とある恋人たちの日常。

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6/10/2024, 12:54:06 PM

「ふぁあふっ……うーん……どうしようかな……」
 
 青年はソファに転がって、大きな欠伸をしつつ、唸りをあげていた。
 
「んもう、どうしたんですか!? 邪魔ですよ、座れません」
「ふぁい」
 
 青年は身体を起こして、いつもの定位置に座り直す。恋人は両手に持っていたグラスをローテーブルに置いて、彼の隣に座った。
 
「なにを考えていたんですか?」
「明日の休み、どうしようかな〜って」
 
 前々から約束していた。今度、休みが一緒になったらどこかに行こうと。
 ふたりでデートに行きたいと言われていた。
 
「行きたいところはないんですか?」
「ある! たくさん!!」
 
 パッと、勢いつけて彼女に振り向いた。
 
「バスケ、テニス、ボーリング、釣り、それに他にも……」
 
 挙げればいくらでも出てくる。
 付き合う前から遊んでいたけれど、新しいことだけじゃなく、同じことをやっても楽しい。
 
「なにしたい?」
「うーん……」
 
 彼女はじっと青年を見つめる。彼女は彼女で思うところはあるようだった。
 唐突に彼女は青年の両目の下をなぞる。
 
「明日は家でごろごろしましょう」
「へっ!?」
「家で、いちゃいちゃしたいです!」
 
 頬を赤らめつつ、満面の笑顔でそう言う彼女。てへへと、照れ笑いをしながらソファから立ち上がって席を外す。
 
 青年も耳が熱くなる。彼女の笑顔が愛らしかったからなのはもちろんなのだが……。
 
 あれは……バレてるな。
 
 青年が一番欲しいもの。
 彼女とゆっくりとした、休みの時間。
 
 
 
おわり
 
 
お題:やりたいこと

6/9/2024, 11:18:37 AM

 眩しさに負けて、眠りの海から這い上がる。ボンヤリと目を開けると朝日が目に入った。
 肩には重みがあり、視線を送ると恋人が無防備な顔で眠っている。
 
 えっと、状況を整理しよう……。
 
 彼女を起こさないように、天を仰ぐ。
 
 昨日は、彼女と色々話して盛り上がって、盛り上がって……その勢いで寝たのか。
 どれだけヒートアップしたんだろう、俺たち。
 
 さすがに彼女を起こそうと、身体を揺らす。
 
「起〜き〜て」
「うう……ん……」
 
 彼女が伸びをしながら、ゆっくりと身体を起こす。
 
「今、何時ですかぁ……」
「八時過ぎだね」
 
 まあ、そこまで寝坊したわけではないが、寝方がまずかったな。
 
 俺も彼女に習って身体を伸ばす。
 
「うわ、身体がバッキバキだ」
「頭痛いです……」
 
 彼女はまだ微睡んだ中にいるのは分かった。ぽやぽや状態の彼女を無理に起こしてもな……。
 
 まだ、目が開ききらない彼女を後ろから抱きしめ、誘導してもう一度ソファに座らせる。そのまま俺に寄りかからせた。
 
「どうしたんですか?」
「五分だけ、ね」
 
 まだ身体が起ききらないだろうから、朝日を浴びてゆっくり目を覚まさせようと思った。
 
「起きたら、朝ごはん食べて、身体を動かしに行く?」
 
 外に視線を送ったまま、気にせず声をかける。
 
「いいですね」
 
 彼女の声は、少しずつ覚醒してきていることを伝えてくれた。
 
 のんびり、のんびりと。
 朝日の温かさ、彼女の温もりを両方感じながら、身体と心の目を覚ましていく。
 
 ゆっくり、ゆっくりと。
 
 
 
おわり
 
 
お題:朝日の温もり

6/8/2024, 11:19:17 AM

 視界が歪んだ気がした。
 
 大きな事故から発展して事件になった。
 それは彼女の勤め先の近くて、彼女は巻き込まれた可能性が高いと冷たい汗が背中に流れる。
 
 俺はスマホを見る。
 席を外して連絡したい気持ちがあったけれど……――
 
「なにしている、早く準備しろ!」
「はい!!」
 
 隊長からの声がかかる。いつも緩めな職場だが、こうなると一気に緊張感が増す。
 
 防護服に袖を通しながら、その短い時間で頭をフル回転させる。
 
 彼女のことは確かに気にはなる。でも、一瞬抜けてしまった時間で、助けられるものが助けられなかったら?
 それを彼女は〝よし〟としてくれるだろうか。
 胸を張って彼女に会えるだろうか。
 
