—白虎は月夜に恋をする—
満月の夜。
黄金に輝く光球をみた途端、僕の姿形は全く別の生き物に変わった。
森の奥へ歩み寄る。
たくさんの虫や花たちがこちらの様子をそっと伺っている。オオカミとクマは、僕の姿を見るなり逃げ出してしまった。
最奥まで辿り着くと、大きな岩の上に彼女がいた。
「あら、白虎さん。ごきげんよう」
この森を統べる精霊——リーフさんがにこやかに微笑む。
僕は頭を下げた。
白虎に変身してしまった僕は、言葉が話せない。
「ここに座ってちょうだい」
リーフさんは隣を軽く叩く。
僕は、岩に登って大きな体を伏せた。
「あなたはいつも満月の時に来てくれる。だからわたし、今夜を楽しみにしてたのよ」
小さな手で優しく頭を撫でてくれる。
僕は、前足に巻きつけた手土産を彼女にみせた。
「わぁ! 今日もお土産を持ってきてくれたの? 何かしら」
今日は、三色団子を持ってきた。
「ありがとう。喜んでいただくわ」
リーフさんは幸せそうに頬張る。
人間の手のひら程の大きさしかないリーフさんには、少し大きすぎたかもしれない。
「素敵な夜を過ごせそう」
僕たちは、天を仰いだ。
「今日も月がきれいね」
僕はそっと身を寄せ、頬を彼女に重ねた。
お題:月夜
3/8/2026, 8:46:43 AM