とある恋人たちの日常。

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11/20/2024, 12:51:02 PM

 
『たくさんの想い出がつまった家だ……』
 
 昨日、家に帰ると恋人がカーテンを見ながら、そう呟いていた。
 
 その言葉は次の日になった今でも、俺の心に残っている。
 
 彼女との想い出は、何もかもが宝物だ。
 出会いも、不安になったことも、すれ違いも、それ以上に沢山ある笑いあったことも。全部が幸せな宝物だ。
 
 今日は休みの日で誰もいない。俺はあの時、彼女が触れていたカーテンに手を伸ばす。
 
〝これからも想い出をたくさん作っていこう〟
 
 そう、彼女に告げた。
 
 俺は嬉しくて、口を開けずに目を細めて笑う。
 俺と彼女は少し前から将来の話しをしていた。〝家族になりたい〟という願いを彼女も理解して受け入れてくれている。
 
 部屋全体を見回す。
 
 この家は2LDKで、ふたりで住むには十分だ。でも家族になったら、きっと手狭になることを理解している。だって、家族はふたりから増えていくものなのだ。
 
「宝物、きっと溢れるよ」
 
 
 
おわり
 
 
 
一八八、宝物

11/19/2024, 12:04:27 PM

 
 最近、季節の変わり目な上に寒暖差が激しくて、うまく眠れない。
 彼女を抱き締めていなかったら、もっと眠れないのだろうな。そう思うと、これでもマシな方なのだからタチ悪い。
 
 今晩も寝れるか不安を覚える中、寝室に行くといつもとは違う香りがする。
 
 なんだろう、木々の中にあまやかで、俺には落ち着く香りだった。
 
 部屋を見渡すとサイドテーブルに、ランプのようなものが置かれていた。これはアロマキャンドル?
 
 俺はそのキャンドルに近づいて、その匂いを嗅ぐと、これが香りの元だと分かる。
 
「いい香りだなー」
「良かった、苦手な香りじゃないですか?」
 
 後ろからトレーを持った恋人が入ってきた。俺の言葉に安心したようで、ふわりと柔らかく微笑んでくれた。
 
「はい、どうぞ」
 
 渡されたマグカップの中は透明で……これはお湯かな?
 
 彼女にはそれが聞こえたようで、頷きながら微笑んだ。
 
「白湯です。眠る前にゆっくり飲んでくださいね」
 
「……えっと……俺が眠れてないの、気がついてた?」
「そりゃ隣で寝ているんですから」
 
 当然です。
 そう言っているように見えた。
 
「このキャンドルも?」
「はい! デパート行って買ってきちゃいました!」
「ごめんね。高そう……」
「値段なんて良いんです。ちゃんと眠るのが一番です」
 
 彼女は俺の手に自分の手を重ねる。細くて、柔らかい手が心地いい。
 
「でも俺、君を抱っこしていれば割と安心するんだけど……」
「それじゃ足りたい状態ですよ。今度、マットレスや枕も探してみましょう」
「え、高くない?」
「それでちゃんと眠って、お仕事が安全にできるなら安いものですよ」
 
 穏やかな口調だけれど、真剣な思いが伝わる声だった。
 
「人の命に関わる仕事をしているんですから、ね?」
 
 俺の手をさすってくれながら、有無を言わせない言葉。
 
「そして、ちゃんと私のところに帰ってきてください」
 
 ああ、本当に彼女は俺のことをよく分かってる。そう言われてしまうと、俺は大人しく言うことを聞くしかないんだ。
 
 俺は白湯を時間をかけて飲みきると、彼女の肩に頭を軽くのせて、ぼんやりとキャンドルの日を見つめた。ゆらゆらと揺らめく小さな炎を見ていると、理由はないけれど落ち着く。
 
「眠くなったら、そのまま寝てください」
「ん……」
 
 頭にモヤがかかり、視界がぼんやりとする。この香りは彼女の思いやり。白湯で温められた身体と穏やかに揺れる炎は、俺を心地よい眠りへ誘ってくれた。
 
 
 
