ほんの少し前まで綺麗な青空を見ていたのだが、灰色の雲が覆い始める。
嫌な予感を覚えた青年は、恋人の手を取りカフェへ促した。窓際の席に座った頃、更に空の色合いは暗さを増していた。
ぽつ、ぽつぽつ……。
「わあ……雨降ってきましたね……」
彼女はスマホを取り出して、天気予報を覗き込む。
「一時間くらいて止みそうです」
天気予報アプリの画面を青年に見せつけながら、屈託のない笑顔を向けてくれた。
「出かけられなくなっちゃったね」
青年は視線を外に向けながら声のトーンを小さくして囁く。それを見た彼女は青年の手に自分の手を重ねた。
「通り雨ですから、止んだら続きのデートをしましょ。それまではカフェデートです!」
優しく微笑む彼女に、心が暖かくなるのを感じながら、手のひらをひっくり返して彼女の指と指の間に自分のそれを通した。
「そうだね。時間はあるんだからゆっくりしていこう」
彼女と一緒にいる時間、それは変わらないのだから。
おわり
一三四、通り雨
9/27/2024, 1:17:00 PM