初心者太郎

Open App
1/6/2026, 2:12:13 AM

—青天の霹靂—

透き通るような青色が空一面に広がり、冷たい空気がおいしい。まさに冬晴れ。
川の水が流れる音が心地良く耳に入り、常緑の木々が目を潤してくれる。

橋から見えるこの景色は、絶景だ。

「心の準備はできましたか?」
「……はい」

ただこの景色を眺めているだけなら、どれほど良かっただろう。まさかジャン負けでバンジージャンプをやることになるなんて。
高所恐怖症の人にやらせることじゃない。

「じゃあ、カウントダウンを始めますよ」
「……」

遠くを見れば、男女五人が手を振って見ている。何をしても良い世界なら、奴らをぶん殴ってやりたい。

「三……、二、今だ!」
「え?」

カウントダウンの途中で押された。上を見ると、スタッフもにっこりと笑いながら手を振っていた。

そういえば今年のおみくじは大凶だったな、と思い出した。
途中で気絶できたのは、不幸中の幸いだった。

お題:冬晴れ

1/5/2026, 3:07:44 AM

—幸せってなんだろう—

「お母さん、幸せって何?」

息子が訊いてきた。
子供はたまに難しい質問を、突拍子もなくしてくるから困ってしまう。

「そうだなぁ……、ご飯を食べられて、誰かと楽しい時間を過ごすことができる『今』が幸せなんじゃないかなぁ」

コンビニで買ったパピコを、半分にして渡した。

「ふうん、よくわかんない」

彼はそう言って、固いアイスと戦い始めた。

夜、ベッドに入って小さい頃の自分はどんなことを考えていただろう、とふと思った。
好き放題にお金を使えること、一日中遊び続けること、好きな人とずっと一緒にいられること。

多分、現実とは違う幸せも混じっていた。

隣を見ると、息子が眠っている。私は彼の頬にキスをした。

頭の中で考えるものとは別に、きっと幸せは日常に幾つも潜んでいる。
私たちは気が付かないうちに、それを掴んでいる。
幸せとはそういうものだと私は思う。

私はふかふかのベッドの中で眠りについた。

お題:幸せとは

1/4/2026, 6:45:13 AM

—限界社会人—

初日の出を丘の上で見ていると、近くにいた男が膝から崩れ落ちた。
周りには俺とその男しかいない。気になって声をかけてみた。

「大丈夫ですか?」

男は震えながら顔を上げた。
彼は真っ青な顔をしていた。

「願いが届かなかった……」
「願いですか?」

男は大きく頷き、また項垂れる。

「どんな願い事をしたんですか?」俺は訊いた。
「『太陽が昇らないでくれ』と願ったんだ」

男は俺の両肩を掴み、叫んだ。

「太陽が昇ったら、新しい日が来てしまう!仕事に行かなきゃいけなくなるじゃないか」

男は、四つん這いになって泣き出した。今度は、俺が彼の肩に手をかける。
背中をさすり、慰めた。

空を見上げると、日が静かに輝いている。
今年就活の俺は、こんな人にはならないように頑張ろうと思った。

お題:日の出

1/3/2026, 4:15:30 AM

—優先順位—

ある家に住む親子のお話。

「おれ、今年はたくさんお母さんのことを手伝うって決めたんだ」

年の始めの朝、男の子は胸を張って言いました。どうやら今年の抱負を決めたようです。

「あら、嬉しい。じゃあまず、洗濯物を干して貰おうかしら」

お母さんはにっこり笑って言いました。

「わかった!」

男の子は洗濯物を持って、ぱたぱたと二階に駆け上がって行きました。

「終わった!」

思っていたよりも早く戻って来ました。お母さんは続けて、また頼みます。

掃除、ご飯の支度、買い物などなど。
男の子は一生懸命働きました。けれど、だんだん足取りが重くなってきたようです。

「お母さん、疲れたよ……」
「ありがとう。でもね」お母さんは優しく訊きました。「これを毎日続けられそう?」

男の子は少し考えてから、顔を上げました。

「大変だけど、おれかんばるよ!」

その目は、まだまだ元気いっぱいでした。

「じゃあね」お母さんはもう一つ訊きました。「勉強も一緒に頑張れる?」

その途端、男の子の体は固まって動かなくなりました。

「去年、宿題を忘れて、たくさん先生から叱られたでしょう?今年は大丈夫かしら?」
「……」

男の子は俯いたまま、黙ってしまいました。

「まずは『宿題を必ず先生に出す』、それを今年の抱負にしなさい。それができそうなら手伝ってちょうだい。わかった?」
「……はい」

小さな声で返事した後、とぼとぼと自室に戻っていきました。

それからというもの、男の子が家事を手伝う日はついに来ませんでした。
でも、宿題を忘れることはもうなくなりましたとさ。

お題:今年の抱負

1/1/2026, 11:42:49 PM

—新年の挨拶—

「うげっ」

スーパーで買い物をした帰り、近所のクソガキと遭遇した。
毎日ギャーギャー騒いでおり、生意気な態度が目につく奴だ。新年早々運が悪いな、と俺は思った。

「おじさん、あけましておめでとうございます」彼は丁寧に頭を下げた。
「あ、あけましておめでとう」

この子が敬語を使うところを見るのは初めてだった。佇まいもまるで別人のよう。
年が明けて心を入れ替えたのかもしれない。

「どうぞ、頑張って作りました。受け取ってください」
「ありがとう……」

彼はクッキーが入った袋を差し出した。
そのまま黙り、じっとこちらを見つめている。

「どうしたんだい?」
「おじさん、お正月と言えばなんですか?」

その時、ハッと気がついた。
クソガキが何故、こんな礼儀正しいのかということに。

「『お年玉』かい……?」

クソガキは黙って何度も頷いた。
正月だし、クッキーを貰ってしまった以上は仕方ないと思い、財布から千円札を抜き取って渡した。

「……はい」
「やったー!やっぱりおじさんはチョロいと思ったんだよな!」

そう言いながら、走ってどこかに行ってしまった。
やっぱり人はそんな簡単には変わらない、と改めて思った。

お題:新年

Next