初心者太郎

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3/10/2026, 12:59:09 AM

—僕の今日をいつか君に—

僕には、弟がいる。年子のかわいい弟。
小さい頃は、毎日公園で遊んだね。

『3月10日 火曜日 (くもり)
 今日は、友達と遊園地で遊んだ。』

でも三年前から、弟は家からいなくなってしまった。
学校からの帰り道に、交通事故に遭ったのだ。それから眠ったように、病院で横たわっている。

『ジェットコースターには乗れないって、何回も何回も言ったのに、友達に無理矢理乗らされた。』

僕は、今日が明日には過去になる。
でも弟は違う。三年前から時が止まっているんだ。

『怖かったけど、正直楽しかった。いつか、弟とも一緒に遊園地に行けますように。』

僕の過ぎ去った日々が、弟の空白の時間を埋められるように、今日も日記に記しておこうと思う。

『きっと、家族みんなで行けたら楽しいだろうな。』

最後に、僕と弟が一緒に遊んでいる姿を想像しながら、絵を描いてみた。

お題:過ぎ去った日々

3/9/2026, 2:10:36 AM

—二人だけの世界—

この世の中にはお金持ちとそうじゃない人間で二極化している。僕は間違いなく後者だ。

「今日はあたし、行きたい場所があるの」と彼女は言った。

グレーのスカートと真っ白のニットは、シンプルで落ち着いた上品さがある。

それに比べて僕はどうだ。
ところどころ破れたジーンズに、白い無地のTシャツ。
彼女は「気にしない」と言う。
けれど、どうしても彼女と比べてしまう。

「どこへ行くの?」
「まだ内緒」彼女は人差し指を口にあてた。

彼女に連れられて、十分ほど歩いた。
本当ならタクシーでも拾いたい。パンプスを履いた彼女に、あまり歩かせたくないから。

公園の前で止まった。

「ここなんだ。この辺りを散歩してたら偶然みつけたのよ」
「公園?」
「うん。でも、ただの公園じゃないのよ。じゃあ行きましょう」

公園の入り口から進むと、長い階段に差し掛かった。
彼女が登り始めたので、僕もついていく。

「着いた!」

彼女は元気よく、楽しそうに言った。

「もうキツイ……」

対する僕は、へとへとになっていた。
一〇〇段くらいあったんじゃないだろうか。

「ほら、この公園には展望台があるの」

また二〇段ほど登ると、ベンチのある室内に入れた。

「ね、きれいでしょ?」
「うん、きれいだ……」

夕焼けに照らされた街全体が見下ろせた。
水平線にみえる夕陽が、絵のように美しい。

「あのね、今日は君にこれを渡そうと思ってたんだ」

僕は、色褪せたバッグからケースを取り出して、彼女に手渡した。

「開けてもいい?」
「もちろん」

彼女は丁寧に包装を剥がし、ケースを開いた。小さなルビーのペンダントだ。

「うれしい……。ありがとう」

彼女は目に涙を浮かべて言った。

「お誕生日おめでとう。これしか用意できなくてごめんね」

本当なら、今夜は美味しいレストランに連れて行きたかった。でも、プレゼントだけで精一杯だった。

「ううん。あなたからプレゼントをもらえるだけで、あたしはうれしい。——これ、つけてくれる?」
「うん」

僕はペンダントをつけてあげた。
予想通り、やっぱり彼女に似合っている。

「身分の差なんて、どうでも良いの。あたしはあなたを愛してる」
「僕もだよ」
「あたしを家から連れ出して。どこか遠くで一緒に暮らしましょう」
「でもそれじゃあ——」
「いいの。あたしはあなたとずっと一緒にいたい」

