とある恋人たちの日常。

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 色素の薄い俺の恋人。
 陽射しに当たると、そのまますり抜けそうだった。
 
「どうかしましたか?」
 
 きらきらした太陽の光を背景に彼女が俺をのぞき込む。
 
「きれいだなって……」
 
 彼女は不思議そうな顔をして、周りを見渡して首をかしげた。
 
「なにがですか?」
 
 そう言いながら首をかしげる。俺言葉は自分のことだと、認識していないようだった。
 
「あまり陽にあたると良くないかもだから、こっちおいで」
 
 そもそも色素が薄いのだから、紫外線に晒されると肌に良くない。
 
 何を言われているのか理解出来ていなくても、俺がそばに来るよう言ったのは分かったので、彼女は俺の腕の中に収まる。
 
 頭を撫でると、透明感のある彼女の髪の毛が柔らかくて心地いい。
 
「君がきれいだって言ったんだよ」
 
 それだけ呟くと、驚いたような空気をまとうけれど、すぐに俺の身体に手を回した。
 
「ありがとうございます」
 
 
 
おわり
 
 
 
三〇一、透明

3/13/2025, 12:22:39 PM