おわり
 
 
 
一八七、キャンドル

11/18/2024, 1:05:00 PM

 
 ぼんやりと彼を待ちながら、部屋を見回した。
 
 一緒に住んで……結構経つな……。
 
 目の前に置いてあるマグカップもお揃いで買った。
 
 窓を見ると、一緒に選んで買ったカーテンが目に入る。
 
 ふたりともカーテンなんて何でもいいと思っていたから、高さを知らなくて慌てて家に帰って色々長さを測ったっけ。
 
 自然と笑みが浮かぶ。
 この家にあるものは、ほとんどふたりで選んだから、何もかもが彼との想い出だ。
 
「たくさんの想い出がつまった家だ……」
 
 愛おしい彼との家。
 
「これからも想い出が増える家だよ」
 
 ぼんやりと眺めていたから彼が帰ってきたのに気が付かなかった。
 
「あ、おかえりなさい」
 
 彼へ正面から抱き締めると、彼もいつものように抱きしめ返してくれた。
 
「うん、ただいま」
 
 いつもなら、すぐに離してくれるのにより強く抱き締められる。暖かくて幸せでいっぱいになった。さっきまで、彼との想い出を反芻していたから、私も離れがたい。
 
「これからも想い出、たくさん作っていこうね」
「はい!」
 
 
 
おわり
 
 
 
一八六、たくさんの想い出

11/17/2024, 11:34:34 AM

 
 お風呂に上がって、ホカホカした身体をソファに座って涼んでいた。
 彼女はテレビを付ける訳じゃなく鈴虫の鳴く秋をイメージした音を彼女のスマホから再生する。
 ただ静まり返っているわけでもなく、季節の音に合わせたBGMは心地よくてソファに身体を預けて瞳を閉じる。
 
「ああ、いいねぇ……」
「いいですよね。会社でこんなBGMがいいよって話になって探してみました」
 
 彼女は髪の毛を拭きながら水の入ったコップを二つ置いた。
 
「ありがとう」
「いいえ。お風呂上がりですから、水分取ってくださいね」
「うん」
 
 俺は近くに置いてくれたコップに手を取って、飲むと冷たい水が身体にしみ渡る。音楽も心地よいし、このまま眠りに落ちそうだった。
 
「寝ちゃダメですよ」
「バレた?」
「眠そうな顔してました」
 
 さすがにバレておりますね。
 彼女は立ち上がって髪の毛を乾かしに洗面所へ戻ると、俺は一人取り残された。
 
 と言うか、俺も髪の毛乾かさなきゃな。
 
 そんなことを思いながら、彼女がドライヤーを使い終わるのを待つ。
 
 そういえば、BGMって季節に合わせて色々あるよなーと思ってスマホを取りだした。
 動画サイトで検索してみる。秋の虫の声の他に、もう暖炉の焚き火の音があって驚いた。
 
