とある恋人たちの日常。

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3/13/2025, 12:22:39 PM

 
 色素の薄い俺の恋人。
 陽射しに当たると、そのまますり抜けそうだった。
 
「どうかしましたか?」
 
 きらきらした太陽の光を背景に彼女が俺をのぞき込む。
 
「きれいだなって……」
 
 彼女は不思議そうな顔をして、周りを見渡して首をかしげた。
 
「なにがですか?」
 
 そう言いながら首をかしげる。俺言葉は自分のことだと、認識していないようだった。
 
「あまり陽にあたると良くないかもだから、こっちおいで」
 
 そもそも色素が薄いのだから、紫外線に晒されると肌に良くない。
 
 何を言われているのか理解出来ていなくても、俺がそばに来るよう言ったのは分かったので、彼女は俺の腕の中に収まる。
 
 頭を撫でると、透明感のある彼女の髪の毛が柔らかくて心地いい。
 
「君がきれいだって言ったんだよ」
 
 それだけ呟くと、驚いたような空気をまとうけれど、すぐに俺の身体に手を回した。
 
「ありがとうございます」
 
 
 
おわり
 
 
 
三〇一、透明

3/12/2025, 2:03:45 PM

 
「終わった……」
 
 ぐったり。
 家に帰ると、ソファに脱力して座る。
 今日は時々ある隊員が少ないのに、患者がひっきりなしに来る日だった。
 そう、つまりはとんでもなく忙しい日だ!!!
 
「ちかれた〜……」
 
 声すらも力をなくしているけれど、疲れたという言葉だけは溢れ出る。
 
「お疲れ様です」
 
 俺の頭を優しく撫でながら、手作りしてくれたクリームソーダを持ってきてくれた。
 
「疲労回復にクリームソーダです!」
 
 そう言って俺の手にバニラアイスが輝くクリームソーダを渡してくれる。
 シュワシュワのメロンソーダにうさ耳っぽい型を取った小さいチョコレートをバニラアイスに二つ挿してくれていた。
 
「アイスがうさぎぃ……」
「可愛いですよね」
「ありがとぉう……」
「本当にお疲れだ」
 
 彼女が作ってくれたクリームソーダは甘さがちょうど良くて炭酸が喉に心地いい。
 彼女は俺のクリームソーダにのっているアイスをスプーンですくって俺に向けた。その笑顔は慈しみが込められていて、愛しさが身体全体に染み渡る。
 
「はい、あーん」
 
 ああ、どうやら今日は全力で甘やかしてくれるみたい。
 
 俺はそのまま口を開けると、優しくスプーンが口に入る。そうすると濃厚なバニラが口に広がった。
 
「とろける〜」
 
 相当だらしのない顔をしていたみたいで、彼女はくすくすと笑ってくれる。
 
「明日のシフトは?」
「普通ですぅ〜」
「じゃあ早く寝なきゃ、だ」
「うんん……」
 
 正直、もう眠くて気を抜いたら眠ってしまいそうだった。
 
「なら、早くお風呂に入って休んでくださいね」
 
 頑張って頷く。身体は睡魔に身を任せようとしてくるけれど、なんとか奮い立たせる。
 
「はい、頑張ってくださいね」
 
 今日は終わるけれど、また明日が始まる。
 その隣に彼女がいてくれるなら、俺はまた頑張れるよ。
 
 
 
おわり
 
 
 
三〇〇、終わり、また始まる、

3/11/2025, 12:06:31 PM

 
 その言葉は俺の恋人を思い出す。
 手を伸ばしても届かないそれ。
 
 俺にとっても、星はそんな存在だと思っていた。
 
 
「どうしましたか?」
 
 視界に彼女がいっぱい広がる。
 愛しい恋人が目の前に寄り添ってくれていた。
 
「あ、うん……」
 
 手を伸ばして彼女の頬に添えると、嬉しそうに俺の手を取って頬擦りしてくれる。
 
 彼女は今、俺のそばにいてくれるんだ。
 
 星に手が届いた。
 俺だけの星に。
 
 
 
おわり
 
 
 
二九九、星

3/10/2025, 12:50:15 PM

 
「願いが一つ叶うならば何を願います?」
 
 唐突に恋人が俺に向かってそう言った。
 
「突然どうしたの?」
「いや、会社でそんな話になったんです。でも私……思い浮かばなくて……」
 
 てへへと笑いながら、俺の腕に彼女の腕が絡みつく。そして肩に彼女の頭が優しく乗っかった。
 
 俺も少し考える。
 
 願い……か。
 願いと言ってもなあ……。
 
 そのまま彼女へ視線を送る。
 だって一番願ったものは既に手にあるんだ。
 
 ああ、彼女が思いつかなかったのも、それが理由かな。
 
 と、思うと俺は実にしあわせだなと思ってしまった。
 
「あ、俺はあるかも」
 
 ふと思い出したことだ。
 彼女は〝それはなぁに?〟と言わんばかりの瞳で俺を見つめてくる。
 
「怪我なく君のところへ帰ること……かな」
 
 そう伝えて彼女の身体を抱きしめた。
 彼女は少しだけ間を置いてから力強く俺を抱きしめ返してくれる。
 
「私も……私もそれを願います!」
 
 俺は救急隊の仕事をしている。
 何かあった時の救助の仕事は危険が伴うこともあって、それは命の危機もありえた。
 
 だから、俺の願いは『彼女の元へ怪我なく帰ること』だ。
 
 もちろん他人に願うものじゃないけれど、何にでも縋りたい願いだから。
 
 
 
おわり
 
 
 
二九八、願いが一つ叶うならば

3/9/2025, 12:05:34 PM

 
 ため息ばかりついてしまう。
 彼女の笑顔が脳裏に過ぎるんだ。
 
 こんな感情を持っちゃダメって、心の中でブレーキをかけているけれど全然効かない。
 
「どうしましたか?」
 
 俯いた俺に、身体を縮めて見上げてくる彼女。
 あまりにも無垢な表情に胸が高鳴って仕方がない。
 
「なんでもないよ」
「ほんとですか?」
「俺、医者だよ」
「そうでした」
 
 ふふっと笑って立ち上がる。それでも振り向きざまに笑いながら言葉をくれる。
 
「でも……ちょっとツラそうだったから……。大丈夫ならいいんです」
 
 ほんの少しだけあった複雑な気持ちを汲み取ってくれる。
 そんな君だから惹かれるんだ。
 
 嗚呼……。
 
 きみがすきだよ。
 
 
 
おわり
 
 
 
二九七、嗚呼

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