とある恋人たちの日常。

Open App

 嫌だ、嫌だ、嫌だ。
 なんで、こんなことになったんだよ。
 
 この都市は、楽しいこと全振りなのは分かっていたけれど、そのお鉢が回ってきた。と、思う。
 
 たった一日のレディースデーを作るのは良い。
 でも、それを女性へのサービスではなく、職員を全員女性にするサービスって、どう考えてもおかしいでしょ。
 
 それが罷り通る職場だし、都市だから怖い。
 
 俺は金髪のカツラに、フリルのワンピース。化粧は別の職場の女性陣が全力を向けてくれた。それはもう楽しそうに……。しかも徹底的にとムダ毛処理までされた。本当に泣きそうです。
 
 確かに。格好良いか、可愛いかで言われると、可愛い方の部類に入るとは思う。でも、こんな姿をしなきゃいけないのは嫌だー!
 なにより、彼女にこんな姿を見られたくない!
 
 そんなこと思うけれど、彼女はこういうお祭りデーの時にこそ、お店に来ない。
 だから大丈夫だろう、多分。
 
 カランカランと、お店のドアの音が響く。
 職員は一斉にお出迎えの声を出した。
 
「「「いらっしゃいませー!」」」
 
 来店したお客さんの顔を見て、俺は固まった。
 彼女ご来店。しかも職場の友人たちと。
 
 他の店員を見て笑いつつ、俺と目が合う。そうして、そばに来てくれた。
 
「可愛いですよ。あとでサービスしてくださいね」
 
 よく表情の変わるタイプの彼女とはいえ、ここまでの笑みは早々ない。それほど嬉しそうかつ、楽しそうな微笑みを俺に向けて言ってくれた。
 
 ほんと、最悪だ。
 見られたくなかった。
 俺は、彼女にだけは格好良いって言われたいのにー!!
 
 
おわり
 
 
 
お題:最悪

6/6/2024, 11:21:49 AM