koyagi

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10/19/2024, 6:10:16 AM

とんぼが、葉の先に止まった。
どんぐりが転がっていた。
木の葉が赤く染っていた。
冷たい風が吹く。
半袖の人ももう見なくなった。
色んなお店でハロウィンの特集をしている。
そして、秋の匂いがした。
「テスト勉強、してる?」
「いや全然?笑」「だよな」
重いリュックを背負って歩く帰り道。
近くの公園に寄り道することに。
「ブランコとか何年ぶりだろ」
中学校に入って、気づけば外で遊ぶことも無くなっていた。
あの頃より、ちょっと近く感じる地面。
ちょっと窮屈になったブランコ。
溢れかえる懐かしい思い出といっしょに、
未来の不安が募った。
「俺ら、大人になれるのかな」
「なる、つーかなってく、みたいな感じなんじゃん?」
「そっか」
どうにかして不安を消し去りたくて、
リュックを放り投げ、
ブランコに足を乗せて立った。
もうすぐで頭が上のポールにぶつかりそう。
思いっきり漕いだ。
ふと前を向くと、
あの夏とはまた違う、清々しい青空が広がっていた。
引き込まれる空。
「なぁ、」「なに?」
「前みたいにさ、2人乗りしねぇ?」
「落ちても知らねぇぞ?笑」「落ちるならお前だけどな」
空の下で、
ブランコの漕ぐ音と、2人分の笑い声が響いていた。

10/17/2024, 11:07:24 PM

「待って今日小テストあるの忘れてた…!」
「やばw」
「えーお願い!教えて?」
「俺は自分の努力で勉強してきてるから」
「ジュース奢る!」「よかろう」「ありがとー!」
よし、これで何とか乗り切れるかな。
それにしたって小テストの存在忘れてた。
教科担当ちゃんと書いといてよ。
「小テストって赤点でも補習と追試ないよね」
「多分な」
よかった。
それなら、まぁ大丈夫でしょ。
0点さえ取らなきゃ勝ちだもん。

「んん、終わったぁーー」
手を前に出して伸びをする。
小テストだけでも精神削られるってなにごと?
って、あ、
「ピリオドつけてなかったかも、え、どうだろ」
「どんまい笑」
あれ?付けたっけ?
付けてて欲しいな。過去の自分。
「なんか、英語苦手なんだよなぁ」
「そう?俺は好き」
「いつも教えてくれるもんね」

『あぁ、一緒にいれる口実を作れるからな』

そう言って意味ありげに微笑んだ君が、
まだ頭に浮かんでいる。

10/16/2024, 12:59:44 PM

月明かりが、僕を照らした。
今日は満月。
雲もなく、空も綺麗だ。街灯の所為で星は見えないけど。
深夜ということもあって、車の音はさほど聞こえない。
歩行者もいないみたいで安心した。
僕は、いまマンションの非常階段の手すりに座っている。
本当は、最上階の10階がよかったんだけど、
怖かったから7階にしちゃった。
せっかくだから最期に音楽でも聴こうと思い、
無線のイヤホンを取り出すと、
そのうちの1つが落ちてしまった。
小さくなってくイヤホン。少し経ったとき、
__カンっ、と落ちた音がした。
あーあ、絶対壊れたな。まぁいっか。
どうせこれから、
『死ぬんだし』。
なんだかおかしくなって自嘲気味に笑った。
そうか。落ちるのか、ここから。
あのイヤホンのように。
夜中バレないように起きて、抜け出してきた。
1番のお気に入りの服を着て。
何回もあった。病み期なんて学生によくある事だし、
きっとすぐ回復するだろうと思ってた。
実際すぐに思い直して楽しく過ごしてた。
けど、不定期の結構な頻度で病み期、というかメンタルが沈む期間が多くあった。
友達もいる。部活がクソ楽しくて最高なんだけどさ。
4回の転校。家庭環境。親の離婚。受験勉強。
色々重なりすぎた。
なんの前触れもなく、_あぁ、もういいや。
死のう、と強く思ったんだ。
そう、端的に言えば衝動的な行動だった。
すぐ飛び降りればよかったのに。
ロマンチストに考えちゃうから。
「来年も勝てるといいね」「次の部長はどっちだろうな?笑」
いつも隣にいてくれるお前の事が頭によぎったんだ。
何分、何時間もわからない時間、
ぼーっと放心していた。
そして、気づけば泣いていた。
いつのまにか朝日が僕を照らして、
7階の住民さんが必死に声を掛けてくれてることに気づくまで、自分が何をしていたのかわからなかった。
見るはずのなかった、朝日を、
そのあたたかさを感じながら、
欠かさず行っている朝練に顔を出した。

10/15/2024, 11:57:12 AM

さて、俺ら、どうするかな。
廊下には「鬼殺せんせー」と呼ばれるクソ怖い先生。
見張ってやがる。
季節は夏真っ只中。そして青春の真っ只中でもある。
高校1回きりの修学旅行中なのだから。
それなりに楽しい高校生活だけど、
やっぱり校則とか決まりは存在する。
それは修学旅行中でも同じ。
所持金額、門限、就寝時間。
そんなん破る為だけにある。
俺達が黙って過ごすと思う方がどうかしてる。
まぁ、だからそんな俺達を見越して、
あそこに先生がいるんだろうけどさ。
通知を切ったスマホで時間を確認する。
時刻は1時12分。
もちろん深夜の方。
作戦会議の為、後ろを静かに振り返った。
「……どうする?笑」
「あいつらの部屋って階段しか行けないんだっけ」
「エレベーターは音でバレるだろ」
「流石にずっとはいないんじゃね?センコー」
「交代してずっと見張ってるらしいよ」
「詰みじゃん」「どーすんの」「まじかー」
「ここで終わってたまるかよ俺らの青春っ……!」
「お前は騒ぎたいだけだろーが」「バレた?」
「ちょっ、お前らうるさい」
そこで俺はスマホ操作する。
ニヤニヤが止まらない。
「強い味方を召喚します」
俺のスマホには、「ゆうと」と表示されている。
意味がわからず皆はきょとんとした。
「ごめん誰?」「お前BLの趣味なんかあった?」
すかさずボケたりしてくる友達。
ちょっと呆れながらも説明する。
「さっき仲良くなった他校の奴」
「まだ起きてるってさ」
急に察しの良い友達。
「つまり……協力者!?」「おぉー!」
期待の視線を浴びながら、心強い味方に電話をかけた。

10/14/2024, 10:26:11 AM

手に伝わる重み。
それをしっかり肌で感じながら、腕を高く上げた。
「きゃははっ、」
嬉しそうに笑う君。まだ小さい小さい君。
その時に、僕は小さい命を抱えてるんだって実感して、
思わず抱きしめた。
あぁ、小さい。柔らかい。あったかい。
宝物だ。僕の宝物。
なんて可愛いのだろう。僕達の天使。
これから、大きくなるのかぁ。
いつか反抗期も来るのかぁ。
頼れる親になれるかな。かっこいい父親になれるかな。
バージンロードを一緒に歩く日が来るのかな。
まだ考えるのは早いか。
彼氏なんて作らせたくないけどな。
未来が、想像が膨らむ。
生まれてきてくれてありがとね。
これからが楽しみになってきた。
妻となら、不安も乗り越えられる。
大丈夫。
これから、父親なんだ。
子育てに苦労する日々も、悪くない。
だって家族がいるのだから。
幸せを胸に噛み締めた。
楽しそうにはしゃいだ声を上げる君をみて、
僕達は笑いながら未来について語り合った。

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