彼の見た目は、男性なのに愛らしさがあって、楽しいことが大好き。誠実さと、優しさ、何よりも面倒見の良さもあって……色々な女性から好意を寄せられている。
声をかけてくれるのは、心配してくれるから。
それでも、こっちを見てくれるのが嬉しかった。
遠くから見ていると、女性に囲まれることも多い彼。みんなに愛されているのも、その視線に本物の好意があるのも分かってた。
胸が痛い。
でも、大好き。
この想いは、彼を困らせてしまうかもしれない。
だから、言葉にしちゃダメ。
でも、大好き。
ずっと気持ちを押し殺した。
彼に笑って欲しかったから。
困っているなら助けたい。
いつも助けてくれるんだもん。
ほんの少しでも、優しさを優しさで返したい。
私はそれでいいって言い聞かせた。
そんなふうに思っていたのに。
呼び出されて、話をするうちに好きな人の話になった。
好きな人がいると言われて、胸が痛かった。
でも、彼が告げたのは……。
耳まで赤くして、伝えてくれたのは……。
嬉しくて、涙が溢れた。
戸惑いながら、優しく抱きしめてくれる彼に、自分の気持ちを告げた。驚いた顔をされたけれど、お付き合いすることになった。
「付き合っているってみんなに知られたら嵐が起こりそう……」
項垂れる彼の言葉に、驚いてしまった。
「どっちがですか!?」
モテるの、知っているんですよ?
そう視線で伝えると、手を繋いで笑ってくれる。
「まあ、どんな嵐が来ようとも、俺は君を離す気ないからね」
その言葉に嬉しくて、私も挑戦的に微笑んだ。
「私もですよ!」
おわり
お題:嵐が来ようとも
今日はデパートに買い物へ来た。
それというのも、今度、この都市でお祭りがあり、その浴衣を探しに来たのだ。
どんなのがいいか悩みはするものの、彼女がどんな浴衣を選ぶのか楽しみだった。
「どうしようかなー」
彼女が色とりどりの浴衣を、ひとつひとつ見ていく。
「色は水色?」
「はい!」
彼女は肌色だけではなく、全体的に色素が薄い。だから白メインの浴衣よりかは、水色や藍色の浴衣の方が可愛い気がする。
青年がそんなことを考えている横で、彼女は楽しそうに浴衣を選んでいた。
彼女が見ているところとは少し別のところに、青年は足を向ける。そこは華やかな髪飾りが並んでいた。
その中に、大きな水色の花の髪飾りがあった。
一番大きな水色の花の周りに、薄い黄色やクリーム色の小さい花々。キラキラした石も付いており、照明が反射して眩い。そして結紐も使われており、かなり手の込んだものだと、アクセサリーに詳しくない青年にも分かる。
彼女の髪は短いから、垂れ下がった結紐はとても際立つ。だからこそ、この髪飾りを横に挿したら、華やかさが増しそうな気がした。
青年はその髪飾りを手に取り、彼女の元へ向かう。
「どうしましたか?」
首を傾げる彼女をよそに、青年は彼女の耳の上にその髪飾りを見立てる。
「かわいい」
自然とこぼれた青年の言葉に、ふたりで驚き頬を赤らめる。
「あ、いや、似合いそうだなって……」
慌てて言い訳をするが、今見立てた時の彼女は、自然と言葉が落ちるほど愛らしいと思った。
「ねえ。この髪飾り、俺がプレゼントするよ。だから、これに合う浴衣にしない?」
青年は甘えた声でおねだりしてみる。この髪飾りを付けた浴衣姿の彼女を見たいのだ。
彼女は、「仕方ないですね」とくすくす笑ってくれた。
「この髪飾りに合う浴衣を一緒に探してくださいね」
そう微笑んでくれる彼女に頷きながら、一緒に浴衣を探した。
お祭りの日の当日。
浴衣姿は可愛いだけではなく、とても艶やかだということを、青年は初めて知ることになる。
そして、選んだ髪飾りは、彼女の愛らしさに拍車をかけ、家から出したくないかも……という気持ちで溢れることとなった。
おわり
お題:お祭り
夏はキューピッド達が、日々仕事に追われる季節。一夜の恋から、本当の恋に発展することもある時期なのだが、日々育んでいる恋もある。
一人のキューピッドは、以前、神様が偶然に依頼をして、出会った男女を見ていた。
それは救急隊の青年と、不器用な女性。
二人とも異性に好意を持たれるタイプだけれど、本当に求めるものはお互いなのを知っていた。
