布団の中で、いろいろな事を空想するのが好きだった。
子供の頃、四畳半に父と母が寝て、襖を挟んで、八畳に私と姉が寝ていた。
父は、良い父親とは言えない人であったが、3人兄弟(後に4人となるが)の為に『世界の文学』全巻を買い揃えてくれて、それを私と姉に読んでくれた。
これだけ書くと素晴らしい父親のようだが、そうは行かないのである。ま、それは置いておこう。
『世界の文学』が私に与えた影響は大きかったと思うが、
当時の私の夢は、ウルトラマンになる事だった。
いや、笑うなかれ、当時の同年代の男の子は大体そんな程度である。7歳上のみうらじゅんもウルトラマンにハマっていたらしいのだから、
さて、昨日書いたミルトン・エリクソンである。彼は学習障害だったが、17歳の時ポリオを発症し、目以外の全てが麻痺した。
脊髄の炎症からなる麻痺だが、彼はベッド上で全く動けなかったし、そもそも手も脚も身体も感覚を失っていた。医者は寝たきりになるだろうと宣言した、まったく絶望的だった。
しかし彼は、唯一の目で、幼い弟や妹がハイハイし、やがて立ち上がる様を退屈もあって、ずっと観察した。
彼の身に起こった状態を例えるなら、PCのデータが全て消去されて、アプリすらなくなってしまった状態だ。脳は、かろうじて正常だとしても、指ひとつ動かせない。いや、指が何処にあるかも分からない。繋がりすら全く感じられない。
そのような状態から、目で腕の位置を確認し、脚の位置を確認し、指の位置を確認し、ひとつひとつの感覚を縫合して、繋げることに成功した。
弟や妹を観察して、立上り方、歩き方を学習し、自分で実践した。
私達は普段、なんとなく目が覚めて、起きて、歩き回っているが、実際はものすごく複雑な動きの統合によってなされているのである。
エリクソンはその複雑な動きを全て失ってしまったが、再構築して復活させてしまった。
彼のこの経験は、人間の発達を8つの段階に分ける事に発展し、現在でもエリクソンの発達理論として使われている。
そして、彼は「催眠術の父」とも呼ばれて大学生時代に2000人以上も催眠実験をしていたと言われるが、最初は自分にかけていたのだ。ポリオで動けない時に自己催眠をかけていたのである。
また、アイディンティティという概念も彼が広め、これは大ヒットして今も普通に使われている。やはり自分とはなんだろうかと問い続けたから到達した概念なのだろう。
ベッド上、動けないエリクソンが見た夢は、なんだったのだろうか?
自分の気持ちが届かないのは、もどかしい。
でも、黙っていても相手には伝わらないし、ただ単刀直入に伝えても逆効果になることもある。
言葉いがいにも、アプローチの仕方はいろいろあるので、考えてみるのも面白い。
言葉は便利だけれども、言葉で伝えたからといって、実はぜんぜん伝わっていない場合があるものだ。
ちゃんと説明したのに、全く通じてなかった経験は、どなたにもあるのではないか?