「うわ、早いなー」
 
 そんなことを思いつつも、気になるのでそれをタップして、彼女のスマホの音より少しだけ小さくして隣に置いた。
 
 秋の鈴虫の声と、暖炉の火を弾く音が合わさってまた心地いい。
 
「わ、焚き火の音が追加されてる!」
 
 ぼんやり聞いていると、髪の毛を乾かして、ふわふわになった彼女が戻って来ていた。
 
「もう、髪の毛乾かさないままウトウトしないでください」
「心地よくって……」
「それは分かりますけど……とりあえず、髪の毛、乾かして来てください」
「はーい」
 
 俺はソファに根を張りかけた腰をあげて、髪の毛を乾かしに洗面台に向かった。
 
 彼女を横目で見ると、俺のと自分のスマホを横並びにさせて、ソファに身を委ねている。
 
 やっぱり心地いいんだろうな。
 
 うーん、暖炉か……。
 
 虫の声はここでも聞けるけれど、暖炉の焚き火の音はそういう訳にはいかない。
 土地土地のルールがあって、当然俺たちの住むここでも暖炉は禁止されている。
 
 俺はドライヤーで髪の毛を乾かしながら、ぼんやりと考える。
 
 冬になったら、暖炉のある別荘に遊びに行ってもいいかな……。
 あ、スノボやりに行ってもいいかも。
 
 そう思うと、早く相談したくて、根元にドライヤーの風を当てて、急いで終わらせて彼女が微睡んでいる居間に戻った。
 
「ねえねえ、冬になったらこんなふうに暖炉の音、聞きに行かない? スノボやりに行く時にそういう別荘探してもいいし!!」
「ふえ!?」
 
 突然、居間に入ってきた俺の声に驚きながらも、ちゃんと考えてくれる。そうして楽しそうと思ってくれたようで、ぱあっと輝く笑顔を向けてくれた。
 
「いいですね! 行きたいです!!」
 
 実際、スノボじゃなくても、彼女と暖炉の火をぼんやり眺めるとか、のんびり話をするとか、そんな時間だっていい。
 
 もう少し先になるけれど、冬の到来が楽しみになった。
 
 
 
おわり
 
 
 
一八五、冬になったら

11/16/2024, 12:02:27 PM

 
 謎解きゲームに職場のメンバーで行くことになった。急な話だったから、一緒に住んでいる彼女にメッセージを送ろうとスマホを取り出す。
 
『ごめん。今日、職場のみんなと遊ぶことになったから遅くなるかも』
 
 メッセージを送ると、そんなに時間をおかずに返事が返ってきた。
 
『分かりました。うちの職場でもそんな話が出たので遊びに行きますね。気をつけて行ってきてください』
 
 最後の一言が嬉しくて顔がニヤついてしまう。俺も同じ気持ちだと伝えたくて、『そっちもね。楽しんで』と返事をした。
 
「おーい、行けそう?」
「問題ないー!」
 
 声がかかったから、返事をする。誰かの車で行こうかなと思ったけれど、帰りが手間になるから、各々の車かバイクで移動することになった。
 
 俺はバイクに跨って会場に向かう。会場はとあるお店。何度か謎解きゲームをした実績のあるお店だから、店に着くまでのワクワクが半端なかった。
 
 店に着いてみんなで集まって受付をすると、後ろの方から聞き覚えのある声が耳に入った。
 
「あれぇ! 救急隊の人達やんかー!!」
 
 振り返ると恋人の勤め先の社長さんと他にも……ってことは……。
 
 少し背伸びして社長さんの後ろにいる人達を確認すると楽しそうに笑っている恋人の姿を発見した。
 
 やっぱり!!
 
 彼女も俺を見つけて驚いた顔をしていた。そして、周りが盛り上がっている中、自然に俺のそばへ来てくれる。
 
「謎解きに来たんですね」
「そう。なんか行きたいねーって盛り上がっちゃって……」
「私たちのところもですよ」
 
 そう、小さく話していると、受付している謎解きのゲームマスターである店主が提案をする。
 
「この人数だし、チーム戦にしたらどうかしら?」
 
「面白そう!!」
「ほな、会社でチーム分けやな!」
 
 会社ごとのチーム分けとなり、周りが楽しそうに盛り上がる中、俺たちはお互いをちらりと見つめる。
 
「はなればなれですね」
「今度、別の謎解きがあったら一緒に行こう」
「はい!!」
 
 そして、彼女は俺に軽く手を振って職場のみんなの元へ戻って行った。
 
 頑張るぞー……と意気込んだ後に気がついた。
 俺は彼女と謎解きに行ったことがある。ぽやぽやして頭の回転が悪いように見えていて、そんなことはない彼女。あの時の謎解きを解いたのはほとんど彼女で……。
 
 やばい!
 知恵を捻り出さないと絶対に勝てないぞ!
 今度は役に立つぞと自分を鼓舞して、チームメンバーの元へ戻った。
 
 
 
おわり
 
 
 
一八四、はなればなれ

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