偶然に背中を押してもらったけれど、さらに踏みだすものが欲しい。
そう思ったキューピッドは、自分の持つ弓に手をかける。
すると、キューピッドが居たところに影が落ち、神様がキューピッドの目の前に降り立った。
「あの二人に手出しは無用だよ」
神様は茶目っ気たっぷりにウィンクをしてキューピッドの手を止める。
「ほら、ごらん」
神様がその美しい手でキューピッドの視線を二人に導く。
彼女は不器用ながらに青年の車を直しつつ、当たり前に のように彼を尊重している。
彼はその様子に驚きつつ、心に明かりが灯っているのが見えた。
青年は彼女に、「遊びに行こう」と声をかけると、今度は彼女の心に明かりが灯って、薄かった糸が少しずつ濃くなっていく。
「ね、君が手を貸す必要は無いよ。他の恋の背中を押してあげておくれ」
キューピッドはひとつうなづくと、神様に一礼をしてから飛び立った。
「あの二人は大丈夫だから」
おわり
お題:神様が舞い降りてきて、こう言った
夕飯後、まったりとソファーに座っていると、彼女から抱き締められた。
なにごとかと思って慌てたけれど、落ち着いて優しく抱き締め返す。
「どうしたの?」
彼女はぎゅうっと強く抱き締めながら囁いた。
「わたしの……」
それだけ?
と言うか、この『わたしの』は俺のこと?
ああ、なるほど。
何があったかは分からないけれど、全力の甘えモードに入っていることは分かった。
普段、遠慮して甘えることがない恋人が、時々全力で甘えてくるこのモードが俺はたまらなく好きだった。
本当に相手を思って自分を押し殺すタイプの彼女が、全力の甘ったれを行使する。不安が解消されていく瞬間だ。
「俺は君のものだよ」
甘えモードには、甘さを込めた言葉が効く。だから、俺も彼女に甘く囁いた。
「付き合い始めた頃に、あなたを好きな人がいたら、私はその人のために退けた」
「うん」
「でも……もう無理。今は退けない」
彼女が顔を上げて俺をじっと見つめる。目の端に光る雫が頬に流れた。
「退かれたら、俺が困っちゃう」
「ん……」
「まあ、退かれても、俺が捕まえに行くからね」
彼女に安心して欲しくて、そう言ってから再び強く抱き締めた。
後で『甘えてごめんなさい』と言われてしまう、彼女の甘ったれモード。
実のところ、俺にはただのご褒美タイムなんだよな。
おわり
お題:誰かのためになるならば
「私を閉じ込めておきたいって思ったこと、ありますか?」
不意に、恋人から問われた質問に言葉を失った。中々に重い質問に思う。
「うーん、どうだろう……」
俺は視線を逸らしながら、はぐらかす言葉を探す。だって、思ったことあるもん。
「思ったこと、ありますか?」
なんでそんなふうに思ったのか分からないけれど、誤魔化しはきかない気がした。
俺は大きくため息をついて、恋人をしっかり見つめた。
「あるよ」
意外だと、彼女の表情は語った。
苦笑いしながら、俺は言葉を続ける。
「だって、自分が目を引くほどに可愛いって分かってないでしょ」
「可愛くないですよ」
「ほら分かってない」
彼女は不服そうに俺を見上げるけれど、俺だってこれは譲れない。
「可愛いし、スタイルだって良いんだよ」
俺が本当に好きになったのは、きみの優しさ。でも、それは言葉にしない。これは俺だけが知っていればいいんだ。
「そっちだって、モテるじゃないですか」
「俺のはモテるんじゃなくて、からかわれているだけ!」
彼女の周りの異性の視線を見れば分かるよ、俺と同じ熱を持って見ていることくらい。
だけど、彼女たちは違うもん。
「鈍感です!」
「どっちが!?」
ぷくぷくに頬を膨らませた彼女。
俺は、その頬を人差し指で押して萎ませる。
「ぶー、なにするんですか!?」
俺はその表情に笑ってしまった。
「いや、やっぱり可愛いな〜って」
「からかってます?」
彼女は少し不満そうに俺を見ているけれど、本気で怒っていないのは分かってる。
「からかってないよ」
くすくす笑ってしまったけれど、改めて彼女をしっかり見つめた。
「実際にそんなことはしないけど、閉じ込めたいと思うくらい、好きってこと」
おわり
お題:鳥かご