彼女は僕の胸に顔を埋めた。
僕は彼女のブロンド色の髪を撫でた。

「わかった。でも、大変な道になるよ」
「そんなの、とっくに覚悟してるわ」

夕陽が沈んだ。
僕は彼女の手を握り、二人で街を抜けて、見知らぬ遠くへ歩き出した。

お題:お金より大事なもの

3/8/2026, 8:46:43 AM

—白虎は月夜に恋をする—

満月の夜。
黄金に輝く光球をみた途端、僕の姿形は全く別の生き物に変わった。

森の奥へ歩み寄る。

たくさんの虫や花たちがこちらの様子をそっと伺っている。オオカミとクマは、僕の姿を見るなり逃げ出してしまった。

最奥まで辿り着くと、大きな岩の上に彼女がいた。

「あら、白虎さん。ごきげんよう」

この森を統べる精霊——リーフさんがにこやかに微笑む。
僕は頭を下げた。
白虎に変身してしまった僕は、言葉が話せない。

「ここに座ってちょうだい」

リーフさんは隣を軽く叩く。
僕は、岩に登って大きな体を伏せた。

「あなたはいつも満月の時に来てくれる。だからわたし、今夜を楽しみにしてたのよ」

小さな手で優しく頭を撫でてくれる。
僕は、前足に巻きつけた手土産を彼女にみせた。

「わぁ! 今日もお土産を持ってきてくれたの? 何かしら」

今日は、三色団子を持ってきた。

「ありがとう。喜んでいただくわ」

リーフさんは幸せそうに頬張る。
人間の手のひら程の大きさしかないリーフさんには、少し大きすぎたかもしれない。

「素敵な夜を過ごせそう」

僕たちは、天を仰いだ。

「今日も月がきれいね」

僕はそっと身を寄せ、頬を彼女に重ねた。

お題:月夜

3/7/2026, 1:19:48 AM

—夜のぬくもり—

深夜一時。
終電に揺られ、くたくたになりながら帰宅した。ネクタイを緩め、ジャケットをハンガーにかける。

「今日も疲れた……」

大きく息を吐いた。
ここのところ、こんな毎日が続いている。

『今日もお疲れ様。レンジで温めてね。』

達筆な女文字の書き置きのメモと共に、夕食が置いてある。
今日はハンバーグだ。

夕飯を食べ、風呂に入ると、寝る頃には二時を回っていた。
妻と娘を起こさないように、そっとベッドに入った。

「おかえりなさい……」

妻がのそのそと寝返りを打って言った。

「ごめん、起こしちゃった?」
「ううん。あんまり眠れなかったの」

二人の間で娘がスヤスヤと眠っている。
最近の平日は、起きている娘を見れていない。

「今日もお疲れ様。いつも頑張ってくれてありがとう」
「こちらこそ。マユミがいつも支えてくれるおかげだよ」

僕たちはキスを交わした。

「おやすみ」と言って眠りについた。
今日も六時起き。
それでも、明日を生きる活力が湧いてくる。
この小さなベッドに大切な家族がいるから。

お題:絆

3/6/2026, 6:10:19 AM

—一等の勇気—

商店街で買い物をすると、福引券を二枚渡された。一緒に買い物にきた、弟と一回ずつ引くことにした。

「くそー、ダメか」
「ドンマイ」

弟は白色を引いた。六等のポケットティッシュだ。
どうせ私も当たらないだろう、と思ってガラガラ回した。

「おめでとうございます! 一等のテーマパークペアチケットです!」

鐘の音と共に、おじさんのどデカい声が商店街に響く。周りにいるお客さんから拍手された。

視線を集めて、若干恥ずかしい。

「姉ちゃんすげえ!」
「たまには、いいこともあるもんだね」

おじさんから二枚のチケットを手渡され、私たちは家路についた。

「姉ちゃん、だれ誘うの?」

弟が興味深々で聞いてくる。
こんなにすごい物がもらえると思っていなかった私は、返答に窮する。

「うーん、どうしよっかな」

パッと思い浮かぶ人は何人かいるが、一人に絞れなかった。

「友達に聞いてみようかな」

私はそう言うと、弟は眉をひそめた。

「それって好きな人と行くやつじゃん。友達じゃなくて、好きな人誘えばいいのに」
「好きな人なんかいないし」
「嘘だね。最近スマホの通知ばっか気にしてんじゃん!」

私には返す言葉がなかった。
実は好きな人はいる。だが、好きな人を誘う勇気が私にはなかった。

「別に違うし……」
「ふうん」

帰ってベッドに寝転がり、考えた。
卒業式まで、あと一ヶ月。彼と進路が違うことはわかっている。

「ふぅ」と小さく息を吐いた。
たまには、勇気を出してみよう。

指をフリックして、文字を打ち込む。

『〇〇のペアチケット当たったんだけど、一緒に行かない?』

震える指で、送信ボタンを押してみた。

お題:たまには

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