分かり易い例なら、外国人の場合。相手が少し日本語が話せると思って説明し、その人もうん、うんと頷いているから理解したのだなと安心していると、全く分かってない・・・。
でも、こういう現象は外国人でなくても時々起こってしまう。
もちろん、自分の説明が悪かったパターンもあるが、相手の理解力に問題がある場合もある。
学習障害を持つ人は偶にいる。軽重の程度はあるが、この場合、本人には悪気はぜんぜんないが、分からないのである。
私はミルトン・エリクソンという人の事に興味を持って調べているが、彼は類稀な催眠療法家として知られている精神科医だ。
彼が優れているのは実績が示していて、「魔法使い」と呼ばれていたくらい凄腕だったのである(1980年79歳で死去)。
しかし彼は3つも障害を抱えていた。失読症(例えば3とMの区別が出来ない)、失音楽症(音楽が理解出来ない)、色覚異常(赤と緑が区別出来ない)だが、
かれはこのハンデを逆に利用して、自分の才能や資源の可能性を広げた驚くべき人であった。
頭は良いけれど、3とMが区別出来ない。でも、分かった時の感動をずっと覚えていて、他の分からない人に、分かり方を伝えられる、常人では発想し得ないアプローチを見つける事が出来きたのである。
今、私はエリクソンに出会えたけれど、
先日、「春爛漫」というお題で、毎日登校を共にしたS君の事を書いたが、実は非常に久しぶりに彼の事を思い出した。
彼とは、本当は小学校も同じだったが、ずっと別のクラスだった、目立つ顔だったからなんとなく知ってはいたのだ。
ゴリラみたいなご面相で表情が暗かったと形容したが、彼も確か小学生のある時期まで学習障害で悩んでいたらしい、小学の高学年から急に勉強が出来るようになったのである。
彼はその後学習院大学に行ったが、手紙をもらった事がある。あまり周りと馴染められなくて悩んでいるようだった。
自分を表現するのが、苦手なタイプだったから、彼も誰にも届かぬ想いに悩まされていたのだろうと思う。
最後に彼も、中学時代の通学路が楽しかったと綴ってあった。
神様というのは、曖昧な存在だ。
それはそんなに偉いのか?そんなに強いのか??
私は仏教系の幼稚園に、通ったため、そこで教えられた影響は大きい。
1番偉いのは釈迦如来である。
幼稚園の頃から『西遊記』は知っていたが、その世界ではスーパーモンキー孫悟空が滅法強い。
あの物語のクライマックスは、実は前半部分の「大鬧天宮(だいどうてんぐう)」なのである。
斉天大聖が、天界にて神々の軍勢を蹴散らすのだ、
後に三蔵と辺鄙な田舎街や山奥で、何匹もならず者の妖怪を倒すが、そんなのに悟空が負ける筈がないのだ。
天の兵を相手に大暴れする方が楽しいに違いあるまい。
最後は二郎真君と名勝負を繰り広げ、遂に捕まるのだが、この時点で悟空はそこら辺の神以上の力を備えているのである。
『西遊記』を知った後に、『古事記』や『ギリシャ神話』、或いはそれ以外の神話で、さまざまな神々のあらゆる行状を知っても、
つい、「けれど、釈迦の方が上だ」という考えに至ってしまう。
中野美代子の考察によると、二郎真君は李冰(りひょう)という人であり、治水の功労者で、後に神となった。それが紆余曲折の末に悟空となるのだ。
つまり斉天大聖vs二郎真君は自分と自分が戦っているようなもので、力が拮抗するのは当然なのだ。
中国の神様では三国志の関羽が、金銭関係の神様になっているのは面白い。
日本も、神々は沢山いるけれど、人間が神様になった例も多く、菅原道真は有名だ。
学問の神様として人気があるが、都を恨んいて災いすると恐れられていたのは、『陰陽師』など読むとよく分かる。
個々の神様の話は、調べてみると面白い。
でも、それらの神々にお願い事を祈っても、叶う道理はないと思う。
神社では拝んでいるのだけれど。漠然と、平穏無事を願うばかりである。
空がスカッと晴れて、どこまでも青く雲が見当たらない、
今朝の関東地方のように、しかも暖かかいのであったなら、
こんな日は公園の芝生で寝転がっていたい。
本当に、それだけで充分だと思う。
