—狂愛—
幼馴染の海斗から、恋愛相談を持ち込まれた。
「初美にしか頼めないんだ……!」
隣のクラスの山崎という女が好きらしい。
一目惚れだということも聞かされた。
「いいよ。私はプロだからね、任せてよ」私は胸を張り、笑顔でいった。
「ありがとう、本当に助かる」
海斗は両手を合わせた。
「連絡先は持ってるの?」
「いや、まだなんだ」
「わかった。なんとかしてあげるから待っときな」
彼は赤い顔を見せながら頷いた。
「じゃあ、また連絡するね」
「うん、また明日」
彼と別れた後、私はある友人に電話した。
週明けの月曜日、海斗が駆け寄ってきた。
「山崎さんの連絡先くれてありがとうな」
「全然いいよ。で、何か話してみた?」
海斗は浮かない顔をしている。
「それが、既読無視されるんだよ……」
「え?嘘でしょ?」
「本当だよ。ほら」
画面を見る。確かに返信は来てない。
「だから、今日直接会って話してみる」
「ごめんね、力になれなくて……」
「全然そんなことないよ。むしろめっちゃ助かってる。じゃあ行くね」
彼は走って教室へ向かった。
だが、私は知っている。今日、山崎が学校に来ることはない。
私はある友人に電話した。
「奈々、助かったよ。ありがとう」
『うん、いいよー。私もあいつ気に食わなかったからね』
私たちはくすくすと笑った。
「今度、学食奢るよ」
『サンキュー。じゃあまた』
「うん」
あとは、失恋した海斗を私が慰めるだけだ。
そうすれば、やっと敵はいなくなる。
長い道のりだったな、と私はしみじみ思う。
私はスキップしながら、教室へ向かった。
お題:I LOVE…
—気分だけでも—
私には、二歳年上の姉がいる。
「あ、お姉ちゃん」
「お土産、買ってきたよ」
姉の手には『横濱ハーバー』の手提げがぶら下がっている。彼女の明るい茶色に染まった髪を見て、私はため息を吐いた。
「いいなぁ。お姉ちゃんは……」
「どうしたの」
「別に」そっぽを向いていった。
姉は田舎から離れて、神奈川県にある大学に通っている。
一人暮らし、都会。
私の憧れるものだった。
「大変なことも多いのよ」姉はいった。
私は、窓の外を見た。
落葉した木々が立ち並び、深い緑色の山々が見える。
ここにきて三年間、景色はほとんど変わっていない。
「それでも、一回は行ってみたいな」
「あなたが元気になったら、どこへでも連れて行ってあげる」
「本当⁈」
姉は頷き、白いベッドに腰を下ろした。
「この前ね、東京にある、神田神社に行ってきたの」
姉は、茶色い封筒を渡してきた。
中には『平癒守』という金文字が刻まれたお守りが入っていた。
「そこには、医学の神様がいるらしいわ。だから大切に持っていなさい」
「うん!」
姉は伸びをして、立ち上がった。
微かに花のような香水の香りが残っている。
「じゃあ、また来るね」
「お姉ちゃん、いつもありがとう」
手を振って見送った。
姉が持ってきてくれたお土産を手に取る。袋を開け、一口かじった。
「おいしい……!」
外に出られない代わり、いつも姉のお土産で街へ行った気分になれる。
窓の外を見ると、涙が落ちてきた。
お題:街へ
—祝福—
タキシードに身を包んだ新郎と、ウェディングドレスを纏う新婦。
祭壇の上を、俺はペューから真っ直ぐに見ていた。
今日は友人の結婚式だ。彼女とは、大学で同じ水泳部だった。
「では、新郎は新婦に誓いのキスを」
牧師の声が、会場内によく響く。
二人は、唇を合わせた。それが終わると、祝福の拍手が起きた。
俺は、誰にも負けないように強く叩いた。
その後の儀式も、しっかり目に焼き付ける。二人が退場するまで、笑顔を作りながら見ていた。
「はい、撮ります——」
教会の外で写真撮影は行われた。雲一つない青空だった。
それが終わると、彼女の元へ歩み寄った。
「結婚おめでとう」
「ありがとう。二次会、来てほしかったな」
「ごめん。本当は行きたかったんだけど、どうしても外せない仕事があって……」
俺は、顔の前で両手を合わせた。
「そっか……。でも、また水泳部のみんなでご飯とか行こうね」
「そうだね。今日は本当におめでとう。そして、お幸せに」
今の自分にできる最高の笑顔を見せた。
帰り道、俺はずっと堪えてた涙を流した。
それは、しばらく止まらなかった。
お題:優しさ
—今日は今日。明日は明日—
喉が痛い。お酒のせいもあるのだろうが、間違いなく歌いすぎだ。
カラオケボックスに入ってから、かなりの時間が経っていた。コンパの時にいた、俺を含む男子三人、女子三人がここにいる。
明日はヤバいな、と心の中でそう思った。
「はい、どうぞ」
隣からデンモクが回ってきた。だんだんと疲れてきたせいか、思考は回らない。
『恋するフォーチュンクッキー』が止み、俺の番がきた。
曲名が表示された途端、場が一気に盛り上がった。
Adoの『新時代』だ。
気になっているカオリちゃんの熱い視線を受け止める。
今日はもうどうにでもなれ、と思いながら限界まで声を張り上げた。
お題:ミッドナイト
—こころの内—
私には、彼氏がいる。
彼は誠実で優しい。
シュッとした顔と柔らかい目が、印象的だ。
周りの友達は、みんな揃ってかっこいいって言う。もちろん、私もそう思う。
「昨日は、何してたの?」
彼とは位置情報を共有しているから、昨日はずっと家にいたことは知っている。
「ミステリ小説を読んでたんだ。夢中になっちゃって、気づいたら一日が終わってた」
彼は笑みを浮かべて言った。
その表情に、また心を奪われる。
「ふうん、そんなに面白いんだ」
「そういえば、前に観たいって言ってた映画を借りてきたんだ。一緒にみようよ」
「本当⁈ みよみよ!」
彼のそういう気遣いできるところも好きだ。
私は、隣に座る彼に肩を寄せた。
そのあたたかさが、安心する。
——
僕には、彼女がいる。
彼女は、容姿端麗。その姿は、学校内で多くの人気を集める。
だが、第一印象に騙された僕は愚かだ。
彼女は重すぎる。
周りの男子たちは敵のように鋭い視線を向けてくるけれど、一緒にいると疲れてしまう。
「昨日は何してたの?」彼女が訊いてきた。
彼女には、位置情報のせいでどこにいるかバレてしまう。だからそのスマホは置いて、もう一台のスマホを持って出かけた。
新しい彼女と会うために。
「ミステリ小説を読んでたんだ。夢中になっちゃって、気づいたら一日が終わってた」
僕は作り笑いを浮かべて咄嗟に嘘をついた。
「ふうん、そんなに面白いんだ」
小説の内容を聞かれたらまずいと思い、話題を変える。
「そういえば、前に観たいって言ってた映画を借りてきたんだ。一緒にみようよ」
「本当⁈ みよみよ!」
隣に座る彼女がくっついてきた。
彼女に別れ話をする時のことを想像すると、不安になる。
お題:安心と不安