月明かりが、僕を照らした。
今日は満月。
雲もなく、空も綺麗だ。街灯の所為で星は見えないけど。
深夜ということもあって、車の音はさほど聞こえない。
歩行者もいないみたいで安心した。
僕は、いまマンションの非常階段の手すりに座っている。
本当は、最上階の10階がよかったんだけど、
怖かったから7階にしちゃった。
せっかくだから最期に音楽でも聴こうと思い、
無線のイヤホンを取り出すと、
そのうちの1つが落ちてしまった。
小さくなってくイヤホン。少し経ったとき、
__カンっ、と落ちた音がした。
あーあ、絶対壊れたな。まぁいっか。
どうせこれから、
『死ぬんだし』。
なんだかおかしくなって自嘲気味に笑った。
そうか。落ちるのか、ここから。
あのイヤホンのように。
夜中バレないように起きて、抜け出してきた。
1番のお気に入りの服を着て。
何回もあった。病み期なんて学生によくある事だし、
きっとすぐ回復するだろうと思ってた。
実際すぐに思い直して楽しく過ごしてた。
けど、不定期の結構な頻度で病み期、というかメンタルが沈む期間が多くあった。
友達もいる。部活がクソ楽しくて最高なんだけどさ。
4回の転校。家庭環境。親の離婚。受験勉強。
色々重なりすぎた。
なんの前触れもなく、_あぁ、もういいや。
死のう、と強く思ったんだ。
そう、端的に言えば衝動的な行動だった。
すぐ飛び降りればよかったのに。
ロマンチストに考えちゃうから。
「来年も勝てるといいね」「次の部長はどっちだろうな?笑」
いつも隣にいてくれるお前の事が頭によぎったんだ。
何分、何時間もわからない時間、
ぼーっと放心していた。
そして、気づけば泣いていた。
いつのまにか朝日が僕を照らして、
7階の住民さんが必死に声を掛けてくれてることに気づくまで、自分が何をしていたのかわからなかった。
見るはずのなかった、朝日を、
そのあたたかさを感じながら、
欠かさず行っている朝練に顔を出した。
10/16/2024, 12:59:44 PM