とある恋人たちの日常。

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9/28/2024, 12:13:14 PM

 
 上司にあたる人が、病院で使う車やヘリ全部の修理を俺の恋人が務めている会社に依頼した。
 
 上司は上司同士と言うか、彼女の会社の社長と仲が良く、腕も買っているため割とよく頼む。
 今回は台数も多いので、人数を連れて出張で修理に来てくれた。その中には俺の恋人もいる。
 
「よっしゃ、みんな直すでぇ!!!」
「「「おー!!!」」」
 
 社長さんの掛け声で、修理が開始された。
 
 ――
 
 もうすぐで全部の修理が終わる。
 彼女の担当している車も修理が終わり、他の社員自分の担当していた修理が終わると、自然と集まって談笑していた。
 
 最後の修理が終わって、上司が支払いをして帰る準備をしている時、彼女が俺の元に来てくれた。
 何かを言うわけではなく、ただ隣に立って寄り添ってくれる。
 
 どちらからともなく、身体で手を隠しながらお互いの指が絡み合う。大好きな彼女の仕草に心が暖かくなりながら、身体も少し軽くなった気がした。
 
 どこかくすぐったい気持ちのまま、彼女に視線を送る。すると当たり前のように彼女と目が合うものだから二人して笑ってしまった。
 
「私も充電」
 
 そう微笑むと、指が離れて彼女は会社の人たちの元へ戻っていった。
 そして楽しそうに社長さんの車に乗り込んで帰っていく。
 
 柔らかく温かい感触が抜けていくのはほんの少しだけ寂しさを覚えた。
 けれど、そう。
 別れ際に指が絡み合った瞬間、確かに俺の心も充電された。
 
 
 
おわり
 
 
 
一三五、別れ際に

9/27/2024, 1:17:00 PM

 
 ほんの少し前まで綺麗な青空を見ていたのだが、灰色の雲が覆い始める。
 嫌な予感を覚えた青年は、恋人の手を取りカフェへ促した。窓際の席に座った頃、更に空の色合いは暗さを増していた。
 
 ぽつ、ぽつぽつ……。
 
「わあ……雨降ってきましたね……」
 
 彼女はスマホを取り出して、天気予報を覗き込む。
 
「一時間くらいて止みそうです」
 
 天気予報アプリの画面を青年に見せつけながら、屈託のない笑顔を向けてくれた。
 
「出かけられなくなっちゃったね」
 
 青年は視線を外に向けながら声のトーンを小さくして囁く。それを見た彼女は青年の手に自分の手を重ねた。
 
「通り雨ですから、止んだら続きのデートをしましょ。それまではカフェデートです!」
 
 優しく微笑む彼女に、心が暖かくなるのを感じながら、手のひらをひっくり返して彼女の指と指の間に自分のそれを通した。
 
「そうだね。時間はあるんだからゆっくりしていこう」
 
 彼女と一緒にいる時間、それは変わらないのだから。
 
 
 
おわり
 
 
 
一三四、通り雨

9/26/2024, 11:13:10 AM

 
 普段から隣に座る恋人。今日は俺の肩に頭を乗せて、腕を絡めながらテレビを見ている。
 
 なんだろう。
 この感じ、久しぶりだなー……。
 
 彼女の温もりが心地好くて、俺も彼女の頭に寄りかかる。
 
 気持ちいいなー。
 
 あ、そっか。
 滲むような汗が吹き出るんじゃない。この暖かい体温が安心感を覚え、彼女の身体を抱き寄せていることに気がついた。
 
「どうしたんですか?」
 
 俺が身体で反応してしまったようで、彼女が不思議そうな声をあげてくる。俺は彼女の頭を優しく撫でた。
 
「秋めいてきたなって思って」
「そうですね!!」
 
 パッと微笑んだ彼女は、正面から俺を抱き締めてた。
 
「ぎゅーってしても汗いっぱいになりませんね!」
 
 
 
おわり
 
 
 
一三三、秋🍁

9/25/2024, 11:38:05 AM

 居間でぼんやりと飲みものを飲んでいると、庭から楽しそうな声が響き渡った。
 声に導かれて視線を送ると、窓から見えたのは恋人と幼子だった。
 
 幼子は知り合いの子で、どうしても手が離せない知り合い夫婦の代わりに俺たちが面倒を見ていた。
 
 幼子が、両手を広げた恋人に向けてよちよち歩いては彼女の胸に飛び込んでいる。
 
 彼女の口元が、「よくできました!」と抱きしめている姿がとても微笑ましくて。
 
 いいな、あの姿。
 
 まだ恋人……けれど、いつか。
 この景色を家族として見たいな。なんて思ってしまった。
 
 
 
おわり
 
 
 
一三二、窓から見える景色

9/24/2024, 11:30:51 AM


 深夜、喉が渇いて目を覚ます。
 近くに置いてあったペットボトルに手を伸ばして、水を口に含んだ。
 
 隣で眠っていた彼女が起きないのに安心しながら、俺はもう一度彼女を後ろから抱きしめた。
 
「大好きだよ」
 
 すいよすいよと眠っている恋人に、小さく囁いた。
 
 形の無い気持ちだけれど、俺の中には明確にあった。
 お互いを想い合う、なんて奇跡がここで起こっているんだ。
 
 縋るように彼女を抱きしめると、彼女の独特の甘い香りと、一緒に使っているシャンプーのにおいが鼻をくすぐる。それが俺に安心感を与えてくれる。
 少しずつ全身の力が抜けていくのと同じく、俺の意識も少しずつ遠くなっていく。
 
 ああ、君を好きになって良かった。
 
 
 
おわり
 
 
 
一三一、形の無いもの

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