黄緑色の炭酸、その上にはバニラアイス。ちょんと乗る鮮やかなさくらんぼ。
ふたり、共通の好きな飲み物であり、思い出の飲み物。
元は青年が好きで集めていた飲み物。それを色々な人に配っていた。彼女もその一人だった。
今では――
ちらりと視線を向けるのは、正面にいる恋人。
視線を感じたのか、彼女もこちらを見つめてくる。ふわりと優しい微笑みも一緒に。
「どうしたんですか?」
「ううん」
ぼんやりと彼女への視線を逸らさないまま。
「ど・う・し・た・ん・で・す・か?」
笑顔はそのまま崩さず、少しだけ強い口調で、青年に声をかけてくる。
「本当になんでもないんだ」
からからと、クリームソーダをかき回しながら視線をクリームソーダに向けた。
「そばに居てくれて、嬉しいなって」
彼女の手が伸びて、青年の手の上に重ねられる。
「ふふ、私もです」
改めて、青年は彼女に視線を送る。
色々な人が自分の気持ちを押し付けてくる中で、青年の気持ちを考えてくれる人。いつしか惹かれ、想いを告げた人。
この先。何があっても、ずっとそばに居て欲しい人。
おわり
お題:世界の終わりに君と
6/7/2024, 12:03:50 PM