ため息ばかりついてしまう。
彼女の笑顔が脳裏に過ぎるんだ。
こんな感情を持っちゃダメって、心の中でブレーキをかけているけれど全然効かない。
「どうしましたか?」
俯いた俺に、身体を縮めて見上げてくる彼女。
あまりにも無垢な表情に胸が高鳴って仕方がない。
「なんでもないよ」
「ほんとですか?」
「俺、医者だよ」
「そうでした」
ふふっと笑って立ち上がる。それでも振り向きざまに笑いながら言葉をくれる。
「でも……ちょっとツラそうだったから……。大丈夫ならいいんです」
ほんの少しだけあった複雑な気持ちを汲み取ってくれる。
そんな君だから惹かれるんだ。
嗚呼……。
きみがすきだよ。
おわり
二九七、嗚呼
3/9/2025, 12:05:34 PM