はぁ」
ふわりと頬に何かが触れた。それが彼の手だと気がついて自然と頬擦りしてしまう。
私が猫ならゴロゴロと喉を鳴らしていただろうな。彼の暖かい手が心地よくて、好きと気持ちが溢れてくる。
「大丈夫?」
「ん……」
私はそのまま彼の肩に頭を乗せると、安心感からか息を吐くのと同時に眠りについてしまった。
――
「……ん、……ちゃん」
ゆっくりと目を開けると彼が私の肩をゆっくりと揺らしながら起こしてくれていた。
「ん……」
「外、見て」
彼は指を窓の方に向けていた。
それを追うと雨は上がっていて、明るくなった空には虹が鮮やかに架かっている。
「うわぁ!」
私は窓に飛びついて全体を見渡す。虹を目で追って行くとその端がここから近くに見えて、少しだけ好奇心が湧いて彼に振り返った。
「見に行きませんか、虹のはしっこ」
ワクワクした気持ちを抑えきれず、どうしても口角が上がっちゃう。
彼は満面の笑みで手を伸ばしてくれた。
「探してみよっか?」
「はい!」
おわり
四三八、虹のはじまりを探して
すっかり暑くなった夏。
見上げるのもウンザリするくらいの眩しくて強い光が差し込んで身体中から汗が吹き出る。
喉も乾くんだけれど、救急隊としては夏は仕事が忙しくて気力も減っていた。
休憩時間になってスマホを覗くと恋人からのメッセージが入っていた。
時間はそんなに経っていないみたいだ。
どうしたのかなと思いつつメッセージを覗く。
『今、近くにいます。休憩時間になったら教えてください』
近くにいる?
ああ、でも彼女の仕事的に近くで出張修理の依頼を受けたのかな?
彼女は車に限らず、修理のプロだ。
この都市での信用もしっかりあるから固定客もあると聞いてた。
近くにいるとは聞いても仕事中だったら困ると思って俺は返事を送る。
「今、休憩に入ったよっと」
それを送信すると、すぐにスマホが鳴る。
「わわっ」
俺はすぐに通話ボタンを押して彼女に応えた。
「どしたの?」
『あ、ちょこっとだけ入口に来られませんか?』
「え、いいよ。待っててね」
と彼女に返事をしながらも休憩室からスタッフ入口に向かった。
入口の自動ドアの先に彼女の姿が見えると、彼女も俺に気がついて、俺の大好きな笑顔を向けてくれる。そして同時にスマホの通話を終了させた。
「ごめんなさい」
「ううん、なにかあったの?」
「いえ、本当に近くまで来たから……」
そう言いながら小さいクーラーボックスを差し出した。俺は彼女に視線を送ると、彼女は満面の笑みでうなづいてくれる。
開けると中にはクリームソーダとシュークリームが入っていた。
「差し入れです。お仕事、お疲れ様です」
「うわ、ありがと、嬉しい!!!」
クリームソーダは俺の大好きなもの。
仕事も疲弊していたし、喉も乾いていたから彼女からの気遣いが嬉しくなった。
「あと、私がちょっと会いたかったんです」
ほんのりと頬を赤らめる彼女の笑顔がたまらなくて、胸がときめいてしまう。
「俺も会えて嬉しい」
抱きしめたい衝動にかられるけれど、外も暑いし人目を気になるから出来ない。
けれど、今日の帰りは彼女にお土産を買って帰ろうと思った。
おわり
四三七、オアシス