1905年5月27日は日本海海戦が行われた歴史的な日である。
秋山真之(さねゆき)の名文
「本日天気晴朗ナレドモ波高シ」と旗艦「三笠」から大本営へ電報を打った。
たった13字、かなに直しても20字にしかならない、簡潔な文章の中に実はたくさんの情報が込められており、
尚且つ、美しい。
秋山真之はこの時、作戦参謀であったが、正岡子規とは子供の頃から親友であり、もともと文学者を目指していた。しかし、家庭の経済事情から軍人の道を選んだ。
戦争は、愚かな行為かも知れないが、そこから学ぶものは数多くある。
どうしても、リアルな結果が残るから、それらを分析して物事を導く事が出来るのだ。
米国は、建国以来ずっと戦争をし続けているような国で、それに付随するデータもまた、ずっと蓄積され続けている。
例えば、精神医学が本当に役に立っているのかどうか懐疑的に思われていた時代もあったが、
戦争すれば精神疾患を起こす人は増えるから、役に立つ医学である事が証明されたのだという。
空襲を受けて、精神疾患にかかった人を救えたのである。
それは、日本のように災害大国で被災した人々を救えたし、
災害でなくても、日々働き過ぎてダウンしてしまう人達おも救う事が出来ているのだ。
秋山真之は、バルチック艦隊を対馬海峡に捉えた、
まず、ここが大きい。バルチック艦隊を見失えば、補給路を絶たれるから、日本軍の勝ちはなくなる。
そして、見事捉えたけれども、勝てる保証はどこにもなかった。
というか、当時バルチック艦隊は世界最強と思われており、日本が勝つとは誰も思っていなかったのである。
しかし結果は、バルチック艦隊を殲滅してしまったのである。
戦争は怖い。
以前、私がお付き合いさせていただいた女性は、何故か赤い翼の大ファンだった。
ファンになるのに理由なんて要らない、好きだから、好きなのだ。子供の頃から憧れていたらしい。
うっかり全日空のチケットを取ってしまった事があり、その事をメールで告げたら激怒して、「日航に変えなさいよ!」と言い出した。
これ、彼女が乗る訳ではないのだ。ただ私1人が移動するだけの、軽い報告メールを送信したら、お怒りの返信が来たのである。
知らない人は冗談だと思うだろうが、彼女の場合、日航に関する話はまったく本気100%なので、
放置してANAを使ってしまうと後で恐ろしい展開になると察知したので、わざわざ手続きして日航に替えてもらったのである。
付き合い始めた時、「これを読んで下さい」と渡されたのが山崎豊子の単行本『沈まぬ太陽』全5冊だった。
日航が大好きな彼女は、自分と付き合うなら日航の事も理解してくれないとイヤだと思ったのだろう。
山崎豊子の作品は『白い巨塔』『華麗なる一族』などが有名だ、
緻密な取材を重ねて書き上げる社会派小説で、私はそれまで読んだ事なかったが、こちらとしても彼女のことが知りたかったから、喜んで読んだのだった。
なるほど、確かに読むのに値する重厚な作品であったが、これは日航(作中では国民航空となっているが)礼賛の小説ではない、むしろ、日航の暗部を暴き、さらけ出してしまうものだ。
確かに日航の事はよく理解出来たが、日航は『沈まぬ太陽』には批判的な立場なはずである。
クライマックスは日航機墜落事故だが、
この描写もリアルだし悲惨過ぎる、私もこの事故は旅先の九州にいた時にテレビで知っていた。史上2番目の520人もの犠牲者を出した飛行機の大事故だ、話題は連日こればかりであった。
そして事故発生までに至る、巨大組織の腐敗していく様がとても丁寧に描かれているのである。これは小説と言うよりむしろ現実に近いものだろう。
もちろん、優秀な乗務員がいかに誇りを持って仕事しているのかも分かるのだが、
この作品を読んで、日航のファンになるかどうかは微妙なところだ。
それでも彼女は、これを読んだ人と出ないと、自分とは深く付き合えないと思ったのだろう。
旅行業界にとって大きな痛手となるコロナの試練も越え、もう日航の体質も『沈まぬ太陽』の頃とは随分変わってしまったのではないかと思う。
次に飛行機を使う時は、赤い翼を使おうと思っている。