 パチンとボタンを留めた瞬間、気が引き締まる。
 
 俺は――救急隊だ。
 
 医療道具を肩に担いで、ヘリに乗った。
 
 
 
 結果として、彼女は事故に巻き込まれていなかった。
 でも、ギリギリなところではあったらしい。
 
 家に帰って、迷ってしまったと言う話しを彼女にこぼした。すると背中から抱きしめてくれた。
 
「それでいいんですよ」
 
 そう笑ってくれる彼女に、心が軽くなった。でも心に刺さるトゲは抜けきれない。
 
「でも、優先にはできないよ」
「ここで優先にされたら、私、怒っちゃいますよ」
 
 そこ、怒るの?
 
 そう驚いて、彼女に視線を向けた。抱きしめる腕の力を抜いて正面から笑顔を向けてくれる。
 
「私は、お仕事をしている姿が好きなんですよ」
 
 屈託のない笑顔は、その言葉が本当だと教えてくれる。
 
 俺も。
 俺も、そう言い切れる君だから、好きなんだよ。
 
 
 
おわり
 
 
お題:岐路

6/7/2024, 12:03:50 PM

 黄緑色の炭酸、その上にはバニラアイス。ちょんと乗る鮮やかなさくらんぼ。
 ふたり、共通の好きな飲み物であり、思い出の飲み物。
 
 元は青年が好きで集めていた飲み物。それを色々な人に配っていた。彼女もその一人だった。
 
 今では――
 
 ちらりと視線を向けるのは、正面にいる恋人。
 
 視線を感じたのか、彼女もこちらを見つめてくる。ふわりと優しい微笑みも一緒に。
 
「どうしたんですか?」
「ううん」
 
 ぼんやりと彼女への視線を逸らさないまま。
 
「ど・う・し・た・ん・で・す・か?」
 
 笑顔はそのまま崩さず、少しだけ強い口調で、青年に声をかけてくる。
 
「本当になんでもないんだ」
 
 からからと、クリームソーダをかき回しながら視線をクリームソーダに向けた。
 
「そばに居てくれて、嬉しいなって」
 
 彼女の手が伸びて、青年の手の上に重ねられる。
 
「ふふ、私もです」
 
 改めて、青年は彼女に視線を送る。
 色々な人が自分の気持ちを押し付けてくる中で、青年の気持ちを考えてくれる人。いつしか惹かれ、想いを告げた人。
 
 この先。何があっても、ずっとそばに居て欲しい人。
 
 
 
おわり
 
 
お題:世界の終わりに君と

6/6/2024, 11:21:49 AM

 嫌だ、嫌だ、嫌だ。
 なんで、こんなことになったんだよ。
 
 この都市は、楽しいこと全振りなのは分かっていたけれど、そのお鉢が回ってきた。と、思う。
 
 たった一日のレディースデーを作るのは良い。
 でも、それを女性へのサービスではなく、職員を全員女性にするサービスって、どう考えてもおかしいでしょ。
 
 それが罷り通る職場だし、都市だから怖い。
 
 俺は金髪のカツラに、フリルのワンピース。化粧は別の職場の女性陣が全力を向けてくれた。それはもう楽しそうに……。しかも徹底的にとムダ毛処理までされた。本当に泣きそうです。
 
 確かに。格好良いか、可愛いかで言われると、可愛い方の部類に入るとは思う。でも、こんな姿をしなきゃいけないのは嫌だー!
 なにより、彼女にこんな姿を見られたくない!
 
 そんなこと思うけれど、彼女はこういうお祭りデーの時にこそ、お店に来ない。
 だから大丈夫だろう、多分。
 
 カランカランと、お店のドアの音が響く。
 職員は一斉にお出迎えの声を出した。
 
「「「いらっしゃいませー!」」」
 
 来店したお客さんの顔を見て、俺は固まった。
 彼女ご来店。しかも職場の友人たちと。
 
 他の店員を見て笑いつつ、俺と目が合う。そうして、そばに来てくれた。
 
「可愛いですよ。あとでサービスしてくださいね」
 
 よく表情の変わるタイプの彼女とはいえ、ここまでの笑みは早々ない。それほど嬉しそうかつ、楽しそうな微笑みを俺に向けて言ってくれた。
 
 ほんと、最悪だ。
 見られたくなかった。
 俺は、彼女にだけは格好良いって言われたいのにー!!
 
 
おわり
 
 
 
お題:最悪

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