—一等の勇気—
商店街で買い物をすると、福引券を二枚渡された。一緒に買い物にきた、弟と一回ずつ引くことにした。
「くそー、ダメか」
「ドンマイ」
弟は白色を引いた。六等のポケットティッシュだ。
どうせ私も当たらないだろう、と思ってガラガラ回した。
「おめでとうございます! 一等のテーマパークペアチケットです!」
鐘の音と共に、おじさんのどデカい声が商店街に響く。周りにいるお客さんから拍手された。
視線を集めて、若干恥ずかしい。
「姉ちゃんすげえ!」
「たまには、いいこともあるもんだね」
おじさんから二枚のチケットを手渡され、私たちは家路についた。
「姉ちゃん、だれ誘うの?」
弟が興味深々で聞いてくる。
こんなにすごい物がもらえると思っていなかった私は、返答に窮する。
「うーん、どうしよっかな」
パッと思い浮かぶ人は何人かいるが、一人に絞れなかった。
「友達に聞いてみようかな」
私はそう言うと、弟は眉をひそめた。
「それって好きな人と行くやつじゃん。友達じゃなくて、好きな人誘えばいいのに」
「好きな人なんかいないし」
「嘘だね。最近スマホの通知ばっか気にしてんじゃん!」
私には返す言葉がなかった。
実は好きな人はいる。だが、好きな人を誘う勇気が私にはなかった。
「別に違うし……」
「ふうん」
帰ってベッドに寝転がり、考えた。
卒業式まで、あと一ヶ月。彼と進路が違うことはわかっている。
「ふぅ」と小さく息を吐いた。
たまには、勇気を出してみよう。
指をフリックして、文字を打ち込む。
『〇〇のペアチケット当たったんだけど、一緒に行かない?』
震える指で、送信ボタンを押してみた。
お題:たまには
3/6/2026, 6:10:19 AM